第19話 中二っぽくて強いスキルを手に入れました。なんか友達といっしょに暗殺者っぽいのに襲われたけどもちろん返り討ちにしたいと思います。

 ベヒーモスリーダーを倒して手に入れたジョブの書を【リバース】して手に入れたレアジョブの書を使ってみたところ……


「増えたのは、【時空の守り人】というジョブです」


「ほう?」


「えと、ちょっと待ってくださいね。……いま【リバース】してみましたが最上位ジョブは【時の賢者】です。知ってる場所への瞬間移動、空間移動できるゲートの作成、相手の時を止める、空間ごと相手を切断する、隕石を召喚するなどのスキルが使えるみたいです」


「もしかして時を止めてロードローラーを召喚できたりしないか?」


「なんですか、それ? 特にそんなスキルはないようですが……」


「いや、大昔の漫画にそういうのがあるんだよ。忘れてくれ。マスター特典は何かね?」


「マスター特典は、テレパシーが使えることです」


(こんな感じです。御堂さん、美城さん、わかりますか?)


(翔くん、わかるぞ。でも頭の中に直接情報が入ってくるようで気持ち悪いな)


(逆崎様、私にも伝わっておりますぞ)


「でも電話があるからあんまりいらないかもですね。スマホやタブレットを忘れた場合には意味があるかもしれませんが……」


「そうだな。まあないよりマシ、といったところか」



 あとでもう一つジョブの書を手に入れたので、レアジョブの書に変えて玲に使ってもらったところ得られたのは【バーサーカー】だった。

 アクティブなスキルが使えない代わりに物理攻撃と物理防御が2倍になる脳筋ジョブだ。


 すぐに最上位に【リバース】すると【神前闘士】になった。

 マスター特典は保有するスキル数に応じて全ステータス上昇。



◇◇◇



side 露支那帝国


 旧中国と旧ロシアが対アメリカを基軸として合併した露支那帝国。

 公表されている組織である人民保護委員会は、帝国内部の治安維持を目的としている。

 だが、そこには密かに対外活動を行う組織もある。


 それは暗蠍部あんかつぶと名付けられている。


 そして暗蠍部に四半期に一度の報告が届いていた。



「やっときたか。まったく、WEA(世界探索者協会)のあの下等民の仕事は遅いものだ。……ん、バカな、こんなことが……!」


「部長、どうされました?」


 あまり物事に動じない暗蠍部のトップが珍しく動揺している。

 ただ、その動揺もすぐには収まるが。


「これを見ろ。ショウ=サカザキ、レイ=ミドウなる者が裏世界ランキング一位、二位であるという報告が上がってきている」


 報告書を渡された補佐官も目を通す。


「所属国はJPN。到達階数は400。まさかこんなことが。以前の報告にこのような者はいなかった。たった3ヶ月のうちに日本の最高到達階数を更新し、かつ我々よりもレベルが高いというのか?」


「おそらくな。これは由々しき事態。世界のトップは我が国でなければならぬ。断じて日本などではない。皇帝陛下は斯様な事態をお許しにはならない。速やかにこの者を排除せねばならぬ」


「では、暗殺部隊を?」


「ああ、『影』を使う」


「確実に仕留める、ですな。かの一族であれば相手がどれだけレベルが高かろうと問題ありませんな」


「失敗は許されぬからな。皇帝陛下はプライドが高く容赦のないお方だ。我らとて役立たずと思われれば切り捨てられるだろうな」


「さようでございますな。出る杭は打たれる。日本政府にあらためてわからせなければなりません」


 翔たちに魔の手が伸びようとしていた(ただし届かない)。



◇◇◇



 梅雨もあけて7月。


 月初めに期末テストが始まり、3日かけて行われた。

 一般科目と探索実技があるが、僕と玲は実力が明らかなので探索実技が免除、一般科目だけでいい。

 


 無事何事もなく期末テストが終わった日。


「翔、お願いがあるんだけどさ、放課後いっしょにダンジョンに潜ってくれない? ちょっと小遣い稼ぎしたいんだ」


「いいよ、一樹。じゃあ玲、先に帰っててくれる?」


「うん」


「ごめんね、御堂さん、翔を借りるから」



 というわけで二人でダンジョンの20階へ。

 ここにはプチゴールデンスライムがいて、その魔石はDランクなのに高く売れるのだ。

 滅多にでないけど。


「んー、やっぱり見つからないねー」


 一樹がぼやく。


「そうだよ、そんなに簡単に見つかったらみんなすぐ金持ちだよ」


 まあ、レアモンスターの出現率を反転すれば多分出てくるんだろうけど、さすがにちょっとスキルを使うのはちょっとね。

 リアルラックに期待だ。


 適当にわいてくるモンスターを処理しながらあてもなく歩き回る。

 あたりには同じようにプチゴールデンスライム目当てなのか他の高校の制服もちらちら見える。


 僕もあたりに目を凝らしながらプチゴールデンスライムがいないか探す。


「なあ一樹、何で金がいるんだ?」


 そういや理由を聞いてなかった。

 聞いてみたけど返事が返ってこない。

 言えないようなことなのかな?


「聞いてるの、一樹。何で金がいるの?」


 そう言って振り返ると、一樹がいなかった。

 背中合わせでプチゴールデンスライムを探していたはずなのに。

 代わりに足元に紙が落ちていた。


『232階に来い』



◇◇◇



 攫われた、としか思えない。

 転移石が発動した様子もなかったし、あんな高額なもの一樹くんが持ってるはずがない。

 時空魔法のテレポートで232階に転移した。

 232階は日本ダンジョンの公式最高到達階層だ。


 そんなところへ来れるのは日本の探索者のごく一部か、他国の高ランク探索者。

 ただし、基本的に外国の探索者は特別な許可がない限りダンジョンへの立ち入りを禁止されている。


 ダンジョンのモンスターから得られる魔石は現代社会に欠かせないエネルギー源なので、勝手に持ち出されては困るからだ。

 これはどこの国も同じだ。


 でも日本の場合は、違法探索者を極力生け捕りにして本国に返している。

 日本が国際的に舐められる原因の一つと言われているが、政府は方針を改めようとしていない。

 


 しばらく一樹くんを探していると、不自然にモンスターがいなくなり、壁に一樹くんがはりつけにされているのが見えた。

 見た目外傷はなさそうだ。


 一樹にゆっくりと近付くと、突然地面から黒い檻が生えてきて僕を取り囲む。

 そして檻から一斉に黒い棘が生えてきて僕を串刺しにしようとする。

 

 当然僕には効かず、体の表面で棘が止まる。

 これは何かな? 

 絶賛【無職】の僕には【忍者マスター】のマスター特典である完全トラップ回避があるから、これはダンジョンのトラップじゃない。


 スキル鑑定を行使してみてみると、『シャドウプリズン』との結果が。

 トラップじゃなくて誰かのスキルか。

 にしてもスキルを行使した本人の姿が見えない。


「フラッシュフラッド!」


 僕を中心とした光魔法の波を放って、シャドウプリズンを破壊する。


「トランスポート! 一樹くんを僕の部屋へ!」


(玲! 僕の部屋に一樹くんを飛ばした! ちょっと様子をみてあげて!)


 そういって玲へのテレパシーを一方的に切る。

 時空魔法で一樹くんをこの場から飛ばしたから多分安全だ。


 さて、これでようやく犯人と向き合える。


◆◆◆◆◆◆


【スペルカイザー】 

 魔法使い系、ヒーラー系ジョブの両方に精通した者がなれるジョブの最上位。

 マスター特典は魔力の常時回復。

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