第20話 暗殺者を返り討ちにして捕まえました。そして衝撃的な情報が……
一樹くんを安全なところに飛ばして闇の檻を破壊して、犯人と対峙するが……。
やはり姿は見えない。
不意に後ろから何かが飛んでくる。
さっと躱すと躱した先でも後ろから何かが飛んできた。
カランカランと、黒く塗られたナイフが地面に落ちる。
鑑定すると『マーダーナイフ』と出た。
猛毒、麻痺効果つきの殺意マシマシのAランク武器。
さらにどんどんマーダーナイフが投げられてくる。
どう避けても必ず後ろから。
しばらくしてナイフと同時に足元に衝撃が来る。
短刀が僕の踵に斬りつけられ止まっている。
チャンス!
短刀を握った黒い手袋が見えた!
すぐにしゃがんで短刀を握っている手を掴み思いっきり上に引っ張り上げると、黒づくめの男が地面から引きずり出される。
引っ張り上げて即そのまま地面に叩きつける。
これで黒装束の男が動かなくなった。
まだ殺してはない。
てか顔も炭かなにか塗ってるようで真っ黒だ。
徹底してるな。
サイコバインドで拘束しておき、マナウェポンで攻撃して魔力を空っぽにしておく。
そして人物鑑定をするとレベル500と出た。
232階に来れるのにそれはないだろうと思って手袋を外すと偽装の指輪があったので、外してもう一度鑑定。
ーーーーーーーーーーーーーー
影 気輪 レベル2955
ジョブ【シャドウルーラー】
ユニークスキル【敏捷強化】
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強い。
てかレベル高いよ。
名前からすると露支那帝国の旧中国出身者っぽいな。
【シャドウルーラー】は影を操る一族だけが得られるもので、しかも暗殺とか諜報とか裏稼業を20年経験して初めてなれるジョブらしい。
影の中からひたすら僕にナイフを投げ続けたのは、このジョブで使える『影潜り』というスキルのせいだ。
相手に姿を見せることなく攻撃できる反則スキルじゃん。
さすがに直接攻撃をするには影から少しでも出ないといけなかったから、そこを僕に押さえられたけど。
「キュアディジーズ!」
念のため状態異常回復魔法をかけとく。
漫画や小説だと正体がバレたら歯に仕込んだ毒で自害とかあるからね。
さて、光の鎖でぐるぐる巻きにしたけど、どうしようかな?
◇◇◇
side 暗殺者
「うう、ここは……」
「目覚めたか? ここは尋問部屋だ」
縄で縛られて椅子に座らされている。
尋問部屋と言っていたが、普通の日本の部屋のようだ。
スマホが目の前に置かれている。
あらためて見回すと、精悍な男が一人、初老の執事が一人、それと若い男女が一人ずつ。
若い男は
「さて、お前は何者でなぜ翔くんを狙ったのか、聞かせてもらおうか、影 気輪よ」
精悍な男が聞いてくる。
本名がバレている。
偽装の指輪の感触がない。
とっさに歯にしこんだ毒を煽るが、何もなかった。
それに魔力が空だ。
一向に回復する気配がない。
しかし、これでもこういう稼業だ。
拷問に耐える訓練もしている。
みたところ素人だろう。
拷問の加減を間違えて俺を殺してくれればいいが。
「………………」
「もう一度聞こう、お前は何者で、なぜ翔くんを狙ったのかな?」
「私は露支那帝国の探索者兼暗殺部隊の者だ。WEA(世界探索者協会)から情報提供があった。WEAは世界の探索者の裏ランキングを作成し、3か月に一度更新している。今度の更新でショウ=サカザキがトップとなり日本の攻略階層がありえないほどに更新されていることがわかった。それゆえ帝国から暗殺指令が下った」
「裏ランキングというのは何かね?」
「WEAに探索者の情報を網羅するユニークスキル持ちがいると聞いている。詳細は知らされていない。ただ、情報が膨大すぎるので、ランク付けと攻略階層のみの羅列にするのが精いっぱいらしい」
「他にも暗殺対象はいるか?」
「裏ランキング2位にいる日本人のレイ=ミドウもだ。ショウ=サカザキのあとに私が始末する予定だった」
