第6話 恋人にSランクアイテムをプレゼントし、超絶レベルになった僕に陽キャ俺様の攻撃は通らない。

「【リバース】発動! レザーアーマーのランクを反転する!」


 レザーアーマーが光に包まれ、光が収まるとそこには羽根飾りのついた軽鎧が現れていた。


「ふむ……。ヴァルキリーアーマー、Sランク、物理攻撃を大幅に軽減、魔法攻撃を半減、腕力および敏捷をそこそこ上昇させる。日本国内で見たことはありませんな」


 美城さんが【鑑定士】のスキルを行使して軽鎧の情報を読み取る。

 やはり、成功だ。

 これを装備していけばダン警の仕事もより安全になるだろう。


「ダン警にはこれを装備していって欲しいんだ」


「ありがとう、翔」


「どういたしまして。他にもいろいろと試したいことがあるけど、魔力が空っぽだ」


 【リバース】のスキルは毎回魔力を全部消費するからね。

 ちなみに、魔力を使い切ると次に満タンになるまでおよそ8時間かかる。


「翔さま、魔力ポーションをお使いになりますか?」


「え、でも高いんでしょう?」


「最低100万円からですな」


 金銭感覚壊れる。

 でも平然と言ってのける美城さんを見ると金持ちってそういう感じなのかもしれないな。



「ごめんなさい、まだ覚悟が……」


「いえ、かまいません。覚悟ができましたらいつでもお声がけください」


「ありがとうございます、美城さん」


「それとオルトロスの魔石でございますが、日本国内では流通がありませんのでそのまま売却は難しいです。旦那様のツテを利用してアメリカ経由で売却は可能でございますが、入金にはお時間がかかります。よろしいでしょうか?」


「あ、はいお願いします」


「それとドロップ品のオルトロスのピアスでございますが、Aランク、敏捷性をかなり上昇させる、というものでございました。いかがなさいますか?」


 オルトロス戦でゲットした魔石とドロップ品については、いろいろあって少し忘れていたのでこのタイミングでの判断となった。


「それも玲が装備した方がいいと思うから、玲に使ってもらうよ」


「承知いたしました」


 玲がすかさず口をはさんでくる。


「翔、過保護じゃない?」


「何言ってるんだ玲、またこの間みたいな格上と戦う機会があるかもしれないじゃないか。できる準備はしておいたほうがいいよ」


「……ありがとう」



 さらに次の日、『偽装の指輪』が2つ届いた。

 これで試したかったことができる。



◇◇◇



 土日が終わって、月曜日。の放課後。


 僕は武藤と取り巻き3人たちに体育館の裏に呼び出されていた。




「何で呼ばれたかわかってんよなあ?」


「武藤くん、何のことかわかんないよ」


 分かってるけど一応とぼけてみる。

 テンプレだよね。


「御堂と別れろ、ってことだよ!」


「いやだ。ていうか仮に別れてもお前と付き合うわけないだろ。あんな命令形で付き合えなんて上から目線で女の子に好かれるわけないじゃん」


 少なくとも僕が女の子だったら武藤は絶対嫌だ。

 顔がよくても性格が受け付けない。


「武藤さんはな、大企業の武藤コンサルタントの長男なんだぞ! これまで女は喜んで付き合ってきたんだよ!」

 

