第15話 僕をトラップにはめた奴らに思わぬところでリベンジ。地方大会で無双できるかと思いきや……。

 ダンジョンの代表的なザコモンスターであるスライムは通常ドロップはないが、稀に『下級ポーション』を落とす。


 ダンジョンの一階を駆け回って、出会うスライムに【リバース】をかけてレアドロップ率を反転。 

 下級ポーションを集めまくって神々のポーチに入れ、あとでまとめてランクをリバースして『エリクサー』を大量生産。

 これで死ななければ何とでもなる。

 しなやすだ。



 それと、途中からはめんどくさくなったので、【リバース】の対象を『今このフロアにいるスライムのレアドロップ率』として、ひたすらスライムを倒すことに集中することにした。


 このときたまたまスライムを倒した探索者にもこの効果が発揮されたので、ちょっとした幸運だったろうな。


 なお、スライムの魔石は一個500円。

 それでも数多く二子玉支部に売るから高校生には持て余す金額になる。

 ビームスかポールスミスで服でも買おうかな。

 コスパ悪いんだけど格好いい、気がするんだよね。



 玲のダン警がない日は、いっしょにダンジョン攻略の続きをしていた。

 今は特に急ぎもないから51階から出会った魔物の行動パターンを見ながら、じっくりと進んでいく。



◇◇◇



 たまたま、一人でダンジョンに潜ることになったとき、それは起きた。


 前日の続きで73階をゆっくりと進んでいた時、ブロンズウルフを蹴り殺したあとレアドロップの『スキルの書』が落ちた。

 今回は【リバース】を使っていないからリアルラックだ。


 スキルの書をしゃがんで拾うと、背中を軽い衝撃が襲う。

 後ろを振り返ると紫のナイフを手にした男が後ずさるところだった。


「毒牙のナイフが弾かれた!」


「! お前、あの時死んだはずじゃ……?」


 後ろには合わせて4人組の男がいた。

 あいにく僕はこの人たちを知らない。


「誰ですか? 僕はあなたたちなんて知りませんが……」


「まあどうでもいいか。ここで殺せばいい話だ。レベル15だったはずだしな」


 おかしい。

 僕の以前のレベルまで知っているなんて。

 僕はリーダーに【リバース】を使って本音と建前を反転する。


「答えてください。何で僕のこと知ってるんですか?」


「お前を荷物持ちで雇ってたんだよ。ダン警に会っちまったから人質にして転移トラップに放り込んだから死んだと思っていたんだがな」

(はあ、教えるかよボケが! そのまま死ね!)


 ということはこいつら三崎たちか。

 でも顔が全然違う。

 なら、『人物鑑定』のスキルで見てみるか。


ーーーーーーーーーーーーーー

三崎 健斗 レベル221

ジョブ【盗賊チーフ】

ユニークスキル【変装】

ーーーーーーーーーーーーーー


 ユニークスキル【変装】は、週一回変装することができるスキル。

 最大5人まで変装させることが可能。


 なんか地味なユニークスキルだな。

 でも整形いらずだ。

 さて、これをリバースしたらどうなるかな?


(【リバース】発動! ユニークスキル【変装】の変装可能人数を反転する!)



 で、あらためて三橋のユニークスキルを鑑定してみてみると、


『週一回変装することができるスキル。最大まで変装させることが可能』


となっていた。

 もうこれで実質ユニークスキルは使えない。

 これで変装して逃げ回ることもできないだろう。

 あとは捕まえて支部に突き出すだけだ。


「お前たち、殺れ! 『スキルの書』を奪い取れ!」


「サイコバインド!」


 僕は光属性の魔法を使って光の鎖で4人を縛り上げる。


「な、お前魔法が使えたのか!?」


「あんたらのおかげで」


 三崎が驚愕の声をあげるが、知ったこっちゃない。

 僕はそのままサイコバインドを維持して73階の奥まで行きクリスタルで脱出。

 そのまま4人をJEA二子玉支部に突き出した。



「ありがとう、逆崎くん。なかなかこいつらを捕まえられなくてな。御堂くんが襲われたと聞いて全力でこいつらを狩りに行ってたんだが、一般人に先を越されるとは」


 僕に対応してくれたのはダン警のちょっと偉い人。

 玲の上司に当たる人のようだ。


「我々ダン警は仲間意識が強くてな。仲間に何かあったら全力でそいつを潰しに行くんだ。玲がボロボロになって帰ってきた直後に奴らを捜索したんだが見つけられず悔しい思いをしていた。もう少し見つからなければ本部にも人員を要請しようかと思っていたところだ」