「なんと…… 帝国はこれを繰り返してきたのか?」
「そうだ。特に日本人は念入りに間引いてきた。帝国の上層部は日本人の潜在能力の高さに恐れを抱いている。第二次世界大戦で大国を敵に回し最後まで苦戦させた底力は侮れないと。戦後政策により牙を抜いたはずがダンジョンをきっかけにまた国力を取り戻されてはかなわぬ。実際探索専門の教育をいち早く整えたのも日本だ。それゆえ、他の国よりも率先して暗殺してきた」
「やはりか……」
「ひどい……」
「アメリカやEUに対しては?」
「日本よりもガードが固いため、300階層の攻略を許してしまっているが、各国にスパイを送り手引きをさせてダンジョン内で始末することが多い。日本は甘いぞ、違法に入国した者をわざわざ生け捕りにして送り返してくれるのだからな。アメリカやEUならその場で処刑だ。だから232階層で止まっているのだよ、つくづく愚かな国だ。旧中国人の女に日本の要人を篭絡させたり、金を持たせず入国させて生活保護の人間を量産させたり、出産育児金をだまし取るなどの医療ツアーも大繁盛、やりたい放題だ」
「…………、JEAに貴様らの息のかかった者はいるか?」
「ああ、二人いるな。確かサルワタリとかいうのと、あとムラタとかいうやつだな。よくやってくれているよ。国会議員と連携して外国人の人権は大切に、なんて世論を煽るからな。日本の教育は充実しているのに自国民を守るという発想がないんだから、『仏を作って魂入れず』というやつか?」
「暗殺部隊の規模はどれくらいだ?」
「俺がいるのは対外用だな。高レベル精鋭のみだから100人程度だ。他はよく知らねえが、国内用や発展途上国用の人員ならかなりいるはずだが実情は俺みたいな末端には知らされていねえ」
「そうか。他に言うことはあるか?」
「俺が本国に戻らないと、他の暗殺者が来るだろうな。シャドウルーラーのジョブ持ちも私の一族にあと何人かはいる。それとサカザキで思い出した。俺の同僚が十数年前に日本人のサカザキ夫婦を殺したな。確か二人で協力すると強力になるユニークスキルを持っていて、裏ランキングを作成しているスキル持ちがたまたま発見したせいでな。まったく運の悪いことだ」
「!! こいつらが!」
俺は
椅子ごと倒れてしまった。
何やら言い合っている。
しばらくして
そして俺の意識は永遠に覚めることがなかった……
◇◇◇
僕と一樹くんを襲った犯人を捕まえたので、とりあえず御堂さんに相談したら、その犯人に聞きたいことがあるという。
当然他の人に聞かれるわけにいかないので、時空魔法で生成した異空間に犯人をとじこめ、そこで尋問することにした。
異空間には僕のほか、玲、御堂さん、美城さんを招いて、異空間の模様は普通の部屋っぽくしてみた。
そこで、御堂さんが暗殺者を問いただす。
日本語でしゃべってくれるとは限らないので翻訳アプリを入れたスマホを置いておき、同時に録音もする。
当然答えるはずがないので、【リバース】で本音と建前を反転すると、面白いほど口をきいた。
外見に似合わずお喋りな質なのかもしれない。
ペラペラしゃべる内容に僕と玲はドン引きしていた。
日本でこれなんだから弱小国はどんな扱いを受けているのか。
そして尋問の最後、衝撃の事実を聞かされる。
僕の両親がこいつの属する部隊に殺されていたというのだ。
強力なスキルを持っていたというだけで。
気が付けばこいつを殴り飛ばしていた。
「翔くん、君にはこいつを殺す権利があると思う。だが、その役目は私に任せてくれないかね。君に人を殺すという業を背負わせるのはまだ早すぎる。ここは大人の役目だ」
御堂さんが僕を止めた。
◆◆◆◆◆◆
【忍者マスター】
盗賊系の最上位ジョブ。
マスター特典は敏捷性の大幅な上昇とトラップ完全回避。
週間ランキングが地味に上昇しています!
応援ありがとうございます😊
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