第5話


かわいそうに…


そう思いながら、散らばった男の子のランドセルと中の物を片づけていた。


だいち あさひ くんか…1年1組なんだ。


「 クゥ~ン… 」


男の子のショートパンツ姿から見える、小さなひざの辺りをペロペロと舐め始めたまるすけ


「 ふふッ!・くすぐったい!・・ 」


まるすけの舌がその可愛らしい声を呼び出した。


その声に反応した私は男の子のほうを振り返った。


「 だいじょうぶ? 」


まるすけのペロペロから逃げようとして、立ち上がろうとした男の子の黒のキャップがズレ落ちた。


その姿を見た瞬間、散乱した筆記用具を拾い集めていた私の手は、ピタっと止まってしまった。


がッ・外国人?…


違う…


ハーフ?…


髪はストレートがシャープで綺麗な金髪


素敵な美形の鼻に、可愛らしいラベンダーピンクカラーの唇


無邪気に潤んだ目の中に潜む、神秘的な雰囲気に吸い込まれそうになる、オーロラ色の澄んだ瞳


何?この子…


とても美しくて見たことのない可愛らしさ…


『 ポトン 』


まるすけの水ボトルを、思わず手から落としてしまった事さえ気がつかない私は、少年の美しい姿にしばらく見惚れていた。


まるで、子供の頃に読んだ、童話に出て来る王子様のように見えた。


はっ!


我にかえったわたし・・


少し熱った顔を手で覆いながら男の子の顔から目を逸らすと、まるすけが舐めていた男の子のひざの辺りに目をやった。


え!?…


男の子の足は泥と血が混じって赤黒色に染まっていた。



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