第6話 神にささげる一発ギャグ!?

 その後も狩りを続けた。


 俺は二体のリングァエルを仕留めた。


 これでヘタは三本か。


 何か魔法を覚えられるのかな?


「ハヤト君、そろそろ終わりにしようか」


「はい、分かりました」


 トレットさんが声をかけてきた。


 それも中身がパンパンに詰まった、大きな袋を三つも持ちながらだ。


 どんだけ狩ったんだ!?


 ちょっと聞いてみた。


「リングァエルが五〇体くらいに、エリンシシが一体だよ」


「五〇!? そんなに狩ったのですか!? すごすぎますよ!? リングァエルが絶滅するんじゃないですか!?」


「あははっ、大げさだなぁ。このくらいでは絶滅なんてしないよ。なんでもカスクソ邪神が、シレモンを定期的に送ってくるそうだからね」


「えっ!? そうなんですか!? あの神、この世界に干渉しすぎですね!?」


「そうだね。それでは、奉納に行こうか」


「はい!」


 奉納か。

 どこでやるんだろうか?


 神殿とか、神社とかがあるのかな?



「ここに奉納するんだよ」


「ここにですか?」


 草原の中に、年季の入った木造の小さなお堂があり、その中にお地蔵様のような石像が置いてあった。


 なぜか髪型がショッキングピンクのモヒカンで、サングラスのようなものをかけているけどな!


 身長はモヒカン抜きで七〇センチくらい、モヒカンは三〇センチくらい。

 幅は三〇センチくらい。


「この石像は『モヒジ・カンゾウ』という名前で、この世界の至るところに置いてあるんだ」


 妙な名前だなぁ。


 こんなのが世界各地に置いてあるのか。


「この像の前に奉納部位を置けば良いんだよ。そうすると『よくがんばりましたね、いいこいいこポイント』略して『よポイント』がもらえるんだよ」


 なんじゃそりゃぁっ!?


 子供を褒めるお母さんかよっ!?


 それと略称!

 省略しすぎだろ!?

 短くなりまくりじゃないか!?


 まあ、どうでもいいけどな!!


「そのよポイントを使用して、魔法を覚えるんだ」


「そうなんですか」


「それと奉納してから三〇秒以内に『奉納一発ギャグ』をすると、ボーナスとして追加のよポイントをもらえることがあるんだよ」


「奉納一発ギャグ!? なんでそんなのあるんですか!?」


「さあ、それは分からないよ」


「意味の分からない世界ですね」


「そうだね。では、僕から奉納させてもらおうか」


 トレットさんがモヒジ・カンゾウの前に、奉納部位を置いた。


 奉納部位が青白い光の粒子になり、天に昇って行った。


 おおっ、神秘的な光景だな!!


「よし、奉納一発ギャグ、いくよ!! 題して『超逆流』だ!!」


 トレットさんがそう叫ぶと、便器の中から黄色と茶色の竜巻のようなものが出て来た。


 な、なんだあれは!?


 すさまじい光景だ!!


 家のトイレで、こんなことが起こったら全壊確定だな!


 ところで、これってギャグになるのか!?


 どうなんだろう?


 まあ、すごいからどうでもいいか!



 おっ、竜巻が消えたぞ。


 この後はどうなるんだ?


 えっ!?

 トレットさんの前に、青いプレートが現れたぞ!?


 大きさは縦横ともに五〇センチくらい。

 空中に浮いている。


 なんだあれは!?


「このウィンドウに獲得した、よポイントが表示されるんだ」


「そうなんですか。どのくらいもらえたんですか?」


「リングァエルが一体、一よポイント、エリンシシは一体、一〇よポイントだね。奉納一発ギャグの方は、八〇よポイントもらえたよ」


 合計一四〇よポイントか。


「奉納一発ギャグのよポイントは結構高いんですね」


「それはギャグの質によるかな。まったくもらえないこともあるよ」


「そうなんですか」


 うーむ、どんなことをやれば良いのだろうか?


「さあ、ハヤト君も奉納しなよ。そろそろ日が暮れる時間だしね。奉納一発ギャグは無理にやらなくても良いんだよ」


「分かりました」


「ハヤトよ、奉納一発ギャグは思い付いたのか?」


「いや、何も思い付かないな。シチローは何かあるのか?」


「フフフッ、そういうことなら、ワシに任せておくのじゃ!!」


「おおっ!! 何か思い付いたのか!? なら、任せるよ!!」



 俺はリングァエルのヘタを奉納した。


「よし、良いぞ、シチロー!」


「うむ、では、ゆくぞ!!」


 シチローが俺の頭の上に乗った。


 えっ!?

