どれだけ最悪でも

第23話 本音と酔っ払った場合

俺達の家の隣。

右隣だが昔は知り合いのお婆さんがアパート経営をしていた。

そのアパートをまさかの花梨が買取。

それから改築してから住むという。

やれやれな感じだが。


まあだけどここまで全て花梨の金だから何も言えないし言うつもりもない。

だけどまあ全くな。

次元を超越する野郎だな花梨は。

思いながら俺は苦笑しながら勉強を進めていると。

ノック音が聞こえそれから。


「遠矢さん」


と声がした。

俺は?を浮かべてからドアの方向を見る。

そして入って来る一葉を見る。

一葉は笑みを浮かべて俺に向いていた。


「?.....どうした。一葉」


俺の部屋から去った一葉が暫くしてからの事だ。

一葉はオボンを持っている。

俺は?を浮かべながら一葉を見る。


「お三時のおやつ食べない?」


「ああ。そうだな。今日は何を作ったんだ」


「クッキー。チョコチップ」


「何でも作れるなお前さん」


俺は苦笑しながら一葉を見る。

一葉はそりゃ遠矢さんの為だし練習したしね、と言いながら胸を張りつつ。

俺の目の前に良い香りのクッキーと。

ミルク紅茶を置く。

チョコチップクッキーは私はミルク紅茶が好きだから、という事らしい。


「ミルク紅茶は何でも合う代物だからねぇ」


「何だ?お前さんはお婆ちゃんか?」


「めっちゃ失礼だね。遠矢さん」


「すまん。冗談だ。でも話は変わるが有難うな。マジに作ってくれて」


「意地悪言う遠矢さんの分はありません」


んな事言わないでくれたまへ、と告げると。

クスクスと笑顔になる一葉。

それからニコッとした。

これは何にせよ遠矢さんに作ったものだよ、と苦笑しながら、はい、あーん、と言ってくる。

お、おい。


「んな事しなくても自分で食べれるから」


「嫌なの?ふーん。遠矢さん冷たい」


「あのなぁ」


「遠矢さんは冷たいんだー。ふーん」


「分かったよもう!じゃ、じゃああーん」


そのまま口にチョコチップクッキーを入れてくる一葉。

ばりぼり咀嚼してから俺は顔を上げる。

それから飲み込む。

めっさ美味いんだが。

俺は愕然とする。


「そりゃ遠矢さんの好みの味は私は把握済みだしね。有利だもん」


「まあ確かにな。お前とは1年近い付き合いだしなぁ」


「そう。だから色々知ってる。遠矢さんの性癖とかも」


「いや。おま。何を言ってんだ。ふざけるな」


冗談?冗談に見える?、と言ってゆっくり四つ足になる一葉。

俺は?!と思いながらビクッとして背後に退きながら俺は一葉を見る。


一葉はうっとりした様な顔をしながら少しずつ近付いて来る。

俺は赤面しながら一葉を見る。

一葉はのそのそしながら付いて来る。

やがて壁際に追い詰められた。


「お、おい。一葉。流石にこれは!?」


「私は貴方の事が好きなんだよ?この状況だって我慢しているだけかもよ?」  


「俺はお前の事は義妹として好きだ!だけど!」


「まあ義妹としてでも、ね?愛してる」 


一葉はニコッとしながら俺を見てくる。

その顔は間違い無く大人の女だった。

我慢が効かなくなりそうな。

するとボッといきなり火が点いた様に一葉は、我慢の限界、的な感じを見せた。

俺は!?と思いながら一葉を見る。

一葉はそのまま倒れた。


「.....え!?お、おい!一葉!」


「.....むにゃ.....」


「.....寝てんのかい!」


俺は!?と思いながら一葉を匂う。

すると酒臭い匂いが.....んな馬鹿な!?

俺はハッとした。


そういえば確か下のリビングにウィスキーボンボンとか置いてあった様な、と。

額に手を添える。

そしてまさかと思うがクッキーに洋酒を使ったのか!?

いや素人だから分からんけど!


「お前なぁ.....」


「スヤー」


「ったくこのクソバカめ」


駄目だ。

マジにただの屍の様だ。

俺は考えながら額に手を添えながら抱える。

そして俺のベッドに寝かせる。

それから俺は一葉の額を撫でた。


「一葉。有難うな」


「.....むにゅー」


「.....気持ち良さそうに寝るねコイツ.....」


俺は苦笑いしながら見ていると。

メッセージが来た。

それは花梨からだったが。

すいません。事情があって帰れません、というメッセージだった。

何だコイツ?


(事情って?)


(お兄ちゃんが煩いので帰れないです。すいません)


(ああ。そういう事か。ゆっくりな)


(はい。すいませんが宜しくお願いします)


花梨が珍しく落ち込んだ様な感じのメッセージを送ってくる。

何だ?家庭で何かあったのか?、と思ったが。

詮索するのも如何なものかと思ったのでそのままにしておいた。

俺は花梨に返事を打ち終わってから一葉を見る。

柔らかそうな唇してんなぁ。


「.....おっと。いかん。煩悩が。.....こういう時は勉強だな.....」


胸の谷間とか見えるし.....。

煩悩が凄まじい。

俺は思いながらそのまま勉強を始めた。

そして途中でラノベを読んだりして居ると。

くすんくすん、と泣く様な声が。


「.....?」


「.....ママ.....何で.....」


「.....一葉.....?」


「何で.....出て行っちゃったの.....」


「.....」


結局.....。

どんなクズでもやっぱり家族だったら会いたいんだなきっと。

俺は複雑な思いで一葉を見る。

一葉は静かに泣いていた。

グスグスと言いながら。


「.....」


頬を涙が伝う。

俺はその姿を見ながら思わず涙を拭ってしまった。

そして.....暫くその様子を.....見てしまっていた。

それは惹かれたとかそんなんじゃない。

ただ.....感情に浸っていた。

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