第11話
わっつどぅゆーみーん?
こいつは一体どういうことだ。中学生くらいの身なりのいいお嬢さんについて木々の間を抜けると、そこには明らかにやべえつらしたおじさんお兄さんの集団がいた。
「「あ”?」」
こ、怖すぎる、どう考えても友好的なタイプの人たちではないのは明らか。ここに俺を連れてきてくれたお嬢さんも顔を伏せてその表情をうかがうことはできない。というかここに連れてくる前に言ってた彼女の不穏な言葉の意味が今分かった。
「・・・・嵌めやがったなこの餓鬼ぃ」
前の少女に聞こえるか聞こえないかくらいの小声でつぶやく。
間違いなくこれは罠、本物の盗賊たちがこの森に迷い込んだ人間を襲い金銭を強奪するために仕組んだことだったのだ。それならさっき少女が言ったことにも合点がいく。
さてどうするか?集まっている盗賊たちの数はざっと見て十人ほど、とてもじゃないが一人で相手できる数じゃない。まともに戦えば囲まれて瞬殺、かといってこの数相手に逃げ切れる気もしない。
「なんだなんだ?なんだおめぇ?」
「お?お嬢様もいんじゃねぇか」
盗賊たちがざわつき始め、いよいよもって選択を迫られる。こうなってしまってはこちらも手段を選んではいられない。
少し、ほーんの少しだけ心が痛むが下種な手段を取ることに決めた。目の前で俯いている少女の肩を少し強引に掴み、ナイフホルダーから抜いたナイフを少女の首元に近づける。
「いやぁ!離して!」
分かってはいたが少女は突然後ろから拘束され悲鳴を上げる。その声に罪悪感が湧くが、この少女も俺を嵌めた盗賊共の仲間、人質として利用させてもらう。
あ、一応念のためにナイフを一回だけ舐めておこう。
アニメでよく見る悪役がやるような、「それ危なくない?」という舐め方で威圧感もアップさせておこう。実際恐怖心を煽れるのかはわからないが、できる事は全部やっておいた方が生存確率は上がる・・・はず。
「お嬢様!?」
誰だ?お嬢様?この嬢ちゃんの事か?
まぁ今は何でもいいか、他の小事よりも助かることが最優先。少女を人質にしながら高らかに叫ぶ。
「てめえら全員!命が惜しけりゃ身ぐるみ置いてけ!」
「「・・・・・・」」
あれ?無視された?
しんと静まり返る空間で一人冷や汗を流す。盗賊たちの奇怪なものを見るような眼、人質にしている少女もこちらを振り返り驚愕の表情を浮かべているように見える。
「はぁ?何言ってんだオマエ。俺たちを誰だと思ってんだ」
「あんま舐めた態度取ってるとお前から殺っちまうぞ?」
こいつら人質取ってるのが見えねぇのか?!
盗賊の仲間の一人を人質に取っているというのにも拘らず、盗賊たちはにやにやと不快な笑みを浮かべじりじりと距離を詰めてくる。
「へへっ、お前も俺たちと同じ賊だろ?その女を渡すんならお前は許してやってもいいぜぇ」
なるほど交渉か、確かに俺も成り立てとはいえ盗賊の端くれ、お互いにここは不干渉にしようという事だろう。あいつらからすれば仲間を返してほしい、こっちとしては見逃してほしい、利害は一致している。
だが問題は相手が俺のような財布から二万抜くような小悪党ではなく、簡単に人を殺すような極悪人だという事。正直に言ってこの少女を返したところで、約束を無かったことにして殺しにかかってくるのは火を見るより明らか。
「うるせぇ!黙って身ぐるみ置いていけっつってんだろ、この糞雑魚盗賊団ども!」
「あ?何だとこの野郎!野郎ども、まずはあのハゲ野郎を捕らえろ!」
「「おー!!」」
どうやら人質作戦は逆効果だったようで、盗賊たちは俺の言葉に逆上してそれぞれ得物を手に猛進してきた。そのそれぞれが物騒な言葉を上げながら襲ってくるのでもう恐怖しかない。
とりあえず意味のなくなった人質を捕らえていても仕方ないので、人質の少女を突き飛ばし背を向け全力で逃げる。ナイフを舐めた恩恵のおかげか身体は軽い、またあの筋肉痛に襲われる恐怖がよぎるが、殺されるよりましだと必死に足を動かした。
「はっはー!許してくれぇ!!」
「「逃がすかぼけぇ!」」
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