(二)-13

 後部のドアのノブを自分の手でガーっとスライドさせて開いて乗り込んだ。

 運転席のすぐ後ろの二人掛けシートに腰を掛けた。前と後ろにそれぞれ席があったが、誰も乗っていなかった。

 運転手さんは高齢の男性だった。桐原平太という名前だった。この車、バスというのに、助手席のダッシュボードの所に運転手さんの案内プレートが刺さっていた。そのプレートの下には「石見直江津タクシー」と書かれていた。なるほど、バス会社ではなく、タクシー会社が定時の乗り合いタクシーとして運営しているのか。

 車が走り出すと、運転手さんに話しかけられた。


(続く)

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