第2話 質問しても良いそうです。サービス良いね!後特典

「私からは以上でゴワス。何か質問はあるでゴワスか?」


 トゥハァがそう言った。


 質問を受け付けてくれるのか。


 意外とサービス精神旺盛なんだな。


 なら、遠慮なくさせてもらおうか!


「突然ハッキリと目が見えて、しゃべれるようになったのは、なぜなんだ?」


「それは、この『ゴツーゴ・ウシューギノ・ミルク』のおかげでゴワス!」


 トゥハァがそう言って、哺乳瓶を見せつけてきた。


「ご都合主義のミルク!? なんだそれは!?」


「これは偉大なる神、カスクソ邪神様より賜りしものでゴワス」


 崇拝しているのか、バカにしているのか、よく分からんぞ!?


「すなわち、これは神の奇跡でゴワス」


「そ、そうなのか……」


 どうやら今の俺が理解できるようなものではなさそうだな。



「俺が転生者だと知っていたのか?」


「知っていたでゴワス」


「ええっ!? なんで分かったんだ!?」


「この星では、頻繁に転生者が生まれるでゴワス」


「ええっ!? よく生まれるのかよっ!?」


「その通りでゴワス。そして、赤子なのに『スローライフオーラ』を放っているのは、転生者に決まっているでゴワス」


「スローライフオーラ!? なんだそれは!?」


「スローライフを心から望む者から出ている意志の力のことでゴワス」


 俺、そんなの出してたの!?


「スローライフ邪魔し隊は、全員それを察知できるでゴワス」


「ということは、あんたらからは逃げることも、隠れることもできないということか!?」


「その通りでゴワス」


「勘弁してくれよ!?」


「勘弁しないでゴワス」


 うう、ひどい話だな……



「俺は生まれる前に、神の声を聞いたんだよ」


「そうでゴワスか」


「その神は、俺がスローライフを望んでいることを知っていた。それなのにこの世界に転生させてくれたんだよ。それでもスルーライフを送ることを認めてはくれないのか?」


「その質問に答える前に、確認したいことがあるでゴワス。貴様が言っている神は、カースゥ・ク・ソ・ワライトール神様で間違いないでゴワスか?」


「ああ、そう名乗っていたよ」


「ならば、認めないでゴワス」


 あっさり却下されただと!?


「なんでだよ!? これは神がスローライフを認めたということだろ!?」


「それは我々を創造したのも、カスクソ邪神様だからでゴワス」


「はぁっ!? ナニソレ!? 矛盾してないか!?」


「していないでゴワス。神は生物たちに試練を与えているだけでゴワス。試練を乗り越えた先には進化があるでゴワス。だから、矛盾していないでゴワス」


「それって、俺とあんたらの両方に与えられた試練ということなのか?」


「その通りでゴワス。ああ、神はなんと素晴らしいのでゴワスか! さすがでゴワス!!」


 そういうものなのか?


 よく分からん。


「では、許可証が存在するのも神の試練なのか?」


「その通りでゴワス」



「なぜ俺に許可証の存在を教えてくれたんだ?」


「それはこの世界の常識だからでゴワス。すぐ手に入る情報だから、教えても問題ないでゴワス」


「そうだったのか」



「ダンジョンって、なんなんだ?」


「神が造りし、試練の場でゴワス。内部には容赦なく襲いかかってくる敵や、卑劣な罠が存在しているでゴワス。宝が手に入ることもあるでゴワス」


「へぇ、そういうものなのか」


 ゲームに出てくるダンジョンみたいなものなんだな。



「そういえば、今の俺は日本語をしゃべっているようだけど、この世界でも通じているんだよな?」


「通じているでゴワス。この世界の公用語は日本語でゴワス。アルファベットやカタカナ語も使えるでゴワス」


「ええっ!? なぜそうなったんだ!?」


「転生者が使っていた言語が、なぜか定着したでゴワス。時間や長さの単位なども、地球のものが採用されているでゴワス」


「ほう、そうなんだ」


 地球人の俺にとっては都合が良いな。



「むっ、しまったでゴワス! そろそろ次の仕事に行く時間でゴワス! では、私はこれで失礼するでゴワス!!」


「ご教授、ありがとう!」


 トゥハァが部屋を出て行った。



 はぁ、この世界でも苦労しそうだな。


 さて、これからどうしようか?


 ヤツらが成敗しに来る以上、なんとか戦えるようにならないといけないよな。


 だが、そんなのどうすれば……


 俺は武道の類はやったことがないからなぁ。


 うーむ、どうしようか?


 そういえば、あのカスクソ邪神が特典とか言っていたような気がする。


 それって、いったいなんなのだろうか?


 ラノベに出てきそうな能力なのか?


「ふふふっ、どうやらワシらの出番のようじゃな!」


 突然、聞き覚えのない声が聞こえてきた。


 男性のような声だな。


 いったい誰なのだろうか!?


「オラァァァァッ!!」


 ベッドの下から何かが飛び出して来た。


「フハハハハハッ!! ワシらが特典の『お得セット三人衆』じゃぁぁぁっ!!!」


 しゃべる妙な物体が三体現れた。


 丸太のいかだ、金色の毬藻まりものようなもの、白い粒が入った透明な袋だ。


 大きさは全員手のひらサイズだ。


 三体とも空中に浮いている。


「な、なんだあんたらは!?」


「じゃから、お得セット三人衆と言っておろうが!!」


 丸太の筏から声が聞こえた。


 筏なのになんでしゃべれるんだ!?


