第30話 テロリストは当然難なく撃退しました。なんかやばげな宗教団体っぽいです。

 魔石発電所が襲撃を受けていた同時刻。

 

 僕は授業中居眠りしていた。

 仕方ないじゃん、昨日は遅くまで玲の相手をしていたんだから。




 ブンッ、という音がして電子黒板の画面がブラックアウトした。


「おい、ネットが見れなくなったぞ!」


 続けてネットサーフィンをしていた不真面目な生徒が声をあげる。


 教室の明かりも消えた。



 一体何が?



 学校が混乱に陥る中、今度は濃緑色のローブに濃緑色のマスクをした者たちが教室に乱入してきた。

 それぞれ武器を構えている。


「大人しくシロ! 動くナ!」


 翻訳機を通したときの独特の日本語が教室に聞こえる。

 どうやら隣の1Bも同じ目に遭ってるようだ。


 職員室にも同じく侵入者が現れ、瞬く間に制圧されていた。



 全ての教室、職員室が得体のしれない侵入者に制圧されたあと、校舎の外から拡声器を通した声が聞こえる。


「ショウ=サカザキ、レイ=ミドウ、フラン=アスターはグラウンドに出てコイ! 出てこなけれバ、生徒全員が死ぬことにナル!」


 え、何でピンポイントに僕たちなんだよ。

 しかもフランさんまで。

 仲良すぎたせいか?


 教室に押し入ってきた緑のやつのうち一人を鑑定するとレベル2000超え。

 ガチテロじゃん。

 各教室にこんな奴らがいたら普通の生徒は瞬殺だな。


 仕方ないので3人で外に出る。


 外では黒色のローブとマスクをした身長2メートルほどありそうな者が仁王立ちで待っていた。


「お前たちが、ショウ、レイ、フランだナ?」


「そうだ」


「早速だが死んでモラウゾ」


「何で僕たちなんだ?」


「時間稼ぎカ。無駄だが教えてヤロウ。裏ランキング上位だからダ」


「ってことはお前たちはWEA(世界探索者協会)の者か?」


「チガウ」


「じゃあお前たちはなんなんだ?」


「時間稼ぎは終わりダ。とはいえ助けは来ないだろうガナ。魔石発電所を襲撃してインフラを止めたカラナ。連絡手段がないダロウ」


 だからネットが繋がらないのか。 

 自衛隊の対テロ部隊も来れないか。


「そこから動くなヨ、おかしな行動をすれば建物の中の人間はみなゴロシダ。私に対して危害を加えようとも考えるナ。この周辺が更地と化すゾ」


 おお怖い怖い。


 目の前のこいつも、さっき鑑定した緑のやつも、鑑定したら自爆魔法がかかっていた。

 死ぬか任意で自爆魔法が発動し、このあたり一帯巻き込んで廃墟だ。

 多分テロ部隊全員にかかっているんだろうな。


「ではさらばダ。『灼熱の魔王よ、裁きの炎にて焼き尽くセ! フレアスター』! そしてダブルスペル発動、『フレアスター』!」


 空中に真っ赤な炎の塊が現れ、僕たちに降ってくる。

 しかも2個。

 目の前の男のユニークスキル【ダブルスペル】の効果だ。

 上級の火魔法が襲いかかり僕らにぶつかるとさらに3人を包むように轟音とともに火柱が昇る。


「フッ、ハハハッ、燃え尽きロ! ジョブとスキルの恩恵を受けた罰ダ!! ……ハ?」


 火柱が収まったあと、僕たちは何事もなく立っていた。

 僕と玲は当然だが、フランさんにも魔法防御を上昇させる補助魔法をかけておいた。


「ナゼッ!? くそっ、フレアスター! ダブルスペル、フレアスター!」


 目の前の男が再びフレアスターを使うが、やはり僕たちは無事だった。


「バカナッ、世界一の探索者でも消し炭になるハズダッ! ……こうなったら貴様ら自害シロ!」


「いやだね」


「もう一度言う、自害シロ! さもなくば部隊の者が皆殺しすることにナルゾッ!」


「いや、そうはならない」


(【リバース】発動! この敷地にいる者にかかっている自爆魔法の効果を反転する!)


