(三)

 夕方、バスを乗り継ぎ実家に帰ってきた。

 戻ってくると、母には弁護士に会ってきたことなどを話した。

 すると母は「バカ言うな!」と怒った。

 そりゃあ、住み慣れた土地を離れるのは嫌だろうと思う。でもそんなに怒らなくてもいいのに。今年で七三になるし、畑仕事も辛そうだし、もう楽をしてもいいのではないか。

 しかし、母は味噌汁とおかずも持ってきて居間のちゃぶ台に置いて話し始めた。

 もともとここは先祖代々の土地だったのだそうだ。母は父の元へ嫁入りしたときに、祖母と祖父にそう聞かされたのだそうだ。

 先祖代々というのはかなり古く、江戸時代から続く農家で、明治維新だけでなく太平洋戦争を経て先祖代々脈々と受け継がれて守ってきた土地だった。姿を消していった近隣の農家もあったが、うち・内野家はずっと続いてきたのだ。


(続く)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る