「いや、だから、それはなんなんだ!?」


「カスクソ邪神が特典を付けると言っておったであろう!? その特典なのじゃ!」


「ええっ!? あんたらが特典!?」


「その通りじゃぁぁぁっ!!!」


 神の用意した特典だから、しゃべれるのかな?


 まあ、そこはどうでもいいか。


「そ、そうなのか。では、まずは自己紹介をしようか。俺は生方速人だ」


「では、まずはワシからにしようかのう」


 丸太の筏から声が聞こえた。


「ワシは『カンテイ・七郎しちろう』じゃ。シチローと呼ぶのじゃ! お主のことはハヤトで良いかのう?」


「ああ、構わないよ。よろしく、シチロー」


 名前の呼び捨てか。


 なんだか若返ったような気分がするぞ。

 社会人の間は、苗字にさん付けで呼ばれていたからな。


 まあ、実際生まれ変わって、若くなっているのだがな。


「次は俺君の番だ!」


 金色の毬藻のようなものから声が聞こえてきた。


「俺君は『サンクチュアリ・ジャッジメント・二十五郎にじゅうごろう』だぜ! サンクトと呼んでくれ! よろしくな!」


 サンクチュアリ・ジャッジメント・二十五郎!?


 な、なんだその名前は!?


 サンクチュアリ・ジャッジメントって、ナニ!?


 二十五郎って、数が多過ぎるだろ!?


 意味が分からないぞ!?


「あ、ああ、よろしくな、サンクト」


「俺君は『カスクソ師』なんだぜ! どうだ、すげぇだろ?」


 カスクソ師!?


「ええと、それはなんなんだ?」


「知らねぇのか? カスクソ師っていうのは、カスクソ邪神から情報をもらえるすげぇヤツのことなんだぜ!!」


「神から情報を!? 確かにすごそうだな!」


「そうだろ? よっしゃ、ハヤトにも情報をもらうところを見せてやるぜ!」


「ああ、では、頼むよ」


「じゃあ、いくぜ! うおおおおおおおっ!! 全知全能のカスクソ邪神よ! 情報を恵んでくれぇぇぇっ!!!」


 サンクトが回転し出した。


 これはなんなのだろうか!?


 神への儀式的なものなのか!?


「うひょおおおおおおおおおっ!! うへええええええええっ!! むぴょおおおおおっ!!」


 サンクトが奇声を上げ続けている。


 ええと、これはいつ終わるのだろうか?


「もぺえええええええっ!! ぬひゃああああああっ!! もひょおおおおおっ!!」


「あのさ、シチロー。これって、どのくらいで終わるんだ?」


「さっぱり分からん!!」


 分からないのか。


「では、先に自己紹介を済ませてしまおう」


 白い粒が入った透明な袋から声が聞こえた。


 よく見ると、こいつは梱包材みたいだな。


「ボックは『歪曲次元わいきょくじげん四千三百三十よんせんさんびゃくさんじゅう三郎さぶろう』である。ディディとでも呼べ。よろしく頼む」


 歪曲次元・四千三百三十三郎!?


 意味が分からなさ過ぎる!?


 歪曲次元って、なんだよ!?


 四千三百三十三郎って、多過ぎだろ!?

 なんでそんなに増えたんだよっ!?


「ああ、よろしくな、ディディ。ところで、なんでディディという呼び名なんだ?」


「ディストーション、ディメンションだからである」


「ああ、なるほど」


 歪曲次元を変換したというわけか。


「ボックはアイテムボックスが使用できるのである」


「それはどういうものなんだ?」


「異空間にある箱に物品を収納できる能力である」


「おおっ! それは便利そうだな!」


 ファンタジー小説とかに出てくる能力だな。


「うむ、とても便利である」


「ああ、すごいな! ん? そういえば、シチローって、どんな能力があるんだ?」


「ワシのか? ワシはな……」


 カンテイという名前だし、鑑定能力があるのかな?


「体が硬いのじゃ!!」


「えっ!? どういうことだ!?」


「言葉通りじゃ!」


「えええええっ!? 魔法のような特殊な力はないのか!?」


「ないのじゃ!!」


「カンテイという名前なんだから、鑑定能力とかないのか!?」


「鑑定能力? それはどのような能力なんじゃ?」


「物品の真偽とか、良否を見分ける能力だ!」


「そんなものはないのじゃ! ワシの名前は船の艦艇じゃからな!」


「そっちの艦艇だったのか!?」


 ま、紛らわしい……


 しかも、シチローは筏だし……


「ええと、では、硬いから何ができるんだ?」


「それはハヤトが考えることじゃ! お主の特典なのじゃからな!」


「そ、そうなのか。なら、敵にぶん投げても良いのか?」


「そ、それは痛そうじゃから、やめて欲しいのう……」


「なら、盾にするとか?」


「そ、それも遠慮したいのう……」


「なら、なんの役に立つんだよ!?」


「そ、それは、そうじゃ! 確かカスクソ邪神がワシらを強化することができると言っておったぞ! おそらく鍛えれば強くなるのじゃ!!」


「鍛えられるのか? それはどうやるんだ?」


「分からん!!」


「ダメじゃないか!?」


 結局、ディディの能力以外は使い物にならないんじゃないか!?


 サンクトはいまだに奇声を上げながら、回転しているしな!

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