 目の前の男を鑑定すると自爆魔法が自己回復魔法に反転していた。


(さらに【リバース】発動! この場にいる緑のローブとマスクをしている者たちの生死を反転する!)


 これで大丈夫なはずだ。

 先に生死をリバースすると自爆魔法が発動しちゃうからね。



「おい、いきなりこいつら倒れたぞ!」


 教室から声が聞こえてくる。




「お前たち、皆殺しにシロ!!」


 テロリストのリーダーが拡声器で命令するが、何も起きなかった。

 教室に押し入ったお仲間はみんな死んだはずからね。


「サイコバインド!!」


 僕は目の前の男を光魔法の鎖で捕らえる。


「ナゼッ!? こんなはずデハ…… 私だけデモ、ユニオンアース教に栄光ヲ!!」


 しかし発動したのは回復魔法。

 男は緑色の優しい光に包まれて、唖然としていた。



◇◇◇



「玲、念のため校舎内を見て回ってきて。もしかしたら残党がいるかもしれない」


「わかった」


 フランさんはじっとこっちを見ていたが、それは後だ。


(御堂さん、聞こえますか?)


(翔くんか、どうした?)


 テレパシーで御堂さんと念話をする。

 学校がユニオンアース教とかいうテロ部隊に襲われたことを説明する。


(なんと、本命はそっちか)


(どういうことですか?)


(東京第一魔石発電所のほか、日本の主要な魔石発電所がテロリストの自爆で破壊された。これだけでも大ごとだが、本命は翔くんたちの抹殺で、こちらは目くらましだろう。とりあえず自衛隊に連絡を取ってそちらに向かわせる)


(連絡手段があるのですか?)


(破壊されたのは多重回線のうち、主回線と副回線だけだ。まだ副々回線があるからな。こんなテロ活動も一応想定して軍事用の回線は別にある)



 しばらくして自衛隊の対テロ部隊が到着し全員保護され、テロリストの死体も回収。

 リーダーは尋問にかけられるだろう。



◇◇◇



 翌日、御堂さんの書斎で今の日本の状況を聞く。


「どうやら世界の主要国で同時にテロが行われたようだ。露支那やアメリカは自爆テロの大部分を退けて被害は軽微、EUなどはいくつか主要な魔石発電所がやられたそうだ。日本は6つもやられたからな、最も被害が大きかったと言えるだろう。警備はもちろんつけているが、他の国より襲撃人数が多かったようだ」


 日本だけ襲撃人数が多かったのってもしかして裏ランキング1位と2位がいたからかな……?


「ユニオンアース教については知っているか?」


「教科書のすみっこに新興宗教であるということが書いてあった気はするんですが」


「うむ。彼らは【ジョブ】と【スキル】が発現したことで世界の貧富の差が広がったと主張していてな。ダンジョンから得られた資源は私有せずみなで共有すべきとしている。そして優れたジョブやスキルを持つ者はそれがない者のために無償で働くべきとな。また、魔石をエネルギー源とするのはやめて昔の原子力や火力発電などに回帰すべきとも言っている」


「なぜそんなことを主張しているのでしょうか?」


「おそらく、資源の共有は貧しい者の支持を得られやすいからだろう。貧しい者は数が多いからな。そして数は力だ、露支那帝国のようにな。ただ、昔のエネルギー源に戻るというのは本当に謎だ。昔は人間の活動による地球温暖化などという学説があったが、魔石はエネルギーを取り出したら消滅するから何も排出しない究極のクリーンエネルギーだ。彼らの主張は明らかに人類の文明を退化させるものだから、もしかしたら破滅願望があるのかもしれんな」



◆◆◆◆◆◆


【アヴェンジャー】

 【復讐者】の最上位ジョブ。

 全ての攻撃にランダムの状態異常効果が付き、もともと状態異常を与えるスキルは効果と成功確率が上乗せされる。

 マスター特典は自身が受けたダメージを次の攻撃に上乗せすることができる。

 取得条件の一つの非常に強い恨みとは、相手を殺せれば自分はそのあとどうなってもかまわないと思うくらいの恨みが必要。this way....

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