第49話 銀河の征服者とご対面ですが、全く勝てる気がしません。最強とは何だったのか。

「銀河の征服者は、第一銀河の主星『アルテミス』の実力者一族の期待の子だったそうです。ああ、主星というのはその銀河で最も優れた星のことです。それで、その期待の子は優秀すぎる故、何にも満足することができずその渇きを満たすためとうとう銀河の征服に乗り出しました」


「はた迷惑なやつですね……」


「銀河規模の迷惑ですけれども。かつては『七天極星』と呼ばれた銀河で最強とうたわれた七人の英傑がいたのですが、全てなすすべなく敗れました。征服者は男女問わず慰み者とし、飽きれば今度は無限の塔に送り込んでレアアイテムの『オーバードライブポーション』の発掘作業を延々とさせられるそうです」


「『オーバードライブポーション』って何なの?」


「レベル限界を引き上げるポーションです。これを大量に服用しただでさえ強い征服者がさらに強くなっていくのです。かつての彼女のレベルは1億あったそうですが、今の彼女はいったいレベルがいくつなのか想像もつきません。私は会ったことすらないのです」


「ていうか、あなたたちにも性別があるのね。そんなもの超越した感じを受けるんだけど」


 意外な感じで三日月さんが聞く。


「ええ。というか性別がないと究極の進化に至れないのですよ。つまりそもそも人間になれなかったのです。で、銀河の征服者は各銀河の主星を瞬く間に陥落させ、自ら『コスモクイーン』と名乗っています。そして今は自分より強い者を追い求め挑戦者を招き入れてはいたぶって楽しんでいます」


 ん? てことは僕たちが自ら挑戦しに行かなければいいんじゃないか? 

 絶対勝てないんだし。


「カインさん、僕たちをどうするつもりですか? 事情はわかりましたけど、いやスケールが大きすぎて困るんですが、僕たちに修行つけるとかするんですか?」


「いえ、ここまで話したのはこちらの都合で勝手に召喚してしまったことの詫びだと思ってください。元の星にお返しします。第十銀河などコスモクイーンが気に留めるはずがありません。このまま帰っていただいて残り短い余生を楽しむのがよいでしょう」


 ちょいちょい上から目線が入るんだけど悪気が全くないし、まあ仕方ないか。

 帰してくれるって言うんだから。


 そして、カインが魔法陣を発動して僕たちを地球に帰した。

 帰ってきたところはダンジョンの999階ボス部屋。

 クリスタルに触れると今度はダンジョンの外にワープした。


 テレポートで家にみんなで帰ってきたけど、誰も何も言わずに自分の部屋へ戻った。


 うん、わけわからなすぎだろ。

 夢と言われた方がまだマシだ。



◇◇◇



side ???


「面白いおもちゃを見つけたぞ! 何かないかと思ってあの子を泳がしていたのじゃが、まさか未開の星であんなことをしていたとは。今の余興に飽きたし、次の余興にぴったりじゃ! ああ、誰か妾の渇きを満たしてくれる者は現れぬものか!」


 興奮したその女は手にした鞭を振るい、縄で縛られた全裸の男を叩く。


「はうあっ!」


 男はかつて七天極星の中でも最強と言われた者。


「豚は泣き方も忘れてしまったのかしら? 物覚えが悪い豚はこうよ!」


 しかし、今は彼女に調教された豚に成り下がっていた。


「ぶひっ、ぶひっ!」


「そうよ、そうでなくちゃ。心をこめたご奉仕も忘れずにね……」


 彼女の暇つぶしは続いていく。

 男が完全に壊れない限界を見極めながら延々と……



◇◇◇



 御堂さんにはダンジョン制覇した後の出来事を話した。


「その話が本当だとしたら我々に打つ手はないな。それにそのコスモクイーンとやらが地球に侵略に来る可能性もないのだろう?」


「多分ですが。地球は未開の星として誰も注目していないらしいので」


「なら、気にせず今まで通りに過ごすしかないな。何も起きなければそのまま忘れられたままだろう」




 だが、何も起きないはずもなく……


 


