第35話 日本のテロリストと、ついでにアメリカのテロリストも制圧してきました。
御堂君雄は焦っていた。
魔石発電所が襲われたあと、ユニオンアース教が貧富の差の原因であるとする探索者、ひいては統括する探索者協会を襲うことは予測していた。
JEAのセキュリティも強化した。
なのに、なぜJEAがこうもあっさりと占拠されたのか。
もしかしたら魔石発電所襲撃からずっと気を張り詰めていたが最近動きがないと弛緩していたところを狙われたか。
しかも理事会をしていた会議室にきたテロリストは猿渡理事と村田理事を真っ先に殺していた。
これで親露派は排除されたが正直彼らの後を継げるほど人望と財力がある者は育っていない。
そしてそんなことも、目の前の危機を乗り越えねば意味がない。
貧富の差を原因とするなら、なぜ高位の探索者のみを目の敵にするのか。
ダンジョン発生前から続く金持ちだってまだ多くいる。
成金が気に入らないのか?
古今東西、この手の組織は裏で手を引いている者がいるはずだ。
その者たちの狙いは何か?
ダンジョン発生以前の時代に戻ることで得をする連中とは誰なのか?
◇◇◇
冬休みなので玲とフランとふらふら街を歩いているとき、JEA本部がテロリストに襲撃された、とのニュー速が。
そういや今日は理事会があるって御堂さん言ってたな……。
三日月さんは御堂さんの命により露支那帝国に不法侵入中でいない。
速攻テレパシーで御堂さんに連絡をとる。
スマホに出られる状況とは限らないから。
(御堂さん、無事ですか?)
(翔くんか。私は無事だ。会議室に軟禁されているだけだ。JEAのセキュリティを通り抜けてユニオンアース教のテロリストが突然現れた)
「玲、お父さんはとりあえず無事だって」
「よかった……」
(JEAを占拠して目的はなんでしょう?)
御堂さんにテレパシーで聞いてみる。
(まだ聞いていないな。今から発表するようだ。……なんだと!)
(なんて言ってきたんですか?)
(高レベル探索者の強制招集、ダンジョンへ入るゲートの封鎖、魔石エネルギー使用の中止だ。1日以内になされない場合はJEAの理事、日本政府の要人を殺すと言っている。世界の主要国にも同じことを要求しているようだ)
(そんなことできるんですか?)
(常識的に考えて無理だろう。それとも何か腹案があるのか…… ただ、JEAや政府の要人を殺すのだけはできるだろう。最初からそれが狙いかもな)
(今からそちらへ向かいますね)
(だが、セキュリティをくぐってきた方法がわからんぞ。大丈夫か?)
(問題ありません。では行きます)
「玲、フラン、絶・隠行術を発動して。いまからJEAの会議室へ跳ぶから」
「うん」
「わかりましたわ」
そして3人で御堂さんがいるJEAの会議室へテレポート。
御堂さんほか2人の理事が部屋のすみに追いやられていた。
残り2人はうつ伏せで動いていない。
ただの屍のようだ。
そして、緑のローブとマスクをしたユニオンアース教と思われる者が2人。
(御堂さん、来ました)
(どうするのだ?)
