第15話 その彼女はもう居ない
女性3人に次々に告白された。
誰かといえば俺の義妹。
そして幼馴染。
更に幼馴染の親友。
でも俺は.....はっきり言って付き合えない事情がある。
それは俺の記憶喪失問題もそうだが。
それ以外に.....理由がある。
実の所俺には彼女が居た.....いや。
性格には、居たが居なくなってしまった、が正しいかもしれない。
小学校時代の話だ。
これは義妹に出会う前の話。
少しだけクラスメイト達に内緒で付き合っていた彼女の話だ。
その彼女の名前は.....横山昴と言った。
『遠矢君』
そう呼ばれるのが俺であった。
それから.....彼女は心から大好きだ.....ったのだが。
今でももう悲しいと。
涙が出そうになる。
彼女は信号無視のトラックに跳ねられた。
即死だったのだが。
実際俺と何かが似ている。
だけど.....俺は助かり。
彼女は死んだ。
思えば彼女が守ってくれたんじゃないかって思っている。
だから記憶喪失。
いや。かすり傷程度で済んだんじゃないかって思い始めた。
今俺は演技をしている。
全てにおいて。
この事は小学校時代の義妹は知らない.....筈だ。
俺はその事もあってもう2度と。
彼女は作らないと.....心に決めていた。
あまりのショックで.....、だ。
そう思いながら目の前の雪色を見る。
「雪色」
「遠矢.....」
「悲しそうな顔すんな。大丈夫。今日は付き合うから」
「.....うん。有難うね」
こうして彼女が。
そしてアイツが。
それからあの娘が。
近付いて来ても全く恋愛感情が湧かない。
いや.....より正確に言えば。
俺は死神と思っているから、だ。
だから.....もうゴメンだって。
そう思っている。
「遠矢」
「.....何だ」
「.....今日呼んだのは寂しかっただけじゃないの」
「.....?」
「.....遠矢に彼女が居たでしょ。昔」
だからこんな感じで居た俺に。
雪色からその言葉を受けた時には。
あまりに衝撃的であった。
そして、な、何故そう思う、と聞き返す。
胸に手を添えながら雪色は話した。
「.....内緒で付き合っていた事を隠すのは無理だよ。普通。これはね。きっと.....一葉ちゃんも知ってる」
「.....馬鹿な.....」
「遠矢ってあからさまにショック受けてたよね。昴が亡くなってから。.....隠し切れないよそういうの」
「.....」
「.....だから付き合えないんだね」
「.....まあな」
だから、という言葉に俺は顔を背ける。
そしてそう返事をした。
だから。
つまり.....分かっているのだ。
雪色は俺が付き合えない理由を、だ。
そしてきっと一葉も気付き始めているだろう。
「一葉ちゃんも何も言わないけどきっと知っていると思う」
「.....正直な。.....俺は誰とも付き合う気はない。.....本当に」
「.....だよね。.....君を支えるのは大変だと思う。.....というかそこら辺は思い出したんだね?」
「.....ああ。何となくな。昔の記憶がな」
「そっか。良かった」
笑顔を浮かべながら雪色は俺を見てくる。
俺はその姿を見ながら目線を合わせれなくなった。
そうしていると雪色が俺の手を握ってくる。
そして笑顔を浮かべて駆け出した。
「ちょ、ちょ!どうした!雪色!」
「私と一緒に図書館に行こう。.....そして.....昴のお墓に行こう」
「.....!」
「.....君の大切な人だから。ちゃんと挨拶をしたい」
「お前.....」
その言葉にいつしか。
涙が浮かんでいた。
そしてポロッと流す。
その涙を拭ってから.....俺は雪色を見る。
良いのか、と聞いてみる。
「雪色。良いのか。お前の記憶はあまり思い出してないのに」
「.....私ね。考えたの」
「.....何を?」
「.....私達はきっと君を支える為に居るんだなって。それだけで幸せ。告白はね。君を支える何かになってほしいって思ったから告白したんだって」
「.....雪色.....」
そして立ち止まる雪色。
それからニコッとしながら俺を見た。
そうしてから手を握る。
そして俺を見上げてきた。
「私を.....幼馴染としてくれて有難う」
「.....」
「私は幸せです。告白して振られても。それでも幸せです」
「.....」
コイツ.....コイツ!
涙で視界が歪んできた。
俺はゆっくりと涙を流しながら拭う。
そして雪色を見た。
雪色は笑みを浮かべながら俺の手を握る。
「お前.....本当に良い子だな。雪色」
「.....私は良い子じゃない。気が付いただけ。そしてそう思っているだけ。それを告白しただけ。だから今日話したかった。笑顔になりたかった」
「.....」
「.....図書館ね。改築されてカフェも併設されているの。一緒に行こう?」
「.....そうだな。.....行くか」
そして俺達はそのまま図書館にやって来た。
いかにも雪色が好きそうな場所だよな此処、と思いながら。
それから顔を見上げる。
本が沢山だな、と思いながら。
そして.....昴を思い出した.....。
「大丈夫?遠矢」
「.....ああ。.....お前が居るからな」
「.....そっか.....うん。分かった」
俺は微笑みを浮かべる。
それから笑みを赤くして浮かべている雪色を見つつ。
俺達はそのまま図書館に入ってみる。
それから.....各々で好きな本を探してみた。
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