第17話
「起きろと言っておるじゃろうがっ!」
腹部に鈍い衝撃を感じて目を覚ます。目を覚まして真っ先に視界に映ったのは俺を徹底的に追い込んできた、この状況を作り出した張本人である蛇女。ということはここは死後の世界というわけではなさそうだ。
つまり何らかの理由で生かされていると考えるのが妥当だろうか。
「・・・なんで俺を殺さないんだ?」
「やっと起きたか、やはり人間は弱い生き物じゃの」
俺が口を開いたことで彼女が俺が目を覚ましたことに気が付く。高圧的な態度は最初であった時と変わらずで、何か文句の一つでも言ってやろうかと思ったが能力の副作用のせいかその元気さえ出ない。
「はっはっはっ!動けんのなら無理するでない。それでなんじゃ、なぜ殺さないのかだったか?」
「そうだ、俺を食うために追いかけてきたんだろ」
何が楽しいのかやたらとテンションの高い彼女だが、こちらの質問には一応答えてくれるようだ。彼女は少し考えるようなそぶりを見せた後、満面の笑みで答える。
「殺してしもうたら二度と食えなくなるからじゃな」
さらりと笑顔で恐ろしいことを言ってくれる。
「つまりあれか、美味しいものはゆっくりと味わって食べる派ってことか」
「おぉ!そういうことじゃ」
そういうことじゃ、じゃないよこの蛇女。なに恐ろしい笑顔で適当に言ったことに同意してくれちゃってるのさ。つまりは俺は生きた餌であり、彼女に生殺与奪の権利を握られてしまったという事になる。
生きるも死ぬも蛇女次第・・・・こうやって話ができていることを考えると俺が思っている以上に人間について理解があるようなので、最初に戦った様な意思疎通もできないモンスターに生餌にされるよりはましだと思うしかないか。
「最終的には殺して食うつもりか?」
「だからやたらと殺しはせんといっておるだろう」
うーむ、やっぱりこの蛇女はやばいやつなのは間違いないんだろうけど、どうにも話の通じる奴だ。このまま少し不安なことは聞いておくとしよう。
「これから俺を巣に連れていったりするのか」
「はぁ?なんで童の寝床に会ってすぐの人間を連れて行かねばならんのじゃ、ちょっと味がいいからって調子に乗るでない」
調子に乗っているつもりは無いのだが、そう言うってことは巣に持ち帰って拘束されるなんてこともなさそうだ。ますますこの女の意図がつかめない、食べる気ではいるくせにそのほかに手を出す気はないような。
「俺を見逃してくれるってことか?」
「そんなわけないじゃろう、何のために追いかけてきたと思うとるんじゃ」
あぁもう分らん。逃がす気はないのに拘束する気もない。ただただ味がおいしいから殺さずにじっくりと楽しみたい。じっくりと好きな時に俺を食うとなるとある程度近くにいないといけない、だが俺は町を目指しているためずっとこの森にいるわけでは無い。
「もしかしてだけど、これから一緒に行動するつもりですか?」
俺がそう聞くと彼女は不敵な笑みを浮かべつつ、突っ伏したまま動けない俺の元まで顔を近づけると
「当然、童と生涯を共にしようぞ」
そのセリフだけ聞けば長年連れ添ったカップルが結婚を決めて、身を固める一歩のようで感慨深いのだろうが、俺の場合は餌と食事者の関係。到底うれしいものではなかった。
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