第28話 ユニークスキルを覚醒させるだけのお仕事です。んで仕事で海外旅行に行って3Pしました。

 北は北海道から南は沖縄まで、全国で行われたユニークスキルなしの人のための講義は、回が進むにつれ参加者が増えていた。

 探索者を職業としない人の参加もあったという。 

 ネットのまとめサイトで、参加者から講義後にユニークスキルが開花したという書き込みがそれなりにあったからだ。


 ユニークスキルは先天的に持ってるほかは、何かの強いきっかけが必要とされる。

 僕は死にかけたことがきっかけだったが、人によってはフラれた直後とか、入試に受かった直後だったりとか、バリエーションは様々だ。

 で、現役トップ探索者の話を聞いたおかげでユニークスキルが目覚めた、と皆が勝手に思い込んだわけだ。


 気持ちはわかる。

 基本ユニークスキルはメリットしかないので覚醒する方法があるのならすがりたくもなるだろう。



◇◇◇



 このことを知った各国は一時期実力派探索者による講義を頻繁に行うこととなる。

 便乗して『ユニークスキルが覚醒する』という詐欺講座が世界中のあちこちで現れた。

 そのせいで日本政府は講義とユニークスキルとの関係はない、とわざわざ発表する羽目になった。


 何人かは本当にユニークスキルが覚醒したらしいけど、期待した成果が上がるはずもなく、ユニークスキル覚醒騒ぎは一年くらいして終わることとなる。



◇◇◇



 僕は各地方の会場に毎回出張して参加者に【リバース】を使う。

 学校は公休扱い。

 JEAの補助用務という理由だ。

 こんな理由が通るあたりJEAの社会的影響力がわかるというもの。

 各地のホテルで泊まるたびに、同行の三日月さんと、その、そういうことをしてから、翌日テレポートで帰ってくる。


 玲はキツキツだが、三日月さんはフワキツという感じだ。

 どっちがいいとかそういうことはないが。



 多夫多妻が認められている現代でも、昔の一夫一妻がいいと思う人間はそれなりに数がいて、ネットでも定期的に論争が生じる定番のネタだ。

 昔からキノコタケノコ論争や持ち家派と賃貸派の争いなど永遠に決着のつかない論争があるが、このネタに一夫一妻と多夫多妻のどちらがいいか論争も加わったわけだ。


 僕は玲以外を抱くというのに抵抗があったから、一夫一妻派寄りの考えを持っていたんだと思う。


 ま、それはともかく、ユニークスキルなしの人のための講義は2か月かけて全国すべて終わった。

 これで日本の探索者の実力の底上げに繋がったら……いいな。



◇◇◇



 10月になり全国で開催されたユニークスキルなしの講義も終わり中間テストも終わったころ、御堂さんに呼ばれた。


「翔くん、玲、二人にいくつかの企業からのオファーが来ている」


「何のオファーでしょうか」


「お抱えの探索者にならないかというものだ。普通なら全国大会の結果を見て3年生をスカウトするのだがな」


 魔石をエネルギー源として様々な製品やサービスが成り立つ現代において、魔石の独自確保ルートがあれば企業として他社に対してアドバンテージがとれる。

 レアなモンスターの魔石なんかはJEAの各支所より高く買ったりするところもある。


 日本各地にあるダンジョンへのゲートのすぐ近くにJEAの支所があるので大体の探索者はそこで買い取ってもらうのだが、JEAの買取は探索者の最低限の生活を確保するという意味合いもある。

 民間の企業が探索者から安く買いたたくのを防ぐためだ。


 探索者からすれば企業に雇われることにより、毎月給与が払われるから探索の成果が振るわない月があっても生活の安定は保証される。

 フリーランサーになるか、サラリーマンになるかは本人次第だ。


「かなり好待遇のオファーだ。初年度から年収1千万+出来高。しかも2年待ってもいいというのだからな。どうする? 受けるか?」 


「いや、受けません。御堂さんの理想に協力できなくなりそうですし」


「私は翔と同じにする」


「そうか。私の傘下の企業ならそのへんの融通はきくがな。では断っておこう」


 御堂さんはJEAの理事であるが、それ以外にもいくつもの会社を経営している。

 どちらかというと実業家の面が強い。



◇◇◇



「翔くん、三日月くんと共にアメリカ、ブラジル、インド、EU、イギリス、南アフリカのダンジョンを見てきてほしい」


「わかりました」


「これらのダンジョンを見て回ってきた後、やってもらいたいことがあるが、それは帰ってきてからにしよう。なに、観光気分でいけばいいさ。なんなら玲を連れて行ってもいいぞ、婚前旅行のつもりでな」


 御堂さん、物分かりが良すぎじゃありませんかね?



 というわけで、まずはアメリカから。

 事前に用意されているパスポートと観光ビザを持って東京からロサンゼルスに飛行機で移動。

 ちなみに近未来にあるはずの空飛ぶ車なんかはまだ実用化されていない。

 エネルギー源が魔石に変わったことで技術革新が進むかと期待されたが、車に関しては空を飛び続けるのに莫大な量の魔石が必要なため、相変わらず地面を走っている。



 ロサンゼルスに着いたら、まず僕と玲は翻訳機能付きのワイヤレスイヤホンを装着。

 三日月さんは自力で世界の主要言語を修得しているため不要だとか。


 そしてレンタカーで近くのゲートまで移動。運転は三日月さんだ。

 国際免許も持っているという。

 あれ、三日月さんってめっちゃ才女だったんだな。


 ゲートについたら、3人とも『絶・隠行術』で姿を隠し、ダンジョンに侵入。

 ダンジョンは基本外国人は入っちゃいけないから、こうやってこっそり入るしかないのだ。

 なんせバレたら即処刑だからね。



 肝心のダンジョンは、日本とあまり変わらない。

 1階からスタートし、いるのはゴブリンやスライムなどだ。

 念のため【リバース】でレアアイテムのドロップ率を反転して倒してみると、日本と同じレアアイテムだった。

 一応教科書的にはどの世界のダンジョンも構造などはほぼ同じで、地域独自のモンスターやアイテムが多少はあるとのことらしい。


 とにかく上の階層を目指して進む。

 事前に三日月さんには【見習い戦士】にジョブチェンジしてもらい【ゴッドハンド】をマスターさせているので3人とも縮地でさっさと進んでいく。

 

 特に目新しいものもなく50階まで到達してから帰ることに。

 帰ってきたらホテルで一泊。

 男一人女二人何も起きないはずもなく……。

 


 てか何で一部屋しかとってないんですかね、三日月さん。


 経費節減のためとか言ってますけど、お金なら潤沢にありますよね?


 ベッドもキングサイズ一つしかないんですが……


 二人とも了解済みですか、そうですか。


 3人でするのは初めて? 僕もです。


 避妊魔法も発動済みですか。そうですか。


 せめてお風呂入ってからにしましょうよ……




 この日、僕は切り札を使った。




 【リバース】で疲れ切った体力を反転し、また体力を回復させたんだ。

 そうしないと乗り切れなかったんだもの……


◆◆◆◆◆◆


【神前闘士】

 バーサーカー系の最上位ジョブ。

 スキルが使えない代わりにあらゆる武器を装備可能で物理攻撃と物理防御が2倍になり、体力の自然回復速度が大幅に上がる。

 マスター特典は保有するスキル数に応じて全ステータス上昇。

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