第12話another 

※この話の前半は第12話の別verです。後半は第12話と同じです。


(校内代表選で玲がシングル枠について棄権)


「ということは、先生、シングル枠は私と逆崎くんで争うのですね?」


 3Aの倉橋先輩が先生に聞いている。


「うむ、倉橋と逆崎の対戦だな。逆崎は辞退するとか言わないよな?」


「ええ」


「よかった、このまま何もせず代表ってのは面白くないからね」


「そうですね」


「去年も先輩方を押しのけて優勝したんだが、全国大会の初戦で敗れたんだ。今年は全国大会の優勝を目指す!」


 最後のほうは声が大きくなっていた。

 けっこう思い入れがあるようだ。


「キャー! 倉橋先輩! がんばってー!」


「そんな1年なんかに負けないでー!」


 え、倉橋先輩もモテキャラなの? 

 確かに顔はいいけどさ。

 優しいが芯の強い男の子って感じの。

 黒髪でややウェーブかかったイケメンだ。

 そして天は二物を与えているらしい。


 僕の鑑定スキルで彼を見てみると、昨年優勝も納得できる。


ーーーーーーーーーーーーーー

倉橋 達也 レベル571   

ジョブ【竜戦士】

ユニークスキル【竜撃剣】

ーーーーーーーーーーーーーー


 レベル高い。

 僕と会った時の玲よりもさらに高い。

 それにユニークジョブ【竜戦士】は特殊な戦士系の職業。

 ステータスにつき【バトルマスター】と同等の補正を受ける。

 一定の家系じゃないと発現しないから僕はどう頑張ってもこれにジョブチェンジできない。

 

 そしてユニークスキル【竜撃剣】は攻撃時に相手の体力、魔力を吸収する効果を付与するパッシブスキル。

 強い(確信)。


 つまり倉橋先輩の攻撃を受けたら魔力が減るわけで、そうなると僕は切り札の【リバース】を使えなくなるってわけだ。

 じゃあ先に【リバース】を使っておこうかな。



◇◇◇



「二人とも用意はいいか? はじめ!」


 僕と倉橋先輩が対峙する。

 向こうも僕と同じく剣を構えている。


 僕と先輩のどちらも動かない。

 が、先に動いたのは先輩だった。


「何か待っているようだね。その誘いに乗ろう。くらえ、剣の舞!」


 先輩がこちらに駆け出して連続する剣戟を放つ。

 【竜撃剣】の性能を考えたら複数回攻撃が一番効率的ということなんだろう。

 僕はひたすら攻撃を受け続ける。



「はあ、はあ、何でこんなに疲れるんだ……?」


 やがて倉橋先輩が肩で息をするほど消耗してきた。


 それは、【リバース】で【竜撃剣】の効果を反転したから。

 攻撃時に効果を付与する、になっていた。

 つまり、攻撃すればするほど自分の体力と魔力を相手に分け与えることになるのだ。


 絶対に先輩に勝ち目はない。

 このまま自滅を待ってもいいんだけど、それはあんまりだからこちらから攻撃して終わらせよう。


「十字斬!」


 十字の剣戟が先輩にヒットし、護符が赤く光り輝いた。


「そこまで、勝者、逆崎!」


「おいおい、マジかよ! 高校最強の倉橋が負けたぜ!」


「そんな~、倉橋先輩が~」


「二人ともリア充だからな、爆ぜろ!」


 ちょいちょい暴言が混ざる生徒のセリフは置いといて、これで僕がシングル出場だ。


「まさか僕が負けるなんて……。こんなはずは! って言ってもしょうがないか。全国大会での優勝を託すよ」


「できるだけ頑張ってみます」



 このあと夜になってからこっそりもう一回【リバース】を使って【竜撃剣】の効果をもとに戻しておいた。

 じゃないと今後のチーム戦で支障でまくりだからね。



◇◇◇



 というわけで、僕はシングル枠での出場、僕と玲と倉橋先輩でのチーム出場が決定した。


 そしてその二日後。



「翔、代表戦を見て考えていたことがある」


「なに?」


「鑑定で【リバース】のスキルをあらためて見てみた。対象を反転する。消費魔力100%」


「そうだね」


「対象は、単体、全体、範囲、一部、などの柔軟性を持って指定できる。現に私の【氷神の呪詛】のうち顔を醜くするという部分に限定して反転できた。だから……」


「だから?」


100という部分のみ反転すればいいと思う。倉橋先輩の【竜撃剣】みたいな魔力にダメージを与える攻撃がこの先あるかもしれない」


「なるほど、やってみようか」


(【リバース】発動! 【リバース】の消費魔力100%を反転する!)


「どう、玲?」


「ん、見てみる。……【リバース】、対象の効果を反転する。消費魔力0%。成功した」


 おお……。これでいつでも【リバース】発動できるじゃん。8時間のクールタイムの問題も解決だ。


 さらに閃いた!


「玲、魔力を使い切ったあと魔力量を【リバース】したら魔力を全快させられるよね!」


「そうね、翔。スキルや魔法を使い放題になる。翔は間違いなく世界最強。そして私はその恋人」


 うん、そうだね。最後のはちょっと恥ずかしいけど……。


 これでやってみたかったことをガンガンできるぞ。

 

 あ、その前に玲のお父さんにも一応報告しなきゃね。



「御堂さん、二子玉高校探索科の校内代表になりました。僕はシングルで、僕と玲さんはチームです。それと、【リバース】の消費魔力に【リバース】を使って消費魔力がなくなりました」


「とんでもないな…… これはますます誘惑に耐えねばならなくなるなあ、美城」


「さようでございますな」


「? どういうことですか?」


「いや、何でもない……」


「あの、ところで、お二人とも神々のポーチはいりませんか?」


「ん、それはなんだ?」


 あ、そういやまだ教えてなかった。


「えと、50階のゴブリンキングのレアでマジックポーチ(極小)を手に入れます。んで、マジックポーチ(極小)のランクを反転したら、ランクSSの神々のポーチになります」


「倒す前にドロップ率を反転させる」


 玲が補足をしてくれた。


「神々のポーチは収納量ほぼ無限、中の物の時間は止まったままで登録した者だけが使える仕様になっています」


「ほほう、ランクSSか。露支那以外ではそのランクのアイテムは出たことがないな。ドロップ率を反転させてレアをゲットする。貴重なものほどドロップ率が低いのに翔くんにとってはいとも簡単に手に入る。なら言葉に甘えて一つ用意してほしい。無論報酬はあるぞ。一億円出そう」


◆◆◆◆◆◆


 当初考えていたVS倉橋先輩への勝利方法だったんですが、あんまりにも容赦なさすぎかな、と思ったので本編のようにしました。

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