第14話 玲をいじめたやつは最終的に周りをまきこんで自滅。そのあと僕たちはさらに最強の道を進む。

「木下さん、玲に様々な嫌がらせをしたうえに玲の私物を盗みましたね」


 僕は木下に問いかける。

 当然知らないって言うに決まってるけど……


「ええ、そうよ。私と仲間でやったのよ!」

(そんなこと知らないわよ、私!)


「そうなのか、木下?」


 矢部先生が聞き返す。


「だから、私がメインでやったって言ってるでしょ!」

(だから、私たちは何も知らないんだってば!)



 よしよし、上手くいった。


 僕は木下に【リバース】を使い、木下のさせたのだ。


 つまり、嘘を言おうとすればするほど本音がボロボロとこぼれてくるようにさせた。

 木下はパニックだろうな。

 しかし取り繕おうとすればするほど本音が出てくるという。

 我ながらえげつないスキルだと思う。


「木下さん、なんで嫌がらせをしたんですか?」


「あいつ、顔がよくなったからって男に告白されまくったのに袖にして。しかも付き合ってるのが冴えないこの逆崎ときた! おかげで私への告白もほとんどなくなったわよ! しかも代表戦で愛しの倉橋先輩ともチームを組むなんて許せないのよ、ブスだったくせに! あれがいなければ私がクラス1番にモテていたのに!」


(え、いや別にそんなことしていないわよ。どこに証拠があるのかしら。証拠もなく犯罪者扱いしないでよ! だいたい私は凍らされた被害者なのよ。あの女をもっと問い詰めなさいよ)



 んー、出てくる出てくる。

 さりげなく僕がディスられてるんだけど。


「で、木下さん、玲の私物はどこに隠したの?」


「私の部屋よ。私の仲間のところにもいくつか置いてあるわ。高そうなマジックポーチもあったわね。いい気味だわ」

(だからっ! そんなことしていないわよ)


「ほとんど怪我をしてないのに傷害罪で告訴したのは?」


「御堂ってJEAの理事で金持ちでしょ? 玲を前科者にしたくなければ、と脅せばいいのよ。示談金くらいポンっと出すでしょ、ってお母さまが言ってたわ。氷魔法を使ってくれてよかったわ。原因は私だけどね!」

(私の足を凍らせたのだから当然でしょ! 私は被害者なんだから!)



「先生、これでいいですかね。玲の処分も軽くしてくださいよ」


「そうだな、逆崎。木下、全て録音しているからな。まあ他の先生方も聞いているからもはや言い逃れはできないが。お前の言ったことが本当なら立派な窃盗と恐喝だからな」


「確かに私のしたことは犯罪ですね、先生」

(だから、私何もしてないってばー!)



◇◇◇



 木下たちの方が落ち度が大きい、ということで玲の処分は一ヶ月の謹慎から一週間の謹慎に縮まった。

 


 さらに2日後、関係した生徒の保護者が学校に呼び出された。


 玲の父親が口を開く。


「さて、そちらのお嬢さん方が私の娘から盗んだものの中にSSランクのアイテムがあったのは警察から聞いていると思います」


 木下自身の証言をもとに、警察は家宅捜索をし、玲から盗んだ私物が出てきてその中にマジックポーチがあった。

 警察が押収し鑑定にかけたところ、SSランクのアイテムだったから大騒ぎだったらしい。


「で、私の娘を傷害罪で告訴しましたね。そして示談金1000万円を要求。それには一切応じません。私もあなたの娘さんたちをまとめて窃盗罪で訴えましょう。木下さん、あなたは示談金巻き上げの恐喝罪も訴えます」


「「「…………」」」


「ご存じだと思いますが、刑事裁判は公開されます。当然傍聴人も来ます。そして、SSランクのアイテムが盗まれたことも法廷で明らかになって、当然SNSで拡散されるでしょう。炎上大好きな正義の味方気取りのユーザーの恰好のエサでしょうな」


「なんで刑事裁判が公開されるのよ! プライバシーの侵害じゃない!?」


 木下の母親が騒ぐが……


「木下さん、密室でおかしな裁判がされないように公開されているのですよ。中学校で習う内容ですわ」


 他の母親に言われて木下の母親はバツが悪そうに黙る。


 玲の父親が再び口を開く。


「ネット民の調査能力は異常ですからね、個人情報なんかあっという間に広がるでしょう。金持ちからは警戒され、企業からすればそのような人間を家族も含めて雇いたいと思いますかな?」


