第45-46話another

※第45話、第46話の別verで、後半は変わりません。


(皇帝への攻撃がことごとく反射される)


「無駄無駄無駄無駄無駄ァァァァッ! 奇襲、毒殺、誘惑、時間停止全て無駄ァ! 陛下のスキルは世界一ィィィィィィ!」


 なんか宰相のネジが飛んでるんだけど。


 反射を突破するんじゃなくて反射が関係ない状況に持ち込めばいいんだ。

 てなるとやっぱり餓死させるのが一番かな。

 水も食料もなけりゃ絶対死ぬんだから。

 あ、そういや生きるのに必要なものがまだあったな。



◇◇◇


 

 僕が考えた作戦をテレパシーでみんなに伝える。


「フラン!」


「任せてください! ブレイズウォール!」


 フランが火魔法を発動し、皇帝から少し離れた周囲を炎の壁で隙間なく取り囲む。

 ある程度の距離を取らないと反射で消されちゃうからね。


「「「「連続発動、フレイムバースト!」」」」


 そして残り4人でブレイズウォールの内側に炎の攻撃魔法を絶え間なく発動させる。

 もちろん皇帝のバリアに触れないように。


「馬鹿め! 陛下のスキルは熱も跳ね返すのだぞ! 無駄だぁっ!」


 宰相がなんか言ってるが、別に蒸し焼きにしたいわけじゃない。


 やがて、皇帝が玉座から立ってこちらにのろのろと向かってきた。

 これも想定済みだ。


 皇帝が移動すれば新たに触れる炎は反射されてどっかへ消えてしまう。

 なので、皇帝の移動に合わせてブレイズウォールやフレイムバーストの発生場所をずらせばいい。


 やがて皇帝は玉座から少し歩いた下り階段に差し掛かり、足がもつれて転んだ。

 そして二度と起きてこなかった。



「皇帝さん、死んじゃったね」



 と僕は既に息絶えた皇帝を指さす。


「そんな陛下、陛下……? 指をさすな、不敬だぞ、小僧! 」


 宰相がうつ伏せに倒れた皇帝に駆け寄って確認する。


「なぜ…… 小僧、何をしたあぁぁぁぁ!」


 宰相が絶叫して僕に問いかけてくる。



◇◇◇



 何をしたかって? ただ皇帝の周りの空気を燃やし続けて酸欠にしてあげただけだ。

 反射のバリアに触れなきゃいいんだからさ。


 水と食料の他にも酸素がなけりゃ人は死ぬでしょ。



「うおおぉぉぉぉぉっーーーー!!! 陛下ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

                     


 あ、宰相が壊れたかも。

 スイッチの場所聞かなきゃいけないのに。

 『生命の雫』で精神を治そうかな。


 ひとしきり宰相が叫び終わった後、皇帝の死体から何かを取り出した。




 ポチッ



 

 そして、何かが押される音がした。


「フッ、フハハハハハ! 陛下のいない世界など価値はない! ほら小僧、貴様が探していた魔石核兵器の起動スイッチだぞ! もう押してしまったがな! 全世界道連れだぁ! ざまあみろっ!!」


 マジかよ。


「お兄ちゃん、どうしよう?」


 ナディアが聞いてくる。

 ミサイルを止める方法。

 世界の各国に一斉発射されたのをどうやって止める?

 

 テレポートで着弾点に先回りして物理シールドを貼るか?

 いや、空中で破裂したら超強化された放射線がばらまかれてしまう。


 そもそもミサイルの数が多いから手が足りない。

 5人しかいないんだぞ。

 アナザーディメンションを展開してミサイルを異空間に送るのも同じことだ。

 ああ、時間がない!

 

 そもそも僕が皇帝を殺した後すぐに宰相から聞き出していればこんなことには……


 日本が滅びてしまう。


 お世話になった御堂さんや美城さんもいるのに。

 そうだ、御堂さんたちだけでも今からテレポートでここへ連れてくれば……!



「翔、あせらないで。翔ならきっとできる。いや、翔にしかできない!」


 玲が僕を叱咤する。


 僕にしかできないこと。僕の原点。


 それは、【リバース】だ! だから……




(【リバース】発動! 魔石核兵器ミサイルの着弾点を反転する!!)


