第36話 ルーカス様は私が幸せにします

数日後、貴族と王族が集まり、元王妃様の裁判が行われた。ただ彼女はあの後、光の魔力のせいで、完全に精神が崩壊。毎日壁に向かって謝り続けているとの事。その為、生かす事の方が罰になるだろうという事で、元王妃様は幽閉されることになった。


さらに元王妃様の実家でもある侯爵家も事件に関与していたとの事で、お家取り潰しも決まった。


第二王子のアーロン様だが、彼は特に犯罪に関わっていなかった事と、陛下の血を引いているとの事で、このまま王宮で過ごすことになった。ただ、かなり我が儘に育っているため、再教育が必要らしい。


そしてルーカス様だが、正式に王太子に就任した。5年も王宮を離れていたという事もあり、今から猛勉強を始め、早ければ3年後には国王に就任するらしい。


ちなみに私はと言うと、ルーカス様の婚約者として次期王妃になる為、王妃教育が始まった。といっても、私は既に王妃教育を密かに行っていたので、私の仕事は皆に顔を覚えてもらう事らしい。


そして今日は、ルーカス様の王太子就任式と、討伐部隊のパレードが行われる。前代未聞、魔王が倒されたという事で、民たちの間でも既にお祭り騒ぎになっているらしい。


光の魔力を持つ者として、私も王宮魔術師たちに積極的に協力したいのだが…何分ルーカス様の厳しい監視がある為、中々進んでいないのが現状だ。


その為、業を煮やした魔術師たちが、こっそりと公爵家に足を運んでいる事は、ルーカス様には内緒だが…


「アリシア、準備は出来たかい?」


「はい。でも私は、いつもの様に女騎士の衣装を着たかったのですが…」


なぜか私は、真っ白なワンピースを着せられている。


「君は光の魔力を持つ令嬢なんだ。巷では、君の事を聖女と呼んでいるよ。だから、聖女をイメージした衣装がいいのではと、女性陣で話し合ったみたいだよ」


「私が聖女ですって…もう、どうせライラお義姉様が選んだのでしょう?最近聖女に関する本を、積極的に読んでいたもの…」


「いいじゃないか。その衣装、とてもよく似合っているよ。さあ、皆が待っている。行こう」


ルーカス様にエスコートされ、玉座の間へと向かった。まずここで、ルーカス様の就任式が行われた。陛下から王太子の証でもある、王冠とマントを承ったルーカス様。その瞬間、見守っていた貴族から、大きな拍手が沸き起こった。


そして次は、討伐部隊のパレードだ。4つの部隊がそれぞれ馬で王都の大通りを進んでいく。最初はヴィーノお兄様の部隊、次がバランお兄様の部隊、その次がグラディオンの部隊、最後にルーカス様の部隊と続く。本来隊長が部隊の先頭を進むのだが、私とルーカス様は、一番最後を、天井のない馬車で進むことになっている。


私も馬に乗れるのに、どうして馬車なのかしら?そんな思いを抱きつつ、黄金に装飾された豪華な馬車に乗り込んだ。


そして、ゆっくりと進む馬車。しばらく進むと、沿道には溢れんばかりの人が。


私たちの姿を見ると


「「ルーカス殿下!アリシア様!」」


「ルーカス殿下、魔物討伐お疲れ様です」


「アリシア様、魔王と倒していただき、ありがとうございます」


ものすごい歓声に、どうしていいか分からず固まってしまった。


「アリシア、君の人気はすさまじいね。さすが俺の婚約者だ。ほら、皆に手を振って」


耳元で囁くルーカス様。そうか、手を振るのか。笑顔を作り、必死に手を振る。こんな風に注目されるなんて初めてで、どうしても顔が引きつってしまうのだ。


「アリシア…俺を好きになってくれてありがとう。君に出会えたことで、俺の人生は180度変わった。俺はもう、君なしでは生きていけない。それぐらい、アリシアは俺にとって大切な存在なんだ。どうかこれからも、俺の傍にいてくれるかい?」


急に耳元でそんな事を囁きだしたルーカス様。


「もう、今この場でおっしゃらなくてもいいではありませんか。でも、ありがとうございます。私にとってもルーカス様は、とても大切な存在です。もちろんずっと傍にいますわ。これからは、私がルーカス様を支えていきます!」


「これからは?これからも、だろ!君はこの数ヶ月、ずっと俺を支えてくれていたからね。大好きだよ、アリシア」


そう言うと何を思ったのか、私に口づけをして来たのだ。その瞬間、周りから大きな歓声が上がった。


「「「ルーカス殿下、アリシア様。末永くお幸せに」」」


民たちから祝福の声が上がる。


「もう、ルーカス様ったら、皆の前でなんて事をするのですか?」


「俺がどれほど幸せか、皆に見せつけたかったんだ。アリシアに会えたお陰で、俺は今とても幸せだ」


そう言ってルーカス様が、少し恥ずかしそうに笑った。わずか7歳で母親を殺され、それ以降は過酷な日々を送っていたルーカス様。魔物討伐に向かうルーカス様は、本当に絶望の眼差しを向けていた。でも今は…


「ルーカス様、これからは私がもっとあなた様を幸せにいたしますわ。だから、覚悟してくださいね」


ギューッとルーカス様に抱き着いた。愛おしくてたまらないルーカス様の笑顔を、これからも守っていきたい。私の手で…



おしまい




~あとがき~

これにて完結です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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