第24話
「くっ!殺せ!」
「殺すか!お前は人質なんだよ騎士様」
「じゃあ離せ!」
「離すかボケ!?人質だって言ってんだろ!」
あいつらは何をしているんだ。命のやり取りをしている最中とは思えないほどにゆるみ切ったやり取りをしている。こっちはどうやってこの状況を変えようかと、無い頭を振って考えているというのに・・・・
「おいハゲ頭、こいつの命が惜しけりゃ動くんじゃねえぞ」
誰がハゲだ、てめぇだってほぼ剥げてんじゃねぇか。
そんな風に言い返してやりたかったが、今刺激しては逆上して人質の女騎士のことを本当に殺しかねない。ひとまずは怒りの感情を抑えつつ、相手の言う通り足を止めて、抵抗する気が無いことをアピールするために手を上げる。
「へへっ、じゃあそのまま後ろを向け」
「・・・・わかった」
まずいな、人質を取ってそのまま逃げてくれればよかったのだが、どうやらそういうわけにはいかなそうだ。奴は恐らく後ろから俺を殺すつもりをしているのだろう。奴の思惑はバレバレなのだが、それでも今の状況では従うしかない。
「そうだ、そのまま動くんじゃねぇぞ」
「馬鹿!僕はいいから逃げろっていってるだろ!」
うるせぇ僕っ子騎士様はもう少し命を大切にするべきだ。ここで逃げるだけならそりゃ簡単だと思う、ていうかぶっちゃけると殺されたくないし今すぐ逃げ出したい。
前の世界で同じ状況に遭遇したら実際俺はどうしてたんだろうな。と思うが今の俺には神が一応くれた力がある。だから助けられる可能性があるのなら助けるべきだ。
・・・・・善行を積めば神も考え直してくれるかもしれないしな
「マヌケが、死ねぇ!!」
すぐ後ろから男の怒鳴り声が聞こえる。もうそんなに近づいていたのかと少し驚きはあるが、近づいてくることは既に想定済みだったため冷静に対応する。
すぐさま後ろを振り返り、男がナイフを振り上げてるのを確認。今なら人質に危害を加えられることはないだろう、俺は勢いに任せて男に飛びかかり女騎士様を拘束から助け出す。
「ぐぅぅ!?」
予定通り人質は無傷で救出できた、だが予想以上に奴の動きが早く腕を切りつけられてしまったのだった。切り付けられたところが熱を帯び、段々と痛みを感じ始める。以前もカッターで誤って指を切ってしまったことがあったが、その時以上に傷が深いのか痛みがその時の比ではない。
「切られたのか!?だから逃げろって言ったじゃないか!」
「二人とも生きてんだからいいだろ」
「・・・それは、そうだけど」
騎士様が泣きそうな顔をしているので、悪いことはしてないはずなのにこっちがいたたまれない気持ちになる。っとそんなことよりまだあの盗賊頭を無力化したわけでは無いの気を抜いていられない。俺は痛む腕を抑えながらも立ち上がって、突き飛ばした奴の方を見据える。
「てんめぇ、ふざけやがってぇ!」
怒り心頭、その言葉が一番似合うだろうか。奴さんは顔を真っ赤にしてこちらへと向かってくる。それに対して俺は拳を構える、まだ身体強化の恩恵が切れたわけでは無いが最初に比べると少し体が重い。おそらく恩恵の制限時間がもうすぐ切れるという事だろう、だからこの一撃で決める。
「「死ねやああああ!」」
野太い男の声が重なり空気を震わす。片方が吹き飛び、もう片方が地面に倒れ伏した。
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