「役に立てて何よりです。僕も奴らには殺されそうになりましたので」


「そうだったな。ところでダン警に入らないか? 君なら歓迎するぞ」


「うーん、遠慮しておきます。ガラじゃないので」


「そうか。気が向いたらいつでも訪ねてきてくれ」



 これで三崎たちへの復讐はできた。

 特に三崎はユニークスキルはもう使えないも同然だからな。

 あとの3人はユニークスキルもなくジョブも普通だったのでほっといた。


 あ、あとスキルの書は300万円で売り払いました。

 だってスキルの書で得られるのはわりと初級から中級のものだから、僕には必要ないんだ。

 誰かが有効活用すればいいと思う。




◇◇◇




 探索科の神奈川地方大会。


 会場は横浜アリーナで、参加高校は150。

 何でこんなデカい会場なのかというと、神奈川地方大会はトーナメントとかせずに、全員でバトルロイヤルを行うからだ。


 それは、ダンジョンフロアで稀に起きるスタンピードを想定してのこと。

 要は大量の敵を前にどう生き延びるか、というもの。

 とはいえ、スタンピードが起きたら1000匹単位だから、大会の規模はプチスタンピード的な感じだろう。



 まずはシングル枠から。

 全員身代わりの護符を持っていて、致命傷となるダメージまで蓄積すれば赤く光り場外に転移させられる仕様だ。



 アリーナに150人が距離を取って配置される。

 そして、会場よりアナウンスがバトルロイヤルの開始を宣言する。


『それでは諸君、闘い、生き残りたまえ。バトルロイヤルを開始する』


 弱そうな者を見定める者。

 逃げに徹する者。

 自身の最強スキルをブッ放そうとする者。

 知り合いで暫定のチームを組む者。


 そして僕は……


(【リバース】発動! 僕以外の者の身代わりの護符の耐久度を反転する!)



 その瞬間、みんな場外へ転移させられた。


「え、なんで?」


「まだ何もしてないぞ!」


「魔道具の故障か?」



 やりすぎたかな? 

 多分理解できるのは玲だけだろうけど、自粛中だからいない。

 つまんないな。


 そしてフィールドに残ったのは僕だけ……、ではなく僕の近くにもう1人だけ残っていた。


「これはいったい…… おい、おまえ何かしただろ!」


 僕以外に残った1人が僕を警戒しつつ聞いてくる。

 が、僕は僕でなんでこいつが残っているのか分からず困っていた。

 もしかして【リバース】に限界人数があるのか?



 フィールドの隅っこでは審判が集まって何やら話しあってる。



 この隙に僕はこいつを鑑定してみる。



ーーーーーーーーーーーーーー

勝間 斎人かつま さいと レベル 497

ジョブ【中級戦士】

ユニークスキル【ラッキーヘブン】

ーーーーーーーーーーーーーー



 ユニークスキル【ラッキーヘブン】、高確率で自分に対する相手のスキル効果を不発にする。

 なお、回復やバフはそのまま受け付ける。


 うわお。

 これか。

 【リバース】に何か欠陥があるわけじゃなくてよかった。



『いったん選手は控え室に戻ってください』


 会場にアナウンスが流れる。



 僕も控室に戻り、倉橋先輩と待機する。

 運営委員会の人がきて生き残った僕に聞き取りをするが、『わかりません、何もしてません』と惚けておいた。


「逆崎くん、なんだったんだろうね?」


 先輩、僕のせいです。

 言わないけど。





『選手の皆様、お待たせしています。調査の結果、スキルの痕跡が見られませんでした。不具合のある護符を配布してしまった可能性が高いと判断されます。新しい護符を配布しますので、装備の上フィールドに集まってください』



◆◆◆◆◆◆


【聖騎士】 

 騎士系の最上位ジョブ。

 マスター特典は物理防御、魔法防御の大幅な上昇と状態異常を非常に高確率で防御。

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