「木下さん、早く告訴を取り下げるのよ! 私たちも巻き込まれるのはごめんよ! だいたいあなたの子が私の娘を無理やり誘ったんでしょ!」


 木下といっしょに玲のものを盗んだクラスメイトの親が木下の母親に詰め寄る。


「でも、個人情報を流したら法律で処罰されるのよ。そんなことをする人なんていないわ」


 木下の母親が反論するが……


「認識が甘いですわ。SNSでバズって収益を上げられれば多少刑を食らっても平気な人間もいます。むしろそれを武勇伝にしてさらに金を稼ぐ強者もいますわ」


 他の母親に速攻論破される。


「そういうことですな。いかがですか、告訴を取り下げればこちらも何もするつもりはない。謝罪くらいは欲しいですがね」


 結局、木下の母親以外からは謝罪があったが、木下の母親からは一言もなかった。



◇◇◇



 結局翌日に、玲に対する告訴は取り下げられた。

 玲を傷害罪に陥れる代わりに、自分が窃盗罪と恐喝罪(木下以外は窃盗罪のみ)に問われてまで共倒れをする勇気はなかったようだ。


 だが、学校独自の判断により、玲は地方大会の出場を自粛させられた。

 さすがにスキルを人に向かって行使してしまったことはそれなりに重い意味を持つ。

 倉橋先輩は地方大会で大きなハンデを負うことになってしまったと嘆いていた。

 


 この話はまだ続きがあって、どこから漏れたのか木下たちの情報はSNSで拡散されていた。

 SSランクのアイテムを盗んだとして話題性は十分だった。



 後日の調査で分かったことだけど、漏らしたのは木下に職員室で暴露させた時にたまたま職員室にいた2Bの生徒だった。

 さらに所轄の警察職員が居酒屋で酔っている時にその投稿を見て詳細な情報をリークし、それを発見したネット民が面白おかしく拡散したのだ。


 漏らした生徒は特定され半年の停学。

 警察職員は懲戒免職。

 木下たちはSNSに誹謗中傷の嵐で、家の壁に落書きされたり、整形前の中学のアルバムを晒されてビフォーアフターの画像を作成されたりした。

 しかもどこで整形したかまで特定されていた。

 結局自主退学し、一家で田舎へ逃げていった。


 アホなことをしたツケは重く、関係なかったはずの他人も巻き込んで大ごとになってしまっていた。


 玲にしたことを考えるとざまぁとしか思えないけど。



◇◇◇



 そんなひと騒動があり、6月に入ると探索科の神奈川地方大会がもうすぐ始まる。


 僕と玲はそれに向けてさらに自分達を強化していた。



ーーーーーーーーーーーーーー

逆崎 翔 レベル99999(300)

ジョブ【無職】(【見習い戦士】)

ユニークスキル【リバース】(なし)

ーーーーーーーーーーーーーー

※(  )は偽装の指輪により表示される内容

※ジョブ履歴(【ゴッドハンド】【聖騎士】【ルーンマスター】【賢者】【ポープ】【スペルカイザー】【忍者マスター】【ドラゴンテイマー】【万能錬金術師】【邪神の使徒】【神眼を持つ者】)



 とりあえず現時点でなれるジョブにチェンジし、【リバース】で最上級ジョブになっておいた。


 で、現ジョブが【無職】なのは理由がある。


 レベル引き継ぎ以外取り柄のないジョブと思われていたが、詳しくジョブ鑑定を行ったところ、『各ジョブのマスター特典を引き継ぐ』、というジョブ特性が隠されていたのだ。


 なので【ゴッドハンド】の体力と物理攻撃大幅上昇とか、【邪神の使徒】の不死系モンスターからの攻撃を激減させる、などのマスター特典が複数あれば、実は【無職】が最強の職業となるのだ。



 なお、玲にも同じようにジョブをマスターさせたが、【無職】はなんとなく嫌という理由で、ジョブは【氷神姫】にしている。

 他のジョブのマスター特典はないけど、スキルは全て修得しているので僕に次いで最強だろう。多分。



 まだまだある。


 ダンジョンの代表的なザコモンスターであるスライムは通常ドロップはないが、稀に『下級ポーション』を落とす。


 あとはわかるな?



◆◆◆◆◆◆


【ゴッドハンド】

 戦士系の最上位ジョブ。

 全ての武器(体術含む)の物理攻撃系スキルを使用可能(特殊なジョブに由来するものを除く)。

 マスター特典として体力と物理攻撃力が大幅上昇する。

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