第18話
「のぉ、わらわふぁふぁらがへった・・・というわけだからふこひくってよいかの」
「人の首元に噛みつきながら喋るんじゃありません」
腹が減っていたのはわかるが、人に牙を立てながら食べていいかと聞く意味はあるのだろうか。どうでもいいことを思考しながら俺たちは森の中を進む。
今回は当ても無く進んでいるわけでは無く、ヨルムルの案内の元進んでいるため今度こそ森を抜けられそうだ。この鬱蒼としたモンスターだらけの森とおさらばできる、そう思うだけでこのヨルムルという名の蛇に感謝してしまう。
食料とされても許せるというものだ。
「ふぅ、ごちそうさまじゃ」
「はいはいお粗末様でした」
ヨルムルは俺の肩の上でケプッと一息つきつつ満足そうにしている。
なぜ肩に人を乗せているのかって、馬鹿を言うんじゃない。今肩に乗っているヨルムルは最初に出会った青い蛇の姿、人の姿を維持するのはどうにも疲れるとか何とかで普段は蛇の姿で生活しているらしい。
こちらからすれば好都合なので俺からは特にそのことに触れることはない。正直あの破廉恥な女性の姿で近づかれるのは女性慣れしてない男にとっては心臓に悪いのだ。
「なぁ本当にこっちで合ってるのか?一向に景色が変わらないぞ」
「案ずるな、大分人の気配が近づいておるしもうしばらく歩けば人の居る場所に出るじゃろ」
「適当だなぁ」
彼女と行動を共にするようになってから既に丸一日が経っているのに、一向に人の生活圏に出ないのだ。今はヨルムルの案内だけが頼りなので従うしかないのだが、それでもこう何も見えてこないと不安になるものだ。
「そういえばお主は転生してきたと言っておったが真か?」
人の気配がするという方向へと適当な会話をしながら歩いていると、ヨルムルがおもむろに俺が転生してきたことを話題に上げる。一瞬なんで知っているんだと思ったが、簡単に自己紹介をしたときに言っていたのを思い出す。
「本当だよ、俺は最近この世界に転生させられたんだ」
「ほぅ!真だとは思わなかったがその辺りの事を話してくれんか」
まさかこんなすぐに信じるとは思わなかったが、やはりこんなファンタジーな世界じゃ転生なんてのも無い話じゃないのかもしれない。俺にとっては刺激的な出来事ばかりだが、彼女にとってはどうかわからないので勿体ぶる事もなく、転生されるときの話とされた後の数日の出来事を話す
最初は転生させられるきっかけになった、財布を拾って金を抜いてしまった時の話
「はっはっは!一時の欲望で世界を追い出される羽目になるとはなぁ!」
俺だってこんな目に合うとは思わなかったが、なってしまったものは仕方ないしどうにかして生きていくしかない。
そして次に最初の戦闘、カニカマキリとの出会いを話した。
「カニカマキリとは愉快な名前じゃ、何にせよそんなへっぽこな状態でよく生き残ったものじゃな」
「あの時は必死だったからな、自分でもびっくりだ」
あの時は本当に生き残るために必死だった。恩恵がどういうものなのかも分っていなかったし、あんなでかい生き物を目の前にして平常心を持つことさえギリギリだったのだから。
最後に盗賊たちに嵌められた話
「何じゃそれは、つくづく運のないやつじゃのぉ・・・って待て、ブロンド髪の身なりの綺麗な盗賊と言ったか?」
「ん?あぁ、俺より少し身長が低くて髪を一つ括りにした、後、俺を集団に襲わせた張本人だな。それがどうかしたか?」
「あ、いや何でもないのじゃ」
急に態度がおかしくなったがその娘に何か思うところでもあるのだろうか。その盗賊の話をしてからというもの物思いに耽ってしまって会話はそれで終了してしまった。
「・・・王族の娘?いや、まさかのぉ」
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