第20話
「すみませーん、もしよろしけれヴぁ!?」
「あ”ぁ?」
なんでだよぉぉ!なんであいつらがいるんだ?
「何じゃお主、なぜ身を隠すのじゃ?」
挙動不審な動きをして木陰に身を隠した俺に怪訝な顔を見せるヨルムル。しかしそんな顔をされても困る、だってヨルムルの感じていた人の気配って言うのが数日前に出会ったあいつらだったのだから。
「おい、今誰かいなかったか?」
「いや俺は聞こえなかった」
「そうか、気のせいなら別にいいんだが」
どうやら数人に怪しまれはしたがバレはしなかったようだ。しかしあいつらとの距離はそう遠くない、下手にこの場を離れようと動けば物音で今度こそ見つかってしまうかもしれない。
とはいえ日も落ち始めており、ここでじっとしていればあいつらが何処かに行くかどうか怪しい。場所を変えてくれればいいのだが、ここで野営をする可能性の方が高いだろう。
「もしかしてあ奴らが話しておった盗賊共か」
「そうだよ、どうしてこうも運が悪いかなぁ」
頭を抱えて悩んでいるとやはりというかなんというか、盗賊たちはごそごそと野営の準備を始めてしまった。いよいよじっとしている訳にはいかなくなってきたので、一か八か盗賊団の連中が忙しなく動いている間にこの場を去ることにする。
「何故逃げる?お主ならあの程度の連中どうにかできるじゃろ?」
ゆっくりとできる限り音を立てずにこの場所を離れようとしていると、肩に乗ったヨルムルが疑問を口にする。
「馬鹿言うな、あの人数相手に勝てるわけないだろ!それに能力もできるだけ使いたくないんだよ」
能力の効果が切れた瞬間に全身をめぐるあの激痛は、正直好んで受けたい代物じゃない。それにただの盗賊だからと言っても実力がどのようなものかは全く分かっていないのだ、そんな数十人を相手にしたらもしかしたらの出来事があるかもしれない。出来得る限りリスクは負わないようにしたいのだ。
「ふむ、どうにも慎重な男じゃ」
「慎重で結構、わかったらさっさと逃げるぞ」
「いや待て」
理解してくれたのかと思ったが、ヨルムルはまだ俺の事を引き留める。いったいこれ以上ここに何の用事があるのだろうか。俺は精一杯声のトーンを落としながら、彼女に理由を問う。
「お主が言っていたブロンド髪の女はどこじゃ?」
何なんだ一体、ブロンド髪の女と言えば俺を嵌めた張本人の事だろう。こっちとしてはできれば顔すら見たくないのだが、何やらヨルムルはその女の事が気になって仕方ない様子。
「知らん・・・・っているじゃねぇか」
「何?どこじゃ?」
「ほらあの奥の木の所だよ、座り込んで寝てんじゃないか」
蛇女がなぜブロンド髪の女を探しているのかはわからないが、野営の準備をする盗賊たちから少し離れた所で気にもたれかかって寝ている姿を見つけたので場所を伝える。
「やはり彼女じゃったか」
「やはり?知ってるのか?」
眠っているその女を見るやヨルムルは何かを知っているかのような言い方をする。あれだけ不自然に執着していたので何か知っているんだろうとは思っていたが、どうやら俺の予想は当たっていたようだ。
「話はあとじゃ、あの女を救うぞ」
「え?は?ちょっと待て!救うってなんだよ、相手は盗賊だぞ!?」
急に何を言い出すかと思えば、あの女を救うってどういうことだ。さっぱり訳が分からず疑問をそのままヨルムルにぶつけるが、彼女は急かすだけで理由までは教えてくれない。
「悪い様にはならん!さぁ行くぞ!」
「せめて説明はしろよぉぉ!?」
結局、人化したヨルムルに強制されて俺たちは木の陰から飛び出し奥で眠っている少女の元へと走ることになった。当然そのことに盗賊たちが気付かないなんてこともなく、すぐに周囲が騒がしくなる。
「おいおい、一体何の用だお二人さん」
くっそぉぞろぞろ集まってきやがって、数が圧倒的に違いすぎる。本当にこの数相手にどうにかなるのだろうかと不安に思ってヨルムルの方を見る。
するとそこには余裕の笑みを浮かべる彼女の顔があった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます