第25話 結婚して

花梨の家がどんだけ特殊なのかなどは知らない。

だが.....俺達にどうこうあれ出来る事は何一つとして無い。

俺は考えながら窓から隣のアパートを見る。


アパートは当然だが契約破棄されたので全ての工事が中止などで無人である。

花梨の奴も大馬鹿だが.....そうだな。

兄のやっている事はかなりキツい判断だと思う。


ピンポーン


「.....?.....こんな時刻に誰だ?」


時刻は午後9時を回っている。

そんな馬鹿な、と思いながら窓から外を見ると。

そこには花梨が.....ほあ!?

俺は!?と思いながら階段を駆け降りる。

それからドアを開け放つ。


「.....どうした!?花梨!」


「結婚して」


「.....は?」


「.....とーお兄ちゃん。.....私と結婚して!!!!!」


いきなり訳が分からない展開に俺は唖然とした。

すると花梨は俺に抱き付いて来る。

それから涙を流し始めた。


丁度.....その。婚約の話が来ていて私を婚約させるって.....そんなの嫌。

お兄ちゃんが良いの!、と言ってくる。

何事かと一葉もやって来た。


「え!?花梨!?」


「一葉。取り敢えずお茶でも淹れてやってくれ」


「う、うん」


それから一葉は慌ててリビングに向かう。

花梨はボロボロで泣きじゃくりながら俺を見てくる。

そして、私はまだ婚約したくない、と言いながら、とーお兄ちゃんと婚約するのが夢だから!、と言ってくる。


「.....花梨。取り敢えずは風呂に入ったらどうかな。案内するから。落ち着いてから話を聞こう。ボロボロじゃないか」


「.....有難う.....とーお兄ちゃん」


「.....」


何が起こっているのか分からないが。

取り敢えずはガタガタの服とボロボロの髪の毛を見てられない。

お風呂に入れてから話を聞こう。

そう考えながら俺は風呂へ誘導した。



「何が起こっているんだ?」


「.....えっと。逃げて来た。私は.....家から」


「.....そうなのか.....」


もう我慢出来ない。

あんな家.....直ぐにでも壊してやりたい。

そんな感じの事を言うソファに座っている花梨。

一葉の幼い頃のパジャマを着てホットミルクを飲みながら、だ。

俺はその言葉に一葉を見る。


「.....分かるよ。花梨」


「.....何が?」


「.....家族間のトラブルって.....面倒だよね」


「.....貴方も?」


「.....私は事情が違うけど母親が浮気して私を捨てたから」


その言葉に!と浮かべる花梨。

俺はその言葉を受けながら複雑な顔をする。

すると、取り敢えずは花梨。泊まって行ったらどうかな、と一葉が提案した。

それから花梨を抱きしめる一葉。

いきなりの行動に花梨も驚く。


「.....」


「.....貴方は同級生だけど.....何だか姉妹の様にも感じれるし」


「.....も、もう!そんなつもり無いんだけど!?ライバルでしょ!」


「今は違うよ。アハハ」


「.....」


一葉は優しく花梨を抱きしめる。

それから頭をゆっくり撫でた。

その事に花梨は涙を頬に伝わせる。

俺はその姿を見ながら笑みを浮かべる。

何はともあれ.....。


「.....花梨。一葉の言う通りだ。泊まって行ったら良い。.....服とか出すから」


「.....有難う。御免なさい。こんな形に.....こんな時間に.....」


「気にすんな。俺も顔が見たかったしな。お前の顔が」


「.....へ?」


「.....ふーん。遠矢さんの浮気もの」


「お前ら.....」


ボッと真っ赤になる花梨。

そして鬼の形相になる一葉。

何でだよそう言う意味じゃないよ。

俺は一気に説明するが。

どうだか、と一葉は横を向く。


「.....でもその冗談は置いて。お前.....許嫁となるとか聞いたが」


「.....そうだね。.....でも私は絶対に嫌。親の決めた事とは言え絶対に嫌」


「そりゃな。何処の馬の骨と婚約させられるかも分からんのなら尚更」


「.....とーお兄ちゃんしか見てないもん。昔から」


「そりゃまた.....有難いが.....恥ずかしい」


でも事実だし、と言いながらホットミルクの入ったコップを置いてから。

膝を曲げてソファの上に体操座りする花梨。

湯上りなもんで良い匂いが.....。

俺はボッと赤面する。


「.....ほほう。遠矢さんの浮気もの?」


「.....俺は何時から主の彼氏になった」


「.....ふーんだ。馬鹿」


「.....全く」


俺はそんなコントを繰り広げながら花梨を見る。

花梨はクスクスと笑って俺達を見ていた。

そして頭に巻いていたタオルを取る。

それから俺を見てきた。


「気が動転していたけど.....とーお兄ちゃんのお陰で落ち着いた」


「.....それは良かった。.....この先お前はどうする?」


「暫くはこの家に潜伏したいけど良いのかな」


「.....それは構わないが.....例えば教科書とかは?制服とかは?」


「それは柚子に持って来させる。学費だって私が払っているし」


「.....そうか.....ん?柚子って誰だ.....」


するとまた夜なのにインターフォンが鳴った。

俺は?を浮かべて玄関を開けると。

そこには荷物が3つ。


既に人影は無かった。

大型のスーツケースに入っているが.....。

これは.....まさか!

すると花梨がニヤッとした。


「柚子が持って来たんだね」


「.....柚子ってのは召使いか?」


「コードネームかな。.....その名前が、柚子、だよ」


「.....お前の家はどうなってんだ.....」


柚子ってのはスパイかな?

黄昏みたいな。

意味不明な展開から結論。


暫くは花梨は俺の家で結論を出す事になった。

そうだな.....まあそれなりには楽しくはなりそうな気はするが。

どうなっていくんだろうか.....。

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自分は記憶喪失ですとか義妹とかに言ったら大変な事になった件について アキノリ@pokkey11.1 @tanakasaburou

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