 取り巻きその1が謎のマウントを取ってくる。


「それって武藤くんじゃなくて、『武藤コンサルタントの息子』っていうのしか見てないんじゃないの? 女の子と長続きしたことある?」


「うっせーよ! モブキャラのくせに! 軽い怪我だけで済まそうと思ってやったのに容赦しねえぞ」


 そういうと武藤くんは目の前に握りこぶしくらいの火の玉を出現させた。


「どうだ、怖えだろ? 入学して大してレベルもないお前が食らえば大やけどで病院送りだぜ。今なら土下座して俺の靴を舐めて玲を譲ったら許すことを考えなくもないぞ」


 うーん、オルトロスの炎弾と比べるとおもちゃみたいだ。小さいし。


「武藤くん、人に向けて攻撃魔法を放ってはいけないって習わなかった?」


「ふ、俺のユニークスキルは【炎熱の誇り】! 火魔法も使えてさらに火属性攻撃の威力が上昇するんだぜ」


 僕の話を聞いていないうえ、勝手に自分のユニークスキルを喋りだした。


「そして俺のジョブは【下級戦士】! つまり物理も魔法も使える万能アタッカーなんだよ! 今ならまだ許してやらないこともないぜ?」


 まあ僕のジョブはまだ【見習い戦士】だからそこだけは負けてるけど……


「武藤さん! やっちまいましょう! 大怪我させてももみ消せますし!」


 取り巻きその2が武藤を煽る。


「ふん、そうだな、バカは躾けてやらんとわからんからな。くらえ、ファイアボール!!」



 そういうと武藤は火の玉を僕に向けて放つ。

 そして僕の胸に火の玉が当たり小爆発を起こす。


「さすが武藤さん! レベル100オーバーは伊達じゃないっすね!」


「そうだぜ、中学の時から冒険者を雇ってダンジョンの実戦で鍛えたからな!」


 そして爆発の煙が収まるが、そこには無傷の僕がいる。


「…………効いてない?」


「うん、効いてないよ」


「くそっ、バカな! くらえ、出でよ、我が魂の炎よ、ファイアボール・バースト!」


 今度は火の玉をこちらに放ってきて、さらに僕に当たる直前で火の玉が派手に弾けた。

 この感じ周囲を巻き込む範囲攻撃っぽい。

 もちろん効かないけど。


「……そんな、50階までの魔物なら一撃で爆殺できる威力なのに!!」


「そんなヤベーもんぶつけるなよ!」


 思わずツッコんでしまう。

 低レベルのやつがまともに食らったら火傷どころか死ぬんじゃないか?

 そしたら間違いなく殺人罪で逮捕だぞ。


 スキルを使って犯罪を起こしたことがバレた場合、通常よりも刑罰が加算される。

 殺人ならほぼ間違いなく死刑だ。

 武藤コンサルタントでもかばいきれないんじゃないか?


「武藤さん、魔法が効かないなら囲んでボコしましょうよ!」


 取り巻きがそんなことを言ってくるが……


「何だ、今の爆発は!!」


 さすがに派手な爆発音がすれば誰か気づくよね。


「ちっ、人が来る。くそっ逆崎、運がいいな、覚えてろよ!」


 そういうと武藤たちはその場から慌ただしく逃げていく。


 入れ替わりに上級生がやってきた。


「君、何があったんだ、すごい爆発音がしてたけど……」


「ああ、先輩、実は……」


 無駄かもしれないけど一応さっきあったことを話しておく。


「よく無事だったな……」


「ええ、まあ」


 だって僕は……



ーーーーーーーーーーーーーー

逆崎 翔 レベル99829 (17)

ジョブ【見習い戦士】(【見習い戦士】)

ユニークスキル【リバース】(なし)

ーーーーーーーーーーーーーー

※(  )は偽装の指輪の効力により表示される内容



 だからね。

 レベル100程度の攻撃なんて何でもない。

 反撃したらうっかり殺してしまいそうだからさっきは何もしなかった。


 実戦で使えるスキルは【見習い戦士】の初歩である『なぎ払い』しか使えないけど、これだけレベルが高ければステータスの暴力でなんとでもなりそうだ。


 この訳のわからないレベルは、昨日のうちに【リバース】を使って、僕のレベルを反転させてみたらこうなった。


 どのくらいすごいかというと、WEA(世界探索者協会)が発表している探検者レベルランキングの1位が、3409なのだ。

 その人は露支那帝国人(旧中国出身者)。


 偽装の指輪をもらったから、レベルを反転させておかしな数値になっても大丈夫だ、と思ったからやってみたんだけど……。


 正直予想以上の結果だ。ぶっ壊れすぎ。

 ゲームなら即修正パッチが当てられるレベルだよね。


 玲のレベルにも【リバース】を使ってレベル99503となっている。

 あ、ヴァルキリーアーマー要らなかったな、って思った。



◆◆◆◆◆◆

 

 リバースによるレベル反転の計算は、100000-現在レベルで出しています。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る