 いったい何をする気なんだ!?


「カスクソ邪神よ、刮目かつもくせよ!! これが奉納一発ギャグ『筏ヘアー』じゃぁぁぁぁぁっ!!!!!」


 ええええええええええっ!!!


 それってどうなんだ!?


 面白いのか!?


 正直、微妙じゃないか!?


 おっ、ウィンドウが出てきたぞ!


 結果はどうだったんだ!?


 そこには白い文字で、このように書いてあった。



 リングァエル三体、三よポイント。

 奉納一発ギャグ、一〇よポイント。

 初回特典、一〇〇よポイント。


 合計一一三よポイント。



 初回特典!?


 そんなのあるのかよっ!?


 奉納一発ギャグは一〇だったか。


 エリンシシ一体分と考えると、結構お得だな。


「どうじゃった!? ワシの渾身のギャグは!?」


「一〇よポイントだった」


「な、なんじゃと!? たったの一〇よポイントじゃと!? そ、そんなバカな!?」


「いや、十分だろ!? エリンシシ一体分だぞ! すごいって!!」


「てっきり百兆よポイントくらいもらえると思っておったのに……」


「百兆!? それは欲張りすぎだろ!?」


「むむむっ、くやしいのう! こうなったらリベンジじゃな!! 次までに最高の一発ギャグを用意しなくては!!!」


 シチローがなぜか闘志を燃やしているぞ!?


 何をムキになっているのだろうか?


 まあ、いいか。



 あれ?

 このウィンドウって、どうやって閉じれば良いんだ?


 トレットさんに聞いてみた。


「この手のものは、ウィンドウ閉じろと思うと閉じるよ」


 やってみた。


 おっ、本当に閉じたぞ!



 さて、よポイントが入手できたし、これで魔法を覚えられるわけだな。


 そういえば、どうやって覚えるんだ?


 またトレットさんに聞いてみた。


「『ワライトールショッピングウィンドウ』というものがあって、そこで選ぶんだよ」


 ワライトールショッピングウィンドウ!?


 なんじゃそりゃぁ!?


 確かワライトールって、カスクソ邪神のことだよな!?


 また神が訳の分からんものを作ったのか!?


「ウィンドウを出すには『ワライトールショッピングウィンドウオープン』と言うんだよ」


 すると、トレットさんの前に奉納一発ギャグの時と同じウィンドウが出現した。


「そうすると、こんな風に出て来るんだよ」


「確かに出ましたね。では、やってみます。ワライトールショッピングウィンドウオープン!」


 俺の前にもウィンドウが出現した。


 そこには大量の魔法名と、覚えるのに必要なよポイントが列挙されていた。


「覚えたい魔法の魔法名を押すと、別のウィンドウが出て来て、そこに購入するというボタンがあるんだ。それを押せば覚えられるよ」


 購入なの!?

 まあ、そこはどうでもいいか。


 それにしても、大量にあるなぁ。


 どれにすれば良いのだろうか?


「一度購入してしまったものを取り消すことはできないんだ。慎重に選んだ方が良いよ」


「分かりました。よく考えてみます」


「ああ、そうした方が良いよ。孤児院に魔法の入門書があるから、それを読んで決めた方が良いよ」


「はい、そうします」


「では、帰ろうか」



 孤児院に帰って来た。


 倒したシレモンは、すべて院長に渡した。


 夕食の時に、それらを使った料理が食卓に並べられた。


 焼きリングァエル。

 エリンシシと野菜のスープ。

 ロールパン。


 これが夕食のメニューだ。


 食べてみたら、美味しかった。


 リングァエルは本当にリンゴと鶏肉だった。


 エリンシシはキノコのような食感の豚肉みたいな感じだった。


 大満足な夕食だった。



 食卓にいたのは俺とトレットさんと院長だけだった。


 この孤児院には、これで全員なのだそうだ。


 少ないんだな。


 まあ、孤児がいないのは良いことだがな。



 その後、風呂に入った。


 白いタイル張りで、シャワーが三台付いている広い風呂場で驚いた。


 やはり文明のレベルは高いんだな。


 風呂から上がったら、急に眠気に襲われ、そのまま寝てしまった。

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