第48話 ダンジョンを制覇したと思ったら別の星に飛ばされていた。何を言っているのかわからねえと思うが(ry

 今、僕たちは日本ダンジョンの999階にいる。

 別に誰に頼まれたというわけでもないけど、到達したらどうなるか見てみよう、ということで5人の意見が一致したからだ。


 ここまで特に苦戦することなくやってきた。

 遭遇するモンスターはとりあえず全部倒し、宝箱も回収してきた。

 帰ったら上質な魔石をJEAに納品できるな。


 ここで終わりなのか、さらに続くのか。

 999階のボス部屋に入る。

 そこには黒光りする巨大な龍が待っていた。

 鑑定では『竜王バハムート』と出ている。



「お兄ちゃん、ここはナディアに任せて」


「うん、頼むよ」


「よーし、いくよっ! アルテマストライク!」


 ナディアちゃんの攻撃スタイルは素手格闘。

 アルテマストライクは究極の闘気をまとった渾身の右ストレート。

 バハムートはその一撃で爆散し、魔石とドロップ品の覇王の槍(Sランク)を残していった。


 そして部屋の奥に現れたクリスタルに触れると…… 

 僕たちは光に包まれた。



◇◇◇



 光が収まったあと、僕たちがいたのはまったく見知らぬ部屋。

 床には何かの魔法陣が描かれている。

 ちらっと解読すると異星間転移の術式のようだ。


 ってことはここは地球じゃないってこと!?



 目の前には突然茶色のローブをまとった男が現れた。

 これはテレポートのスキルだ。


「あなたたちが最後の希望ですか……」


 男がつぶやく。声からすると若そうだ。


「失礼。『原始の星』の方たち。突然で驚かれているでしょうが、まずは客室にいらしてくださいませんか?」


 原始の星、というのは地球のことか?

 まあ何もわからないし言うこと聞くしかないか。

 魔法陣を解析してみたが、わかったのは星間を移動させる機能があるということだけで、僕が起動して地球に帰るのは無理っぽかった。


 案内されるまま別の部屋に入り、椅子にこしかける。

 一応警戒しているが、特に何か仕掛けられるということはなさそうだ。


「そんなに警戒しないでください。私の名はカイン=リサール。第七銀河の主星カミールのレジスタンスリーダーです」


 聞きたいことが山ほどあるが、とりあえず自己紹介は返さないとね。


「僕は、逆崎翔。地球の高校生です」


「私は御堂玲。翔と同じ地球の高校生」


「私はフラン=アスターと申します。翔さまと同じく地球の高校生ですわ」


「三日月花音よ。地球にある日本という国の出身ね」


「あたしはナディア=サハル。お兄ちゃんといっしょの地球から来たの」



 ひととおり自己紹介が終わる。そしてカインが安心したような顔をする。



「ふむ…… 君たちが野蛮な生物でなくてよかったよ。話はできそうだ」


「ではこちらの質問に答えてくれるんですか?」


「いいよ。たくさんあるだろうから一つずつ頼む」


「じゃあ僕から。第七銀河というのはいったい? 他にも銀河があるのですか?」


「私たちや君たちのような知的生命体がいるこの次元は、いくつかの銀河から成り立っている。第一銀河から第十銀河まで観測できている。いま私たちがいるここは第七銀河にある辺境の星『ぺリフィール』だ。君たちがいた『原始の星』は第十銀河に属している。第十銀河では知的生命体は『原始の星』にしか確認されていない」


「…………」


「おっと気を悪くしないでくれ。あなた方は『原始の星』ではなくてチキュウと呼んでいるのだよね。第十銀河にある地球は他の銀河にある星々と比べて文明が極めて遅れているため私たちはそのように呼称しているのだ」


「次は私。なぜ異星人と普通に会話できているのか」


 玲が聞いて初めて僕も疑問を持った。


「知的生命体の究極進化形は人型です。私もあなたたちもそこは変わらない。そして私たちは翻訳スキルを修得しているためこうして普通に話せる。翻訳スキルは会話の一方さえ持っていれば効果を発揮する。あなた方がおかしな進化をしていなくてよかった」


「どうして私たちはぺリフィールに召喚されてきたのでしょうか?」


「えと、あなたはフラン=アスターだったかな。第十銀河にある地球は文明が著しく遅れています。ゆえにずっと放置されていたのです。ですがそうもいかない事情が生じておりまして、文明を最低限にまで引き上げるため、私たちは願いを込めて地球に『ダンジョンメイカーの種』を植え付けたのです。種が発芽するまで一万年かかりました」


「気の長い話よね……」


 三日月さんが思わずこぼした言葉に僕も内心賛成した。


「長い時間をかけて地球は力を蓄えた。ダンジョンが発生し、星民にレベル、ジョブ、スキルが発現しました。わずか百年くらい前のことですかね。そして、ダンジョンの最上階に到達した者が現れたとき、この星へ転移する魔法陣を仕込んでいたのです。ただ……」


「ただ?」


「わずか999階とは予想外でした。これでは十分な戦力とはなりえないでしょう」


「通常ダンジョンは何階あるものなんですか?」


 フランが聞いてみる。その答えは……


「少なくとも9999階で、最もポピュラーなダンジョンは999999階です。そして、第一銀河の主星『アルテミス』にある『無限の塔』はその名の通り無限に階数があります」


 うん。聞かなきゃよかったかな。

 999999階とか適正レベルいくつなのかな。

 レベル99999でイキってた僕が恥ずかしくなってきたよ。


「じゃあ次私ね。確かあの魔法陣の部屋であなた『最後の希望』って言ってたわよね? どういう意味かしら?」


「はい。この次元では、数億年ほど昔に第一銀河から第九銀河までの間で星間戦争が起きていました。ですが、いつまでも決着がつかないため、銀河間で友好協定が結ばれ長らく平和と発展を謳歌していました。しかし十万年前でしょうか、再び全銀河を征服しようとする者が現れたのです」


「十万年前って…… あなたいくつなのよ?」


「私は恥ずかしながら若干50000歳ほどでございます。銀河の征服者により実力者がいなくなってしまい、私のような若輩者がレジスタンスのリーダーを務めております。もうそのレジスタンスもほとんど名ばかりとなってしまい…… そこで、全く未開の星である地球に希望を託して、何とか手に入れた『ダンジョンメイカーの種』を植えたのです」


「それで進化を促してそこから対抗できる者が生まれないかと期待したわけね」


「はい。ですが、地球のダンジョンは999階。そして失礼かと思いましたがあなた達を鑑定したところ、限界レベルが99999でした。最後の希望だと思ったのですが、私たちは賭けに負けてしまったようです」


 ん? 

 【森羅万象】を持つ僕たちは鑑定無効がデフォルトで備わっているはずだけどどうして見られたんだ?


「カインさんのレベルはいくつなの?」


 ナディアちゃんが無邪気に聞く。


「私のレベルは560万です」


 人間じゃねえええ! 

 あっ、異星人だった。異銀河人かな。


「あなた達は素晴らしいジョブやスキルをお持ちです。ですが、圧倒的なレベル差の前には意味をなさないのです。【森羅万象】であれば鑑定無効がありますが私はあなたがたを鑑定できてしまいました。これが未開の星の生物の限界なのでしょうね。残念です」


 勝手に呼んどいて勝手に失望するとか失礼すぎない?


「じゃあナディアの番ね。銀河の征服者ってどんな人なの?」

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