第24話another-1

(全国高校探索者大会の準決勝まで戻ります)



『勝者、二子玉高校一年逆崎翔!』

 

「うわっ…… 僕の対戦相手、弱すぎ……?」


 翔は準決勝の相手をあっけなく倒し控室に帰っていく。


(超高校級の渋谷高校一年生もワンパンだろうな。決勝の試合を盛り下げないようにするにはどうすればいいかな……)


 などと暢気に考えている翔であった。




 次に始まるのは準決勝第二試合。


 対戦カードは渋谷高校一年天光勇人と千葉高校二年クラウス=ティンジェル。


 勇人は険しい顔をしてクラウスに対峙する。

 対するクラウスは涼しい顔だ。


「かつての強豪千葉高校が外国人頼りとは、嘆かわしいことだ。決勝には進ませんぞ!」


 渋谷高校の誇りを背負う勇人は試合開始前に口を開く。

 金髪のクラウスが気に入らないようだ。


「僕にも都合があるんだよ。外国人がどうこう言うのであれば、僕の国籍は日本国だ。ミスターミドウのおかげでね。渋谷高校の不正、暴いて見せましょう」


 不敵にクラウスが宣戦布告する。


「お前、言うに事欠いて我が校の不正だと! その口二度と叩けぬよう教育してくれる!」


「そんなに怒るなんて、図星を突かれて誤魔化すためか、知らされていないゆえにホントに不正がないと信じきっているためか僕が確かめてあげるよ」


「ぬかせ! 『天使の祝福』! そしてくらえ正義の鉄槌、『聖刃二段』!」


 まだ試合開始のコールはされていないが、いきりたった勇人はクラウスに攻撃をしかける。

 勇人は軽く跳躍し兜割の要領で上から模擬剣を振り下ろし、続け様に横に薙ぎ払いさらにその後追加攻撃の爆炎の柱が発生する。



『渋谷高校一年天光勇人対千葉高校二年クラウス=ティンジェル、試合開始!』


 運営委員会は止めることなく黙認し試合開始をコールした。



◇◇◇



「分身剣!」


 対するクラウスは残像をいくつか発生させ斬りかかろうとする。

 そして、聖刃二段は実体のない分身の一つに当たり空振りし、爆炎の柱が虚しく立つ。


 残りの分身たちが勇人に斬りかかり、勇人はいくつか防ぐものの、防御が間に合わず食らってよろめいた。


「ぐっ…………」


「今までの試合からして武士道精神を持っているように見えたのだけど、コール前に攻撃してくるなんて買い被りだったかな。しかし、今ので分かったよ。わざわざ『天使の祝福』を使うということは、事情を知らないようだね。ただ、念のためスキルを使わせてもらうよ」


ーーーーーーーーーーーーーー

天光 勇人 レベル 1024

ジョブ【勇者】

ユニークスキル【聖剣化】

ーーーーーーーーーーーーーー

※オールステータスアップ中


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クラウス=ティンジェル レベル 721

ジョブ【バトルマスター】

ユニークスキル【????】

ーーーーーーーーーーーーーー



ーーーーーーーーーーーーーー

天光 勇人 レベル 721

ジョブ【勇者】

ユニークスキル【聖剣化】

ーーーーーーーーーーーーーー

※オールステータスアップ中


ーーーーーーーーーーーーーー

クラウス=ティンジェル レベル 1024

ジョブ【バトルマスター】

ユニークスキル【????】

ーーーーーーーーーーーーーー



「んー? スキルを使ったはずなのにバフが僕にはつかず、天光にはついたままか……。いや正確には僕には一瞬ついてすぐ消えて、天光のは一瞬だけ消えて復活した。てことは装備品とかなのかな? でも大会支給品だしなあ……」


「何をごちゃごちゃ言ってやがる! 一つ防いだからっていい気になるなよ! くらえ、奥義『聖気爆炎斬』!!」


 

 勇人の模擬剣が光り聖なる炎に包まれたあと、クラウスに突進して下から斬り払いにいく。

 さらに斬り払いの隙をカバーするように地面から炎柱が三つ連続して飛び出してくる。


「スウェイバック!」


 クラウスは体術の回避技で聖気爆炎斬をかわして後ろに下がる。


「この野郎、チョロチョロと……!」


「はい、ちゅうも〜く! これなーんだ?」



 クラウスの手には、勇人が身につけていたペンダントがあった。



「いったいいつの間に…… 貴様、返せ! 我々を侮辱した挙句盗みも働くとは恥を知れ!」


「これが不正の証拠か。あいつのバフが消え、僕にバフがついたな」


「貴様、まだ言うか!」


「なら試してみるといいよ。もう一度さっきの技をやってみたらわかる」


「言われずともやってやるわ! そこに直れ! 『聖気爆炎斬』!」



 そうして発動した聖気爆炎斬。

 しかし突進のスピードは落ちており技の最後に発生した爆炎の柱は一つだけだった。


「威力が落ちている……」


「これでわかったろう? 僕も仕組みまでは分からないけど君はこのペンダントを身につけている間強力なアシストを受けていたんだ。悪いけど決勝の後証拠として運営委員会に提出させてもらうよ」


