第24話 花梨の兄の存在と一葉の思い

一葉はどんな人物であっても自らを産んだ母親に会いたい様だ。

俺はその様子を見ながら考えていた。

どう励ましたら良いのか、という事を。

考えながら俺は一葉を見る。

一葉は起きてから何事も無かった様にしていた。


「.....えっと.....私はどうして遠矢さんの部屋で寝ているの.....?」


「まあ.....眠たかったんじゃないのか。お前は」


「そうだね.....え!?それだけで!?」


「そ、そうだな」


俺は汗を流しながら自室で一葉を見る。

一葉は真っ赤に染まっていく。

羞恥でだろう。

そして俺に向いてくる。


「ば、バカだね。私.....」


「そ、そうだけど.....仕方が無いだろ」


「.....何もしてないよね?私」


「あ、ああ。うん」


「.....怪しいんだけど.....」


ジト目で見てくる一葉。

俺は溜息を吐きながら一葉を見る。

そして、一葉。大丈夫だ。俺もお前も全てに手を出す程、根性は無い、と答える。

それから俺は一葉の頭を撫でる。

そうしてから俺は一葉を見る。


「御免な。寝かせるならお前の部屋にすれば良かったな」


「.....大丈夫。遠矢さん。ゴメン。ちょっと気が動転していたかも」


「そうか」


「疑ってゴメン。.....それから私も色々とゴメン」


「.....まあお前は俺が好きなんだから仕方が無いわな」


「.....やっぱり遠矢さんは良い夫になれると思う」


「お前な。いきなり何を小っ恥ずかしい事を言ってんだ」


俺は赤くなりながら一葉を見る。

一葉は俺に対して笑顔を浮かべる。

それから俺の頭をゆっくり撫でてきた。

そして満足そうな笑顔を浮かべる。

子供か俺は。


「そう言っても遠矢さんも子供じゃん」


「.....そうだな。まあそうだけどさ。俺の方が年上な訳で」


「.....まあ確かにねぇ。アハハ」


そんな感じで会話していると。

電話が掛かって来た。

その相手は.....ん?花梨?

俺は直ぐに電話に出る。

すると.....男性の声がした。


『もしもし。此方は遠矢さんの携帯でしょうか』


「遠矢は俺ですが。何方様ですか?」


『.....花梨の兄です。私の名前は飯場和也って言います』


「.....花梨のお兄さん?.....どうしたんですか?」


『すいません。花梨の馬鹿が色々やった様で。お隣の不動産も購入している様ですが帳消しにしたいと思います。そのご連絡です』


「え?.....いや。全然迷惑とかじゃ無いんで.....良いですよ?」


ご配慮に感謝します。

花梨の馬鹿は反省も兼ねて暫く自宅にて待機させたいと思います。

本当にこの度は申し訳ありませんでした、と言う。


それから反省した感じを見せてから、それでは失礼します。有難うございました、と電話を切ろうとした。

いやいやちょっと待てよ?

その話がマジだとするなら花梨はどうなる?

まるで缶詰じゃないか。


「.....花梨の身は保証されますよね?何だかその。心配なんですけど」


『花梨は反省も兼ねて家から出しません。.....家族で決めたルールなので』


「.....いやいや。ちょっと待って下さい。幾ら何でも花梨が可哀想ですよそれだと」


『いえ。家族間で決めたルールですので。.....ご心配をお掛けしていますね。有難うございます。本当に感謝致します』


「いや.....ちょっ」


そこまで言ったが花梨の電話は切れた。

それから一切繋がる事は無くなり。

俺はスマホを困った様に見る。


すると一葉が心配そうに俺を見てきた。

そして、花梨は?、と聞いてくる。

俺は、まあ嫌な予感がする、とだけ答えた。

大丈夫だとは思うけどな、とも付け加え。


「.....大丈夫かな?」


「よく分からんが家庭の事情だしな。.....隣のアパートの購入も却下されたらしいから」


「.....ああ。そうなんだね。.....そうなんだ.....」


「楽しみだった所申し訳ないけど、的な感じだな」


「.....うーん.....ちょっと残念だね」


「.....花梨の身も心配だが.....」


俺は顎に手を添えながら顔を顰める。

それから考える。

そして俺は一葉を見る。


一葉は困惑しながら俺の様子を見ていた。

その姿を見つつ俺は何も無いスマホの画面を見る。

どうしたものか、と思いながら、だ。

そして溜息を吐きながら一葉を見つめる。

一葉。今は取り敢えずは成り行きを見守ろう、と言いながら。


「.....そうだね。.....花梨とせっかく友達になれたと思ったんだけどね」


「.....そうだな。こればっかりは仕方が無い。家の事だし。俺達には何の関係性も無いから。.....だから仕方がない」


「.....そう.....だね。うん」


だけど何かしてあげたい、的な感じを見せる一葉。

変わったもんだなコイツも。

そう考えながら一葉を見てみる。


一葉は悲しげな顔ながらも頷いていた。

俺はその姿に心が痛みながらも顔を前に向ける。

花梨も大変だな、と思いながら。

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