第28話 魔王との闘い
洞窟中、ものすごい光に覆われた。あまりの光に、魔王は目を閉じ、手で顔を覆っていた。今だわ。急いでルーカス様とお兄様たちの元に向かい、治癒魔法を掛けた。
「ルーカス様!」
「アリシア」
ギューッとルーカス様に抱き着いた。この感じ、たまらなく安心する。
「ルーカス殿下、アリシア。抱き合っている暇はない。今すぐ洞窟を出て、逃げるぞ」
ヴィーノお兄様が私たちを引き離そうとする。
「ちっ、光の魔力の力が開花したか…でも、もう後戻りはできない。とにかく、そいつらを倒して、お前を手に入れるまでだ」
光がおさまると同時に、魔王が私たちに向かってすさまじい魔力をぶつけてきた。
「アリシア、ルーカス殿下、逃げてくれ」
お兄様たちが私たちを庇う様に前に出た。そんなお兄様たちを押しのけ、1歩前に出る。
なぜだろう、体中から魔力がみなぎる。それも、今まで感じた事のない、温かい魔力。まるでお日様の光の様な、そんな魔力なのだ。一気に手に魔力を集中させると、そのまま魔王の魔力を受け止めた。
「アリシア?」
目を大きく見開き、固まっているルーカス様とお兄様たち。
「どうやら私には、特殊な魔力がある様です。ですから、どうかルーカス様やお兄様たちは…」
「逃げろというのか?そんな事、出来る訳がないだろう。それにしても、凄まじい魔力だ。俺は何も出来ないが、せめてアリシアの傍にいさせてくれ」
そう言うと、私の傍に並ぶ様に立ったルーカス様。彼が傍にいてくれるだけで、なんだか安心する。
「アリシアと言ったな。確かにお前の魔力はすさまじい。でも、光の魔力が目覚めたばかりのお前が、魔王の俺に勝てると思っているのか!」
一気に魔力をぶつけてくる魔王。
「キャァァァ」
あまりの衝撃に、後ろに押しやられる。あいつ、一体どれだけ魔力を持っているの。それに、明らかに押されている。このままだと、私の魔力が尽きるのも時間の問題だわ。
どうしよう、私が負ければ、ルーカス様の命がない。
「ヴィーノお兄様、バランお兄様。どうかルーカス様を連れて、安全な場所に避難してください。私はきっと、持ちません。だから、どうかルーカス様を」
私はきっと魔王には勝てない。それならせめて、ルーカス様だけでも、そう思ったのだ。でもなぜか、お兄様たちは腕を組んだまま動かない。もちろん、ルーカス様もだ。
「お兄様、最後くらい妹のお願いを、聞いて下さいませ」
「いいや、聞けないな。そんな事をしたら、ルーカス殿下に一生恨まれる。そもそもお前、無駄話が出来るほど余裕がある様じゃないか。もっと真剣に戦え!」
何なのよ、お兄様ったら。こっちは必死に戦っているわよ。それなのに、余裕があるですって!本当に失礼しちゃうわ。
「ヴィーノは本当に口が悪いね。でも、ヴィーノの言う通りだ。アリシア、力が入りすぎているよ。もっと力を抜いて。俺が支えるから」
そう言うと、ルーカス様がギューッと後ろから抱きしめて来た。さらに、ふっと耳に息を掛ける。ちょっと、何をするのよ。
でも次の瞬間、ものすごい魔力が放出された。
「ウァァ」
魔王が悲鳴と共に、バランスを崩している。もしかして…
「そうだ、アリシア。力を抜いて、魔力に集中するんだ。君ならきっと勝てるよ」
体に力を抜き、魔力を集中させる…
なぜだろう、ルーカス様に抱きしめられているおかげか、安心感が半端ない。それと同時に、体中からさらに魔力が沸き上がるのを感じる。その魔力を一気に手に集中させた。
「魔王、やっぱり私はあなたの言いなりにはならないわ。私は愛するルーカス様と幸せになるの。だから、どうかここで消えて。さようなら、魔王」
「止めろ…頼む…待ってくれ…」
真っ青な顔をした魔王に向かって、ありったけの魔力を放出する。その瞬間、再び洞窟中が光に包まれた。
「ウァァァァァァ」
悲鳴を上げて倒れ込む魔王が目に飛び込んできた。終わったのね…
「アリシア、大丈夫か?」
倒れ込む私を抱きかかえてくれるのは、ルーカス様だ。すぐにお兄様たちが、魔王に近づく。
「アリシア、よくやったな。魔王は倒したぞ。それにしても、まさかお前にそんな力がある何てな…」
私が、魔王を…
「アリシア、本当に君って子は…どこまで俺を驚かせたら気が済むんだ」
「あら、私1人ではきっと、魔王を倒せませんでしたわ。ルーカス様が傍にいて下さったから倒せたのです。あなた様のお陰です」
「アリシア!!」
私をギューッと抱きしめてくれるルーカス様。私も抱きしめ返したいが、魔力を使い果たし、これ以上動く事は出来ない。
「さあ、皆の元に戻ろう。きっと心配しているだろう。それに、魔王を倒した事も報告しないといけないしな」
私の頭を撫でながら、そう言ったのはヴィーノお兄様だ。
私を抱きかかえたまま、ルーカス様が歩き出した。隣にはヴィーノお兄様とバランお兄様もいる。
これでやっと本当の意味での討伐が終わったのね。ホッと胸をなでおろすのであった。
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