第27話 全国大会が終わりました。なぜか敏腕エージェントのメイドさんと一夜を過ごしてしまいました。

 全国大会シングル戦で現れた魔法陣の調査のため、チーム戦は延期。

 ただし、調査の結果に関わらず渋谷高校1年の天光勇人はチーム戦を棄権すると発表。


 大会運営委員会が調査を開始し渋谷高校の校長の不知火に調査への協力を依頼すると、不知火はこれを拒否し依願退職をした。

 しかし事態を重く見た東京都教育委員会は退職を保留。

 教育委員会は彼を呼び出し事情を聴取。

 その場で彼はそれまでの態度と異なり全てを話した。


 その内容をまとめると下のとおり。

・校長就任時に東京ドームの地面に魔法陣を描いて隠した

・魔法陣の効果はステータス大幅上昇と自然回復を与える

・特製のペンダントを持つ者が魔法陣内に入っている間のみ効果を発揮

・校長のユニークジョブは【魔法陣師】

・大会優勝時にもらえる特別ボーナスと、優勝者を輩出し続ける高校の校長という名誉が欲しかった

・人生の集大成であり最高傑作の魔法陣がなぜ暴かれたのか納得いかない



 結局不知火校長は全国大会に出場した者たちの努力を無にし信頼を著しく失墜させたとして懲戒免職となり、退職金は支払われなかった。

 また、校長在任中の特別ボーナスの返還を求められている。


 さらにこれを受けて運営委員会は、渋谷高校の過去10年の全国大会優勝記録を全て参考記録として扱うことを発表した。



◇◇◇



「これでひと段落かな」


「そうですね」


 僕は御堂さんの書斎にて一息つく。

 全国高校探索科総合大会には、JEA(日本探索者協会)も後援している。

 今回の騒動が持ち上がって教育委員会が渋谷高校の校長を文部科学省に呼び出したとき、JEAの理事として御堂さんも同席を求めて認めさせた。

 

 校長が自分の行いを認めるわけがなかったので、校長の聴取に僕も参加した。

 ただ、絶・隠行術を使って透明状態で御堂さんの横にこっそりついてきたんだけど。

 もちろん御堂さんの指示だ。

 そして、校長に【リバース】をかけて本音と建前を反転し全てを話させた。


 で、校長の自白を元に校長の魔力とペンダント、魔法陣の魔力の質が一致したので、大会の運営委員会は公式に渋谷高校の不正を認めた。

 しばらくの間世論はそのことで騒いでいた。



 チーム戦は渋谷高校を除いて行われることとなった。

 魔法陣も消去済みだしこのために1年間努力してきた高校生も大勢いるためだ。

 僕たちも出場し優勝した。

 僕はサポートに回り補助と回復に専念。

 実際に相手を倒すのは玲と倉橋先輩に任せた。

 まあこっそり相手にデバフを掛けたりしていたけど。



 シングル戦があれだったせいかチーム戦はあまり盛り上がらなかったようだ。

 観客がシングル戦よりも少なかった気がする。



◇◇◇



 全国大会が終わりかねてから御堂さんが計画していたユニークスキル覚醒の準備ができた。

 まずは北海道、そして東北、という順に『トップ探索者によるユニークスキルなしでのダンジョン攻略指南』講義が行われることになる。


 一回目は北海道の札幌。

 会場には三日月さんといっしょに飛行機と電車できた。

 会場を見渡していると結構探索者っているんだなあ、と思う。


 それもそのはずで、講義は現在日本の公式探索者ランキング1位の神崎昇さんが講義をするからだ。

 聴講に来た人を鑑定で見てみるとユニークスキル持ちも結構来ていた。

 タイトルにユニークスキルなしで、っていうのを入れてるにもかかわらずだ。

 そういう僕も現役トップの話は聞きたいのでこうして紛れ込んでいるのだけれど。


 とりあえず仕事をしておこう。


(【リバース】発動! この会場にいるユニークスキルなしの人のユニークスキルの有無を反転する!)


