第50話 僕は真の最強となりコスモクイーンを倒す。でもなんか様子が変で……

 5人が最強のスキルを発動した後、生き残っていたのは、僕一人だけだった。

 他の4人は地に倒れ伏し動かない。

 やってしまった。


「なんじゃ、一瞬で決着がついてしまったではないか。とんだ興醒めよの」


 コスモクイーンの声が聞こえてくる。



 僕が、殺してしまった。4人を。



◇◇◇



 僕が強制発動させられたスキルは、


(【リバース】発動、4人の生死を反転する)


 一瞬だった。

 派手なエフェクトも手ごたえもない。

 殺した実感もない。

 だが、目の前の彼女たちは死んでいる。




「うわあああぁぁぁぁ!!!!」




 彼女たちは生き返らない。

 【リバース】では生→死は可能だが、死→生はできないのだ。


 僕が【リバース】に目覚めてオルトロスの生死を反転して倒したあと、御堂さんの奥さんが亡くなっていたというのを聞いてみて、試してみたことがある。

 しかし、結果は何も起きていなかった。

 僕の両親の生死にも【リバース】を使ってみたが、やはり何も起きていなかった。

 時間が関係するのかと思って、病院にこっそり忍び込んで霊安室にいる死んだばかりの人にも試したが、それもダメ。


 御堂さんと話したが、たぶん死ぬと物になってしまうから生命を与えられないではないか、もしくは【リバース】にも限度がある、となった。


 さらに悪いことに、【リバース】による死は絶対だ。

 これはダンジョンの800階層あたりから出てくるモンスターに使用して判明している。

 不死性をもつモンスターや、何度か殺さないと死なないモンスターも一度の【リバース】だけで消滅していたからだ。

 だから、【森羅万象】の中にある【ゴッドフェニックス】の致死ダメージを受けても復活するという特性は無視され、生き返らない。



◇◇◇



「【リバース】発動! コスモクイーンの生死を反転する!」



 何も起きなかった。



「フハハハハッ、愚かよのう。妾のレベルは12億ぞ! 虫けらのスキルなぞ効くわけがなかろうて。いや愉快、爽快、痛快じゃ! お主、妾を笑死させるつもりか? 面白いぞっ! 誉めてつかわす」



 くそっ!

 それでも僕はコスモクイーンに向き合って精いっぱいにらみつける。


「ほう、此度の余興は失敗かと思っていたが、深く昏い絶望とやり場のない憤怒のないまぜになったその顔、実に素晴らしいぞ! このような余興もアリかもしれぬな」


「ウオオォォォォォッ!!!」


 僕はポーチからSSSランクの神聖剣レーヴァテインを取り出して、大きく跳躍しコスモクイーンに斬りかかった。


 だが、触れることはできずコスモクイーンの眼前に張られたバリアで簡単に止められる。

 そしてコスモクイーンが人差し指をそっと突き出し、レーヴァテインに触れると剣は粉々に砕け散り、僕の右腕までも弾けとんだ。


「ぐっ……」


 倒れこんだ僕は、すぐに回復魔法を使うが右腕は再生しなかった。


「無駄じゃよ。妾の攻撃には回復阻害がついておる。そなたのレベルでははねのけることはできまい。案ずるな、殺しはせぬ。妾には最強の奴隷がおる、ならば最弱の奴隷を飼うのも一興よな。その反抗的な目、実に良いぞ! 星ガチャに失敗し貧弱な限界レベルの未開の星に産まれた己を呪うがよい! アーハッハッハッ!」


 

 最後の一言が余計だった。

 貧弱な限界レベルというならそれを超えてやろうじゃないか!



(【リバース】発動! 僕のする!)



◇◇◇



「ん、なんだ? 右腕が再生したぞ。どうやって…… くっ、幻想結界!! ぶべらっ!」


 とっさに防御のため展開した数千もの結界を一瞬でぶち破られ、顔を殴られて吹き飛んでいくコスモクイーン。


「もう許さねぇからなぁ! さっきのは玲の分だ!」


「なぜ妾に攻撃が通るのじゃ……?」


「僕のステータスを見てみるといい」



ーーーーーーーーーーーーーー

逆崎 翔 レベル ∞

ジョブ【森羅万象】

ユニークスキル【リバース】

ーーーーーーーーーーーーーー



 限界を突破し、レベルが無限大になった。

 右腕もすぐに再生してコスモクイーンの幾重にも張られた結界も軽くぶち破った。


「なんじゃこれは!? ありえぬ!」


「現実を理解したか? わざわざ鑑定妨害を解除して見えるようにしてやったんだぞ。わかったなら続きだ。これはフランの分! これは三日月さんの分! これはナディアの分だぁ!」



「あべしっ! ひでぶっ! ちにゃっ!」



 死なないように力を絶妙に加減して後ろの壁まで殴り飛ばす。

 そして、吹き飛んで痙攣しているコスモクイーンの前に立って見下ろす。



 やはりわからせは拳に限る。



「…………❤️」


 だが、彼女の様子がおかしい。

 きわどいボンテージの股の部分がぐっしょり透明な液で濡れている。

 そして何だか小刻みに震えているが、痛みというより快感で震えているように見える。


「ハァ、ハァ…… ついに見つけたわ! 私を圧倒的な力で蹂躙できる人! もっと、もっとぶって、ご主人様ぁぁぁぁ!」


 恍惚の表情で僕に近寄ってくるコスモクイーン。

 イキながらアへ顔でこっちにじりじりとにじり寄ってくる様はある意味恐怖で、整った顔や身体が台無しだ。

 


「ふざけるのも大概にしろ! お前のせいで玲やフラン、三日月さん、ナディアちゃんが死んでるんだぞ! 何があっても絶対に許さないからな! 今更命乞いをしても無駄だ!」

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