第31話 金髪美少女から一夜のお誘いが!? でもなんか訳ありだったみたいで……

「ユニオンアース教って、かなり危険な団体みたいですね」


「今までさしたる活動は見られなかったが、今回のことで全世界から危険視されるだろうな。露支那帝国も襲っているから近いうちに壊滅させられるんじゃないか」


「ところで、破壊された魔石発電所についてなんですが、僕のスキルで何とかできないか試してみたいと思います」


「できるなら是非ともお願いしたいが…… 三日月くんをつけよう。彼女といっしょに向かってくれ」


「はい」



 魔石発電所の正確な場所は知らないけど、三日月さんは知っているので彼女といっしょにその場所へテレポートする。


 東京第一魔石発電所は住宅街から離れた山の中にあったが、地上部分は見るも無残ながれきが積みあがっていた。

 未だネットは復旧していない。

 国の主要施設は予備の魔石発電機を稼働させているらしいが、このままだと厳しい。


(【リバース】発動! 東京第一魔石発電所の破壊状態を反転する!) 


 すると、一瞬で魔石発電所が元の形に戻った。

 破壊された状態から破壊されていない状態に反転したのだ。

 うまくいってよかった。


「さすがだわ、翔くん。さあ、他の魔石発電所にも行きましょう」


 このあと、三日月さんの案内で襲撃された各地の魔石発電所に行って、【リバース】で直してきた。



◇◇◇



『奇跡! 謎の集団により破壊されたはずの魔石発電所が一日にして修復!! 一体誰が、どうやって?』


 復旧したネットのニュースであっという間に特集が組まれた。


 もちろん、僕や御堂さんはだんまりだから誰も真相を知る者はいない。

 日本政府は調査中としか発表できなかった。

 たぶん永遠に調査中となるだろう。

 ともかく、日本は天文学的な損失を免れたからそれでいいじゃんね。



 そして僕にとって都合のいいことに、日本を守る神の仕業ではないかというのが語られ始めた。

 どういうことかというと、ある時人類には【ジョブ】と【スキル】が与えられた。

 同時に、日本にいる八百万の神々にも同じものが与えられたのではないか、という考えだ。


 それまでうだつの上がらなかった民俗学者がこの説を堂々と唱えると、瞬く間にSNSで拡散され『KAMIKAZE』と題した電子書籍まで発売されることに。

 今回の件も含め、ユニークスキル覚醒者が増えたことや僕が生まれる前に起きた不可思議な現象も全てこの説をもとに無理やり解明されていた。


 僕と御堂さんはこのトンデモ説を苦笑しながら見ていた。



◇◇◇



 魔石発電所襲撃事件から数日後。


「サカザキくん、放課後私の家に来てほしいの。学校テロ事件で助けてくれたお礼をしたい」


「わかったよ」


 玲にはあらかじめフランさんのところに行くと伝え、放課後フランさんといっしょに帰ることに。

 普段は明るくよくしゃべるフランさんは、下校中何もしゃべらなかった。



 フランさんの住む高級マンションの最上階に上がる。

 一人暮らしとのことだ。

 めっちゃ金持ちじゃん、と思うがまあ当然だろう。

 招かれた部屋はそれに反して必要なものしかなくシンプルだった。


 フランさんは覚悟を決めた目でこちらを見て、服を脱ぎだした。


「サカザキくん、私からのお礼よ。私を抱いてほしいの」


 やっぱり。

 ただし、思春期の高校生が期待するような甘酸っぱいものじゃない。


「ごめん。それは無理だ」


「どうして!」



◇◇◇



 あのテロ事件のとき、僕たち3人が指名されたのを聞いてフランさんの鑑定をしていた。


ーーーーーーーーーーーーーー

フラン=アスター レベル 2351

ジョブ【不死鳥の雛】

ユニークスキル【魔神イフリートの加護】

ーーーーーーーーーーーーーー


 ユニークジョブ【不死鳥の雛】は、死んでも一週間後に生き返るという特性を持つ。

 肉体が大部分残っていればいいので、寿命以外では不死と言っていいだろう。


 ユニークスキル【魔神イフリートの加護】は火属性無効貫通効果つきで火魔法が使えて、自身に対する火属性ダメージを大幅に軽減するもの。

 だから、テロリストの『フレアスター』を食らっても多分大丈夫だったはずだけど、念のため魔法防御を高めるバフを与えていた。

 

