第24話 全国大会が始まりました。もちろん楽勝です。決勝の相手は超レアジョブ持ちでした。

 御堂さんの書斎にて。


「ときに翔くん、全国旅行をしてみたくはないかね?」


「えーと、してみたいですけれど、何をするんですか?」


「うむ、現役探索者全体の強さを引き上げたいと思ってな。先日【ランクアイ】のユニークスキルを失わせただろう。それの逆をやってほしいのだ。そのため、全国各地で『トップ探索者によるユニークスキルなしでのダンジョン攻略指南』と銘打った講義を開く。そこに集まった者たちのユニークスキルを覚醒させてほしいのだ」


「なるほど」


「今講義をしてくれる探索者と交渉中だ。これがうまくいけば探索者は目立たず確実に強くなるだろうな。将来的には強力な装備やアイテムを安価に流通させることも考えているが、まだ先のことだ」



◇◇◇



 御堂さんの探索者強化計画の準備を待っているうちに7月末から夏休み。

 さらに8月になり、いよいよ全国高校探索科総合大会の時期が来た。


 場所は東京ドーム。

 僕と玲と倉橋先輩で出場する。

 他の生徒は希望すれば抽選で観戦できる。

 ネットでも同時配信するけど。


 対戦形式はシングルもチームもトーナメント、チーム戦は3VS3となる。

 シングルを先に行い、終わったらチーム戦となる。


 ダメージを請負う魔道具と身代わりの護符のセットで、身代わりの護符が赤く光れば場外にはじき出される。

 校内代表選、地方大会と同じだ。

 というか、全国大会を真似ている、というのが正しいかな。


 去年二子玉高校は一回戦負けだったか。


 抽選の結果、第1回戦の相手は北海道の苫小牧高校探索科。



「サカザキく~ん、頑張って~」


 観客席にはフランさんがいる。

 目立つ金髪美少女に他の男の目が釘付けだが特に意に介していない。


『二子玉高校1年逆崎翔、苫小牧高校3年青山敦あおやま あつし、いざ尋常に勝負!』


 相手は素手だ。

 僕は大会から支給される模擬戦用の剣。

 当然だが公平を期するため武器や防具は全て大会支給となっている。


 何はともかく鑑定だ。

 えーとジョブは【中級魔法使い】、ユニークスキル【糸使い】。


「何をぼーっとしてやがる! 試合は始まってるんだぜ! 『マジカルストリングス』!」


 別にボケてたわけじゃないけど、せっかちだな。

 僕が鑑定で見ていた時間なんてわずかだろうに。

 

 でも相手の先制攻撃を受けたのは間違いない。

 腕と胴体、足に見えない何かが巻き付いてきた。

 よくよく目を凝らすと少し輝いてる。

 どうも魔力でできているようだ。


「え、糸なんて武器反則じゃないのか?」


「自分のスキルで発現できるものは反則じゃないぜ。そして俺の糸は俺の魔力で出来ている。教えてやろうか、魔法スキルってのはな、相手と距離が離れるほど威力が減衰するんだ。だがな、俺の魔法の糸を通せば威力は減衰しない。わかるか、100%の魔法攻撃を受けろ! 『雷撃の祭典! ライトニングカーニバル!』」