 一般教養の授業中、ふと頭の中に声が響いてきた。


『原始の星の虫ケラよ、カインの身を預かった。ダンジョンの最上階まで来るのだ。お前たち全員でだ』


 隣の玲を見てみる。反対側のフランにも目を向ける。

 多分同じメッセージを受け取ったんだろう。


 

 これやっぱ行かなきゃいけないよね。

 別にこっちを勝手に巻き込みかけたカインなんかどうでもいいんだけど、カイン経由で僕たちのことを明確に知られてる。

 つまりこの犯人の気分次第では地球が危ないってことだ。



◇◇◇



 5人でダンジョンの999階にテレポート。

 ボス部屋にはバハムートはおらず、部屋の真ん中で魔法陣が光っていた。


 乗るしかないよね。

 全く気が進まないけど。




 魔法陣に乗って転送させられた場所は、広いスタジアム。

 そして周りに観客がいる。

 無理やり集められたのかあまり楽しそうな顔をしていない。


 そして、少し高いところの観覧席だろうか、際どいボンテージの衣装を着た緑色の髪の女が椅子に座ってこちらを見ていた。

 いや、よく見ると椅子じゃなくて全裸の男が四つん這いになっている背中に腰かけていた。


 傍にはカインが座らされていた。



「原始の星のダンジョン攻略者よ。ここは第一銀河主星アルテミスにある妾の闘技場だ。喜べ、お前たちには妾の余興に付き合う権利をやろう」


「すまん…… コスモクイーンに目をつけられてしまった」



 ええ…… やっぱりアンタのせいじゃねーかよ。



「そう、こやつのおかげで面白いおもちゃを見つけられたぞ。さすが妾の息子よの」


「えっ……?」


「カイン、妾はな、そなたの生物学上の母だ。父親は妾の椅子になっておる元七天極星の男じゃ。戯れに精を受け入れ産んで、第七銀河に放置したのだ」


「そんな……」


「成長すれば妾を楽しませてくれるやもと思ったが、まあまあの成果じゃの。原始の星に細工をしていたとは」


「それでは最初から私は……」


「そう、妾に泳がされていたのじゃ。レジスタンスごときが妾に勝てるはずがなかろう。全く愚かで可愛い息子よのう」



 カインがコスモクイーンの息子だって。

 と言っても一緒に住んでたとかじゃなくて他人にも等しいよね。


「さて、原始の星の未開人よ。ジョブだけは【森羅万象】と立派なものよな。レベル限界さえ高ければ妾の相手になったかもしれぬものを。そこで妾の新しい余興に付き合ってもらう。お主たち、限界まで殺し合うのだ」


「誰がそんなことするか!」


 僕は当然そんなこといやだ。

 しかし、コスモクイーンのひと睨みで僕たちは動けなくなった。


「拒否権は与えてやらん。妾の目線のみで動けなくなる程度のレベルなぞ本来ならとっくに死んでおるのだぞ? さあ早く妾を楽しませてくれ。実力が拮抗した者同士、さぞや長く死闘を演じ、苦悶と絶望を妾に見せてくれるであろう」


 しかし、動けないんだけどどうすればいいのかな。

 動けてもみんなと戦うのは嫌だけど。


「ん、どうした、死力を尽くして醜く戦わぬか? ああ、動けんのか。全く面倒な奴らじゃ。妾の手を煩わせるとは万死に値するぞ。ほら、これで戦え」


 コスモクイーンがそういうと、僕の体が勝手に動き始める。

 他のみんなも同じようで、みんなが向き合う形になったようで、それぞれが強制的にスキルを発動させられた。


「秘奥義! 神氷裂閃槍!」


 玲の全身から絶対零度の凍気が立ち昇り槍が構えられる。


「全てを灰燼と化せ! エンシェントコロナフレア!」


 フランは太陽の焔を顕現させた。


「死神の一撃!」


 三日月さんは暗殺の奥義を発動。


「【広範囲化】! アルテマストライク!」


 ナディアちゃんは素手格闘の奥義を全体化させて発動する。


 それぞれが最強の攻撃を発動させられたようだ。


 そして僕は……

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