 ていうかレベル高すぎ。

 ぶっちゃけあのテロのリーダーともタイマンなら互角にいけたと思う。

 あのときは生徒が人質だったけど。



 で、そんなアホほどレベル高い人がなぜアメリカからわざわざ日本に転校してきたのか。

 しかも時期は裏ランキングの更新がされたあとだし。

 どう考えてもハニトラです、ありがとうございました。



◇◇◇



「あの裏ランキング、アメリカにも漏れていたんだね」


「どうしてそれを……」


「だって、あのユニオンアース教が知ってたんだよ、世界第二位のアメリカが知らないわけないじゃん」


 日本は知らなかったようだけど……。


「で、僕を体で誘惑してアメリカに言う通りにさせようとしたの?」


「そうよ。だってあなたは裏ランキングで1位。力でどうにかなる相手じゃないわ。私の容姿ならたいていの男はなびくはずだった。そのために日本語もネイティブなみになるよう短期間で叩き込んだ」


 ま、そりゃそうだ。

 こんな金髪美人、レベルを見てなかったらうっかり抱いてたかもしれない。

 今だって服を脱ぎかけて肌が見えてるのは目に毒なんだからさ。


「それで、どうしてこんなことを?」


「それは……、妹のためよ」


「ごめん、もう一回聞いてもいい? どうして僕を誘惑するような真似を?」


「私の妹の命がかかっているからよ」


 ああ、これは本当のことを言っているな。


 何で分かったかって?


 同じことを2回聞いたのは僕の耳が遠くなったわけじゃなくて、1回目を聞いた後に【リバース】でフランさんの本音と建前を反転させたからだ。

 そして2回とも同じ内容のことを言った。

 だから両方とも本音だ。


「信じる。詳しく聞いてもいい?」


「ええ。私には妹がいるわ。ごく普通の人間。両親もごく普通の人間よ。ユニークジョブもユニークスキルもない。でも、妹は数年前『魔力欠乏症』という病にかかってしまったの。常に魔力が減り続ける奇病で現代医学では治療不可能とされているわ」


「…………」


「魔力が欠乏するのは肉体に栄養が足りないのと同じ。日に日に妹は弱っていく。今はアメリカの探索者協会にいる【ハイプリースト】の魔力付与魔法『ディスチャージ』を毎日かけてもらって症状の進行を抑えている。莫大なお金がかかるから平凡な両親に払えるわけがない。私は探索者協会の専属として依頼をこなしてその対価として妹に魔法をかけてもらってきた」


「もしかして」


「たぶん想像のとおりよ。今回の任務はあなたをアメリカにスカウトすること。そしてあなたを引き抜けば玲さんもおそらく着いてくる。つまり裏ランキング1位と2位を一気に手に入れられる」


「できなかったら?」


「妹の治療が打ち切られる」


 だろうな。


「だから、お願い! もう今月までしか待てないって言われたの! 私といっしょにアメリカに来て! 処女だってあげる! 他のことだって何でもするわ!」


 目の前の金髪の半裸の少女は泣きながら僕に訴える。



 僕は怒っていた。

 吐き気を催す邪悪とはこのことだ。

 人の弱みにつけこんでこんなことさせるなんて、まるで奴隷じゃないか。

 こんなことがまかり通っていいはずがない。



 意地でも汚い大人の思い通りにさせてなるものか!



◆◆◆◆◆◆


【征夷大将軍】

 【侍】の最上位ジョブ。

 二刀流を可能にする。

 マスター特典は一定確率で物理攻撃を無効化する。


 週間ランキング40位以内に入りました!

 みなさまの応援ありがとうございます!

 (2023.1.7)

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