(こうします。『隠されし秘密を暴け、ディミスティファイ』)
僕が魔法スキルを発動すると、テロリストが新たに2人現れた。
というより多分最初からいた。
そいつらを鑑定すると、それぞれユニークスキルに【トランスペアレント】、【広範囲化】があった。
【広範囲化】で仲間に【トランスペアレント】の透明化の効果を拡大し、忍び込んだというわけか。
スキルの効果が強制的に解除されて困惑しているところを3人で手分けして峰打ちし、拘束する。
(よくやった。だが他の階にもいるだろう。それも頼むぞ)
(はい)
(あ、待て。首相官邸も見てきてくれ。脅しの対象に入っているということは透明化している奴らが紛れ込んでいるかもしれん)
(わかりました。僕が首相官邸に行くから、二人はここを頼むよ)
(うん)
(任せてください)
首相官邸にテレポートして、ディミスティファイを使用する。
そうするとやはり緑のローブとマスクが姿を現した。
SPは何をしているんだ、と思わなくもないけど、仕方ないか。
次々と峰打ちで麻痺させていく。
透明な僕がやっているからいきなり現れたと思ったテロリストが次々と倒れていくのを見たSPが素早く拘束していくのは曲がりなりにもプロなんだな、と思った。
これで完了。
こっそりとJEA本部に戻る。
会議室に緑の人たちが山積みにされていた。
どうしようねえ、コレ。
でもどうせ暗殺されるんだから数は確保しとかないと。
忘れずにこいつらのユニークスキルを【リバース】で剥奪しておく。
【トランスペアレント】とか【広範囲化】なんてレアスキルもう持ってるやついないだろう。
御堂さんがスマホを操作していた。
後始末かな?
「すまん翔くん、アメリカ探索者協会からの依頼だ。いや、正確にはアメリカ2位の探索者マリアからだが、どうも見えない敵にてこずっているようだ。行ってくれまいか?」
「わかりました。これでアメリカに貸し一つですかね?」
フランを寝取ったこと?
知らんがな。
「そうだ、仮にも同盟国だしな、政治体制が万が一でもゆらぐと日本にも不利だ。フランくんとともにアメリカ探索者協会本部に行ってくれ」
フランと手をつないでアメリカ探索者協会本部の場所を把握し、二人でテレポート。
場所はニューヨークシティタワー。
とりあえず着いたら速攻でディミスティファイ。
これで敵の姿は見えるはず。
依頼をしたというマリアさんをフランといっしょに探す。
容姿を知っているフランが頼りだ。
「マリアさん!!」
やがてタワーの中層あたりでフランがマリアさんを見つける。
傷だらけで疲弊しきったマリアさんはアラフォーの赤髪ショートの女性だった。
「フラン……、あなたも援軍? え、でも早すぎない?」
「それについてはまた後で。とりあえず回復しましょう。このエリクサーを」
そういってフランが神々のポーチからエリクサーを取り出してわたす。
「他の探索者は?」
「見えない攻撃を受けて殺されるか、一部はどこかへ連れ去られたわ」
日本はそうならなくてよかったな。
さて、さっさと捕まえなきゃ。
「フラン、とりあえず残ったユニオンアース教を捕らえようか」
「私は最上階にいるはずの理事たちを確認してくるわ。残党をお願い」
「ええ」
手分けしてユニオンアース教を拘束していく。
最上階でマリアさんと合流する。
「理事の何人かは残念だったけど、残りの人の無事は確保できたわ。ありがとう」
「いえ、マリアさん、まだです。たぶんホワイトハウスに透明化して潜んでいる者たちがいるはず」
「もしかして、日本でも?」
「はい。でもここからホワイトハウスまでは少し距離が……」
「翔さま、マリアさんは信用できますわ」
「わかった。ではマリアさんホワイトハウスの場所を思い浮かべてください。テレポートしますので」
「ええ」
そしてホワイトハウスに転移してきて即、ディミスティファイ。
「なにそのスキル、聞いたことも見たことも…… 姿が現れたわ。こんなに! いつのまに潜んでいたの?」
「フラン、手分けして拘束しよう」
「任せて、翔」
こうして、アメリカもユニオンアース教のテロを制圧した。
日本よりも被害は多かったが、その他の国よりは圧倒的に少なく済んだのだ。
「ありがとう。さすがミスターミドウの切り札ね。ショウ=サカザキ、あなたを敵に回す気は起きないわ。いずれこの恩は返すからね」
「いえいえ、御堂さんの指示に従っただけですから。お役に立ててよかったです」
「……なるほど、フランがついていくわけね」
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