 魔法の糸を伝って乱舞する幾筋もの雷が襲いかかってくる。

 さすが全国大会だけあってまあまあの威力だ。

 ということはこのあたりの威力を参考にすればいいな。


「な、効いてない!?」


「ちょっとだけ刺激があったからマッサージにいいかも」


 そして僕は魔法の糸を引きちぎる。

 さらに同威力程度の魔法を放つ。


「ブレイズランス!」


「くっ、スパイダーネット!!」


 青山が前方に蜘蛛の巣状に魔法の糸を張り巡らせて防御する。

 が、僕が放った炎の槍は魔法の糸を突き破り青山にヒットして爆発。

 そのまま場外送り。


『勝者、逆崎!』


 そして勝者のコールがされる。

 うーん、あれでも一撃か。

 でもこれ以上は威力を下げられない。


 控室に帰ってくると玲と倉橋先輩がいて、あとからフランさんや他何人かが入ってきた。


「お疲れ様、翔」


 玲が笑顔で労わってくれる。

 癒されるな。


「翔、あれは何だったんだ? 雷の乱舞が真っ直ぐお前に向かっていたんだが」


 倉橋先輩が聞いてくる。


「開始直後に魔法の糸が僕に絡みついてて、それを伝って雷がきていたせいです」


「魔法の糸だって? そんなもの見えなかったぞ。御堂は見えたのか?」


「見えた。魔法を通しやすくするための無属性の糸だからちょっと見えにくかったと思う」


「マジかよ。こりゃ俺だったら今年のシングルも初戦敗退だったな」


 先輩は苦笑していた。


「サカザキくんが負けるはずありませんわ。絶対に。最初からわかっていましたから」


 と笑顔でフランさんが僕を持ち上げてくる。

 どこでそんな確信を持ったんだろう。


「そんなの当然」


 玲が張り合ってくる。

 うう、こんなところまで変な対抗意識もたなくていいのに。

 心配しなくても僕と玲はそういう関係なんだから。

 


◇◇◇



 苫小牧高校の青山に勝った後、明徳義塾高校や天理高校、京都学園のシングル代表と対戦し、危なげなく勝って決勝戦に進出した。


 相手と戦うときは、必ず先制させていた。

 何でかっていうと、この全国大会には探索者スカウトが来ているからだ。

 僕が相手に何もさせずに終わらせると、彼らのアピールの場がなくなるだろうと思うから。

 僕は別にこだわりはないし。



 決勝戦の相手は、渋谷高校の1年、天光勇人てんこうゆうとだ。

 超高校級の一年と言われている。

 まあそうでなくてもこの10年くらい渋谷高校の校長が変わってからシングル、チームともに渋谷高校が連続で優勝しているので、優秀な人材が毎年集まっているってことなんだろう。


 控室を出る直前、


「翔、気を付けてね」


「どうせ勝つんだろうが、油断するなよ」


「サカザキくんなら大丈夫。世界一なんだから……」


 三者三様のお言葉をいただき、いざ決戦のバトルフィールドへ。



◇◇◇



「きみ、鑑定を使えるかい?」


 勇人が話しかけてくる。

 いきなり何なんだ。

 情報を与えるわけないだろ。

 こちらからは遠慮なく見るけど。 


「…………」


「見れるなら見てもいいけど、やる気をなくさないでほしいな。1年なのにここまで来れるってことは君も相当強いんだろうけど」


 お望み通り見てやろうじゃないか。



ーーーーーーーーーーーーーー

天光 勇人 レベル1024

ジョブ【勇者】

ユニークスキル【聖剣化】

ーーーーーーーーーーーーーー

※オールステータスアップ中



 きたよ、【勇者】。

 早速【神眼を持つ者】にジョブチェンジしてジョブを詳細鑑定する。

 物理攻撃スキル、魔法攻撃スキル、回復スキル、補助系スキルを修得できる。

 相手が強いほど自身の能力上昇(最大10倍)。

 ジョブ取得条件は先天的に持っているか、他のジョブを20個極めること。

 うわあ、無理じゃんそんなの。


 ユニークスキル【聖剣化】は、所持する武器を聖剣の性能に引き上げるもの。

 今のレベルだと聖剣ファーウェル(Sランク)相当となる。

 ただの模擬剣が聖剣に…… 

 恐ろしいスキル。


 これは確かに超高校級っすわ。



 と一通り確認させてもらったので【無職】にジョブチェンジしてレベルを【リバース】。

 まだ気になることがあるけど今だとわからないのでとりあえず戦ってみよう。


『渋谷高校1年天光勇人対、二子玉高校1年逆崎翔、いざ尋常に勝負!』



 バトル開始のアナウンスが流れる。


 ちょっとこっちから仕掛けてみようか。

 どうせ一撃では倒れないだろうし。



◆◆◆◆◆◆


【神眼を持つ者】 

 レアジョブの鑑定士系の最上位ジョブ。

 マスター特典は魔力消費なしで鑑定スキルを行使可能とし、他者からの鑑定を無効にできる。


 週間ランキング50位以内に入りました!

 みなさまの応援ありがとうございます!

 (2022.12.29)

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