第24話 ツイストドーナツと司令塔②

 チャット上ではあるが、ズンダとの再会を前に、俺は少し緊張していた。過去に裏切られた苦い思い出がフラッシュバックする。だが、今の俺には仲間が付いている。俺の背後から、サバイブのメンバーと先生が見守っていてくれている。俺の操るPCのモニターを全員が凝視する中、静かに戦いは始まった。


ツブアン:俺だ。いるんだろ?


・・・(返事が無い)


ツブアン:警戒するのも無理はないか。俺は今、隠れてこれを打っている。

ツブアン:その証拠にこれをおまえに見せてやる。

ツブアン:(警察の内部マニュアル 部外秘 表紙画像)


「津部!それを外部に公開したら、まずいぞ!」

「角嶋巡査長。津部君を信じて待ちましょう。きっと何か意味があるんです」

「原課長、、、」


ツブアン:俺は今後も面白いことをやるためにここへ侵入している。警察の手の内を知ってしまえば、後はやりたい放題だからな。邪魔をしてほしくなかったが、ちょうどいい、一つ頼まれてくれないか?あの時よりももっと面白いことしようぜ。金も13億どころじゃなく、もっと稼げるぜ。


ズンダ:面白いケ?


 来た!!


 反応があった!やはり、奴は俺からの連絡を待っていた。

 こんな奴でも、一時は手を組んでいた。もう一度仲間だと思わせれば何とかなるかもしれない。


ツブアン:手始めにいいこと教えてやろう。お前の名前と住所は警察にばれたから、自宅にいるなら逃げたほうがいいぞ。

ズンダ:ほんとナン?逃げるン。


警察無線

”こちら特殊急襲部隊SAT。容疑者の自宅に到着。いつでも突入できます”

”本部よりSAT。突入せよ!繰り返す、突入せよ!”


”こちらSAT。容疑者不在!逃げられました!”


ズンダ:近くで見てたらホントに来たズ

ズンダ:助かったヌ


 これで奴は俺の事を信用した。後はドローンをおびき寄せるだけだ。


ズンダ:頼みとは何だン?

ツブアン:実は、俺が今いるここ、警察本庁にあるデータサーバの中に警察の過去の事件や容疑者の全データある。俺はここに内部からウィルスを仕込んで破滅させることができるが、バックアップデータは遠隔地にある。そこは厳重に警護されていて俺のハッキングだけでは潰せない。

 ズンダが今、操作しているドローンで総攻撃してくれると助かるんだが。やってくれるか?


ズンダ:警察いなくなればやりたい放題。俺やるッス


 よし!乗ってきた。後は荒木戸さんの分析結果を待つまで何とか時間を稼がなくてはいけない。


ツブアン:ところで、ドローンを使って都民を人質にとるなんてすごいことを思いついたな。

ズンダ:オイラの凄さを知っているのはお前だけア。会社のやつらは俺を厄介者とののしるル。だから思い知らせてやるル。俺の凄さを、怖さを、面白さヲ!お前がいなくても実行する予定だったズ。


「竜巻の発生予測ポイント出ました!2時間後にお台場潮風公園東出入口付近です!今日は臨時休業で人はいません」

「ありがとう荒木戸さん。発生時刻の近くになったらカウントダウンしてくれ」


ツブアン:お台場潮風公園東出入口付近の地下に秘密のデータセンターがある。

今から2時間後に大型荷物の搬入で出入口のゲートが開くから、その時に一斉に中へ入ってバックアップデータサーバを破壊してほしい。タイミングは俺が指示するから、全ドローンを近くで待機させてくれ。


ズンダ:わかった。破壊ル。


 付近の交通監視カメラがドローンの集まる姿をとらえた。それをサイバー局フロアの全面大型モニターへと映し出した。


 不気味な光景だ。


 空中に浮遊するドローン一台ではただの点でしか表示されないが、これだけたくさんの数が一斉に集まる姿はまるで、巨大なアメーバが空中をさまよっているかのように、うねっている。

 しかもこれが、一斉に爆発するとなると、甚大な被害が想定される。なんとしてでもくい止めなければいけない。


「竜巻発生まで残り10分です!」

ツブアン:あと10分でゲートが開く

ズンダ:わくわくナ


 ほんの数日前に俺が作ったプログラムだ、いくら荒木戸さんが気象学のエキスパートであっても、十分な検証はできていないはず。でも、やるしかない。ここで失敗すれば、騙されたと知ったズンダが何をしでかすか分かったもんじゃない。

 一度きりのチャンス。頼む!シミュレーション通りに発生してくれ!竜巻よ!


「5秒前!」

ツブアン:4

「3!」

ツブアン:2

「1!」


ツブアン:今だ!


ズンダ:いくいくいくゥー!


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