私の決意と予想外の展開

第18話 遠矢さんが好きだから

「私を遮るってのはいけないよ。全く」


「そ、そうだな。すまん」


俺達はそんな会話をしながら.....そのまま花梨と別れた。

因みにあの後だが雪色と祐子と別れてから。

そのまま帰って来て.....花梨も家に帰るらしく別れる。


ずっとプンスカ言っていた。

それはそうだろうな。

まあ悪い事をしたと思う。


「御免な。花梨。この埋め合わせはするから」


「.....そうだね。きっととーお兄ちゃんならそう言ってくれると思ったから」


花梨は俺の前に出て来る。

それから後ろに手を回してから笑顔を浮かべる。

期待してるよん、と言いながら。

俺はその言葉に赤面しながら.....玄関から手を振って見送った。

それから踵を返してから室内に入る。


「帰った?お兄ちゃん」


「.....そうだな。帰ったよ」


「そっか。ちょっと寂しいな」


「.....お前がそう言ってくれるだけ報われるよ俺」


「アハハ。でもお兄ちゃん。何事も極秘はいけないよ」


「そ、そうだな」


何というか芋づる式に一葉にもバレた。

俺は顔を引き攣らせて苦笑しながら一葉を見る。

すると一葉がいきなりスプーンで何かを俺の口に突っ込んだ。

そして、ん、と言ってくる。

咀嚼するが.....かなり甘い味がする。


「こ、これは?何を作っているんだ?」


「ジャム。.....えっとね。.....買ってきた杏のジャム」


「.....そうなのか」


「うん。私の趣味ってこういう料理だから」


「.....そうだよな。確かに」


まあ俺には食わせてはくれなかったけどな。

以前.....のコイツの態度から。

いや?食わせてもらっていたかもしれないな。

俺は考えながら一葉を見る。


「一葉。美味しいよ」


「ん」


「.....お前ってこういうの得意だよな」


「そうだね。.....まあお兄ちゃんがみんなが美味しいって言ってくれるから作りがいがある」


「.....そうか」


「.....でね。お兄ちゃん」


何だ、と俺は聞く。

すると、お兄ちゃんって恋人が居たよね、と言ってきた。

そして更に、もしかしてだけどお兄ちゃんって記憶喪失じゃないよね、とも。

俺はギクギクギクッと次々に衝撃を受けながら一葉を見つめる。


「.....お前.....」


「.....私の為?それって」


「.....そうだな。お前の為でもあったかもしれない。気に掛けてもらうのが申し訳無かったから」


「.....記憶喪失は?」


「ゴメン」


俺は頭を下げて謝る。

すると、もう。良いけど。.....でも心配したんだから、と怒る。

頬を膨らませながら、だ。

俺はその姿にまた頭を下げた。

深々と。


「私.....お兄ちゃんが好きだから」


「.....?」


「.....私は.....お兄ちゃんを恋人として見たい。.....だから嘘は吐いてほしくない。それに心配掛けるのは勘弁してほしい」


優しく混ぜながら俺に言いつつ。

俺を悲しげに見てくる一葉。

そんな一葉に、ゴメン、と言いながらそっぽを見る。

すると、でもまあそれがお兄ちゃんだから、と言いながらポッと赤面した一葉。

これが良いきっかけになったかも、とも。


「.....ねえ。お兄ちゃん。しゃがんでくれる?ジャムの味を確かめてほしい」


「.....?.....ああ。良いぞ」


「有難う。お兄ちゃん」


そして俺は屈むと。

その頬にいきなり一葉が駆け寄って来てそしてキスをした。

!?!?!、と思いながら俺は真っ赤になりながら一葉を見る。

一葉はニコッとしながら、杏の味がした、とふふふと笑う。

そして鼻歌を交えて戻る。


「お、おま!?」


「エヘヘ。だってこれぐらいは良いでしょ?超越した兄妹だし」


「こ、この恥ずかしい!」


「私ね。こう思ったんだ」


「.....?」


杏のジャムに蓋をしながら。

俺を見てくる一葉。

その顔は赤くなったままだが決意に満ちていた。

そして俺を見上げてくる。

お兄ちゃんの大切な人を愛情で超えるって、と言ってきた。


「お兄ちゃんを励ますのは難しい。だったら越えれば良いんじゃないかって思ったの」


「お前.....」


「励ますよ?でも.....それ以外でも。私はお兄ちゃんを.....いや。遠矢さんを超える」


「.....」


「恥ずかしいかもしれない。何もかもが難しいかもしれない。.....だけど私は.....遠矢さんを大切に思ってる。誰よりも遠矢さんが好き」


「.....お前.....」


お前、しか言えない。

だけど一葉はニコッとしながら俺を抱き締めて来た。

そして、遠矢さんと出会って良かった。私は、と和むような感じでスリスリして強く強く抱き締めてくる。

俺はその姿に胸が詰まる思いだった。


「一葉」


「.....何?」


「俺はお前を好きにならないかもしれない」


「.....うん」


「.....俺は過去を忘れられないかもしれない」


「うん」


「.....それで良いのか」


うん。遠矢さんの大切な気持ちは尊重する。

過去を忘れられないと思う、と言う一葉。

だけどたまには私を妹じゃなくて一人の女として見てね、と言ってきた。

俺はその言葉にボッと赤面する。

そして一葉の頭を撫でる。


「.....暖かいね。遠矢さんの手。大きい」


「.....そうか」


「男の子の手だね」


「.....そうだな」


そして俺達は暫く抱き合ってから。

そのまま仕事を始めた。

俺は勉強したり。

家事をしたり。

一葉も同じ様な事をする。

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