 よし、これでおーけー。

 みんな熱心に神崎さんの話を聞いているから講義後にみんなびっくりするだろうな。

 講義を聞いたらユニークスキルが覚醒するって思ってくれて、残りの地方での講義の参加者も増えたらいいな。


 なお、この手の講義は普通はオンラインのみかオンラインと会場同時開催なのだがこれは会場だけに限定している。

 ネット上だとアナログだとか時代錯誤とか言われまくったが、僕のスキルの都合上仕方がない。 


 表向きはオンラインの授業と対面の授業では対面のほうが生徒の成績がいいという調査結果を理由にしている。

 ホントにどちらがいいかどうかは知らない。


 ちなみに神崎さんも数年前まではユニークスキルがなかったが、死にかけた際に目覚めたらしい。

 僕と同じだ。


 講義が終わった後は、札幌を三日月さんと二人で観光した。

 テレポートがあるからいったん来てしまえばもうすぐに帰ってもいいんだけど、それはもったいないということでホテルまで既に取られている。


 そしてホテルの部屋でくつろいでもう寝ようかと思ったところでドアがノックされる。

 ドアを開けると三日月さんがいて、話があるという。


「三日月さん、どうしたんですか、こんな時間に」


「お昼は楽しかったわね」


「ええ、そうですね」


 なんだかいつもと雰囲気が違う。

 言葉遣いも違うし、ていうか少し甘い香りがして顔が赤い。

 ワインでも飲んでたのだろうか。


「なんか飲んでたんですか? お水でも飲みます?」


「いえ、いらないわ。ほしいのは翔くんよ」


 そう言うと三日月さんは僕にキスしてくる。

 玲とは違った味がする……。

 同時に体も押し付けられ、服越しに胸が当たる。

 うーん、でかい。


「うふふ、胸大きいでしょ。普段のメイド服だと邪魔だから胸を押さえているのよ」


 ああ、道理で。

 玲の2倍くらいはありそうだ。

 あらためて三日月さんを見る。

 長い黒髪に整った顔。

 口紅はしていないがそれでも赤いくちびる。


「いや、うれしいですけど、僕には玲がいますので……」


「いいでしょう。玲ちゃんも許してくれるわよ」


「何で僕なんですか?」


「もともと顔が好みよ、可愛くて。それに私はエージェントとしていろいろな人間を見てきたけど、そんな力を持ちながらピュアな人間って見たことないの。玲ちゃんとくっつくのも時間がかかったわね。そんなところも可愛いわ」


 そういってまたキスしてくると、舌が入ってきて唾液が流し込まれる。


「玲ちゃんとくっつくまで私も我慢してたんだから。待たせた分気持ちよくしてね」


「なんで待ってたんですか?」


「玲ちゃんは妹みたいなものだからね。先に食べちゃうのはどうかと思ったのよ。それより、そろそろきたでしょ?」


 そして、僕の僕が元気になってきた。

 頭がぼーっとする一方で興奮を抑えられなくなってきている。


「【マスターエージェント】のスキルにはね、のよ。使うのは翔くんが初めてだけどね。さあ、ベッドへ行きましょう」


 もう一つのことしか考えられなくなっていた僕は、ベッドへ先に座った三日月さんを押し倒して服を剥いで……



◇◇◇



 翌日の朝。 

 ベッドのシーツには赤いシミがまた。


「三日月さん、初めてだったんですか?」


「そうよ。意外だった?」


「ええ、まあ。大人の女性ですから、いろいろと経験済みなのかと……」


「ふふっ、たまたまいい男に巡り会わなかっただけよ」


 ああ、それにしても玲になんて言えばいいのか…… 

 また中にたっぷり出しちゃったし……


「玲ちゃんのこと気にしてるの? 真面目ねえ。大丈夫、ここに来る前にちゃんと了解を得てるから。『一番は譲らない』と言われたけどね。あと、避妊魔法も玲ちゃんからかけてもらったし」


 おおう。

 何もかも読まれてる。



 そして朝一番でチェックアウトし、三日月さんといっしょにテレポートで家に戻ってくる。


 昨日あんなことがあったのに三日月さんの態度は変わっていなかった。

 玲の時はあからさまにくっつくようになってきたのに。

 やはり三日月さんはクールな大人の女性なのだろう。

 

 いっしょに登校する玲に昨日のことをおそるおそる話す。


「いつかそうなると思ってた。翔は魅力的だから。三日月さんも魅力的」



◆◆◆◆◆◆


【魔法陣師】 

 ユニークジョブで、先天的に発現する以外に就く方法はない。

 独自の魔法文字と円を描いて様々な効果を発揮する魔法陣を作成するジョブ。

 持続時間はこめた魔力と媒体による。

 校長は媒体に自身の血を用いており、毎年魔法陣に血を垂らしていた。

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