 


 このとき、各国の防衛レーダーではありえない現象が映しだされていた。

 あとわずかで着弾しようとしたミサイルが突如反転し、それまで辿ってきた軌跡をなぞりながら元の発射地点に向かっていったのだ。


「ありがとう、玲。いま【リバース】でミサイルの着弾点を反転した。おそらく元の発射地点に落ちるはず」


「私は正妻だから」


 ドヤ顔で胸を張る玲。


「テレポートでここを離れよう」


 僕たちがテレポートで日本に戻ろうとしたとき、宰相は峰打ちで麻痺させていた衛兵を殺していた。


「陛下亡き今、全ての命は無価値! 貴様らも陛下の黄泉路にご同道するのだ! ああ陛下、この者たちを葬送したあと、私めも参りますぞ!」


 狂気に染まった宰相を放置して、僕らはテレポートした。



◇◇◇



 とんぼ返りしたミサイルは露支那帝国内の魔石核兵器が配備されていた基地に次々と着弾。

 帝国の大部分が破壊され、汚染された。人口は激減した。

 周辺国にも凄まじい音と衝撃が襲いかかった。


 多数の爆心地周辺はあまりの放射線の密度により大地が黒く染まっていた。

 衛星写真を撮ると黒い穴が空いたように見えており、のちに暗黒の大地と呼ばれることになる。



◇◇◇



 混乱した帝国を立て直せる人材はほとんどおらず、ゲートも多数が消滅した。

 そもそもダンジョンから魔石もとれないので、わずかに残された物資をめぐってかろうじて人が住める地域も無法地帯と化していた。

 ドロップ品は取れていたので、それと引き換えに魔石製品や食料などを他国の商人から融通してもらい食い繋ぐのが精一杯となっていた。



 当然ながら人道支援がなされたが、支援にきた者たちはことごとく襲われ奪われ犯された。

 また、知らずに汚染区域に入った者は死んでいた。

 そもそも汚染区域の線引きすらまともにできていないのだ。

 そのため、日本は現時点で効果的な支援が困難であるとして、この支援に国費と地方自治体の費用を出すことを禁止する法律を提出し即日可決された。


 いくつかの人権団体が反対したが、この法律は私費で支援することは禁止していないため、


『じゃあお前らが自腹でやればいいだろ』


 と言われて、実際に自費で支援を行った団体は一つもなかった。

 国や地方自治体の補助金が目当てだったからだ。


 また、募金やクラウドファンディングの形をとった詐欺も頻繁に行われ逮捕者が続出したが、資金はどこかへ消えた後であった。

 心からの善意で支援を行った者たちもいたが、全て手ひどく裏切られたためそのうち支援をする者はいなくなった。



◇◇◇



 やがて、露支那人はなぜだか露支那帝国の領土から出国できないことに世界中が気づき始める。

 まず、不法滞在の露支那人が次々と強制送還され始めた。いったん帰してしまえばもう2度と出られないのだから。


 さらに、軽犯罪など些細な理由で財産を没収され、次々と母国の領土に強制送還される者が出始めた。

 特に露支那から借金漬けにされていた弱小国にこの傾向は顕著に見られた。要は復讐だ。



 こうして、各国の外国人犯罪率が減っていき治安が目に見えて改善された。

 特に日本はその恩恵が大きかった。


 またイギリスなどでは、路上でところ構わず排泄行為をしていた露支那人がいなくなったため衛生環境が改善された。

 数々の国際団体でまかり通っていた賄賂など汚職行為も激減して徐々に信頼を取り戻していった。



 ただ、いいことばかりでもなかった。汚染された区域から滲み出る水は周辺国を汚していた。

 また露支那人はなぜか国を出られないが、これはハーフまでであり、クォーター以下は自由に出入りできていたので、彼らを使って汚染水や汚染土をわざと他国に輸出するなども行われ始めた。



◆◆◆◆◆◆


 【リバース】を使わず皇帝を倒す方法でした。

 こちらは当初考えていた方法です。結局酸欠なんですけどね。

 圧倒的なレベル差を理由に反射を突き破るってのも考えたのですが、つまらなくなりそうなのでやめました。

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