 弱体化した勇人の技をまたしても避け切ったクラウスは淡々と勇人に告げる。


 しかし勇人はそれを受け入れられる精神状態ではなかった。



「そんな、そんなバカな! 何かの間違いだ! ペンダントを返せ! 『猛襲斬』!」


「もう、少し頭を冷やしなよ。『瞬速連斬』」


 クラウスは軽々と勇人の突進攻撃をかわし、斬り下ろし、斬り上げ、突き、薙払いの四連攻撃を一瞬で叩き込んだ。

 吹き飛ばされた勇人は身代わりの護符が赤く染まり場外へ飛ばされた。


『勝者、千葉高校二年、クラウス=ティンジェル!』



「ごめんね、ついでに君のジョブ【勇者】をちょっと借りておくよ。後で返してあげるから。もう優勝なんか必要ないけど、ミスターミドウの秘蔵っ子と戦ってみたいからさ」



 優勝間違いなしと思われていた超高校級の勇人を倒したことで起こった怒号や歓声の中クラウスは一人呟いた。



◇◇◇



 翔の控え室では……


「翔、あの人は強い」


「そうみたいだね。超高校級の勇人を余裕で倒してたもんね」


「私では勝てない」


「うそ、そんなに強いの?」


「うん。翔は相手を鑑定していない?」


「対戦するまでの楽しみにとっておこうと思ってさ」


 余裕ぶる翔に対してクラウスを鑑定済みの玲は不安そうな顔をしていた。



◇◇◇



 午後になって二人とも回復したところで、決勝戦が始まった。


『決勝戦、二子玉高校一年逆崎翔対千葉高校二年クラウス=ティンジェル、試合開始!』



 対峙する二人。

 とりあえず翔は相手を鑑定する。


ーーーーーーーーーーーーーー

クラウス=ティンジェル レベル 1024

ジョブ【勇者】

ユニークスキル【交換】

ーーーーーーーーーーーーーー


・【交換】

 視界にいる相手と自分の同種のものを交換することができる。消費魔力なし。


 いや、コレやばない? 

 と危機感を持った翔であったが時すでに遅く、クラウスはスキルを行使していた。


ーーーーーーーーーーーーーー

逆崎 翔 レベル 99999

ジョブ【無職】

ユニークスキル【リバース】

ーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーーー

クラウス=ティンジェル レベル 1024

ジョブ【勇者】

ユニークスキル【交換】

ーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーーー

逆崎 翔 レベル 1024

ジョブ【無職】

ユニークスキル【リバース】

ーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーーー

クラウス=ティンジェル レベル 99999

ジョブ【勇者】

ユニークスキル【交換】

ーーーーーーーーーーーーーー



「多分鑑定で見ているだろうから言うけど、今さっき僕と君のレベルを【交換】させてもらったよ。あと【交換】スキルのついでの効果として自分と相手のスキルやステータスが見えるんだ。じゃあいくね! 『瞬速連斬』!」


 クラウスは平然と翔に襲いかかる。

 クラウスのあまりの速さに翔の目には彼が消えたかのように見えたが、ほとんど本能的にスキルを発動し攻撃を逃れる。


「ショートワープ! やっべ、危なかったよ……。とりあえず僕のレベルを【リバース】しないと」


 そして翔のレベルは98976になる。


「これで一撃KOはなくなったか。玲の言うこと聞いとけばよかった……」


 レベルを交換される前に攻撃しておけば勝てたのに、と後悔する翔。


 すぐにクラウスのレベルを【リバース】して1にするが、直後レベルを【交換】され翔のレベルが1に、クラウスのレベルが98976になる。

 再び自分のレベルを【リバース】して99999にするが翔はまたクラウスによりレベルを【交換】され元の木阿弥に戻る。

 そしてこれ以上レベルの【リバース】をしても無駄だと翔は悟った。



 そこで、翔はもう一度鑑定で見た【交換】の内容を思い出した。


 そして翔はにやりと笑い、『絶・隠行術』を発動する。


「! いなくなった。まさか逃げたわけじゃないよね。透明化するスキルか、気配も感じられない。参ったな、視界におさめなければいけないという弱点を突かれたかな」


 全く姿がわからなくなった翔を前にクラウスは困惑する。

 クラウスは右側面から炎の弾が飛来してくるのが見えた。


「どこから攻撃が来るかわからないなんて厄介だな……」



◆◆◆◆◆◆


 前半の勇人vsクラウスについて補足です。


 最初の【交換】では、レベルの交換とバフ状態の交換をしています。

 レベルについては成功しましたが、バフについてはペンダント由来のものだったため、クラウスにバフが一瞬だけ乗ったけどペンダントがないためすぐに消えました。

 逆に勇人はバフが一瞬だけ消えましたがペンダントを持っているためすぐに復活しました。


 なのでクラウスはバフについて疑問を持ちます。

 そして、装備品は大会の物が支給されているので、不正ができるとしたらアクセサリーかもしれないとあたりをつけました。

(装飾品は何らかの効果がある物の持ち込みはチェックを受けて不可ですが、勇人のペンダントは魔法陣がなければ効果を発揮しないためチェックを通り抜けたので、勇人は知らされることなくつけていました)


 次に勇人の1回目の聖気爆炎斬の間に、クラウスはアクセサリーの交換をしています。

 クラウスは何もアクセをつけていないので、勇人のペンダントがクラウスのもとにやってくるだけという結果になりました。

 そしてバフの効果がクラウスに移ったのでアクセサリーが原因だとわかりました。

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