出会った頃の時代

第11話 出会った頃を思い出す時

「お前が泊まるにあたって決めたい事がある。3つだけどな。1つ目。何を考えているか知らないが俺にあまり接触したら駄目だ」


「.....えー.....」


「えー.....、じゃない。俺はあくまでお前の恋人じゃない。だからキチンと境界線は決めないといけない」


「.....まあ良いですけど.....」


そんな言葉を母親と義父の居ないリビングで話す。

不愉快そうな感じで俺を見てくる花梨。

俺はその姿に溜息を吐きながら、一葉も困っているしな、と告げる。

すると不愉快そうな顔をしていた.....一葉が顔を上げた。


「お兄ちゃん.....」


「.....だから俺はお前とはイチャイチャ出来ない。そういう事は大切な人にしろ。それなりに大切な人にな」


「.....とーお兄ちゃんが言うなら仕方が無いですね」


でも私はとーお兄ちゃんが好きですから。

だからイチャイチャを0にする訳じゃ無いです、と言ってくる。

俺はその姿を見ながら盛大に溜息を吐きながらも。

分かった。多少なら許す、と言う。

だけど思いっきりなスキンシップは禁止な、と告げた。


「.....それから2つ目。今直ぐに一葉と仲良くしろ」


「.....えー.....」


「だから、えー、じゃない。確かにそう言うとは思ったけど。でもな。同じルームメイトには仲良くしろ。良いか」


「.....分かりました。仲良くします」


お兄ちゃん有難うね、と言ってくる一葉。

俺はその姿を見ながら笑みを浮かべる。

その姿を見ながらそれから最後に、と言う。

俺は記憶が無い。だから無理は出来ないからな、と話す。


「.....そうだね。とーお兄ちゃんはそうですから」


分かった、と言いながら笑顔を浮かべる花梨。

俺はその姿を見ながら頷く。

でもそれはそうとこれってバレるとマズいんじゃないのか?、と花梨に聞くと。

花梨は、妹として泊まっているだけなので問題ないです、と言葉を発する。

マジかコイツは、と思いながら顔を引き攣らせた。


「とーお兄ちゃんの為なら何でもします。引退も覚悟です」


「.....マジかよ.....」


俺は顔を引き攣らせながら苦笑する。

すると花梨はそのまま一葉に手を差し出した。

そして見つめる。

それから握手した。


「.....とーお兄ちゃんが言うから。仲良くしましょう」


「.....分かった。今は休戦だね」


「.....休戦?」


「な、何でもない!」


意味が分からない。

だが何だか知らないが良い決意が見えた気がした。

俺はその姿を見ながら。

立ち上がる。


「すまない。俺はちょっと洗濯機を見てくるから」


「じゃあ私は料理をする」


「.....私はお掃除をする」


「え?お前掃除出来るのか?」


「もー。失礼だね。お兄ちゃん。私は鍛えているよ?こういう家事とか」


「ああ。マジか。すまない」


それから俺達は役割分担で動き始めた。

花梨に申し訳ないと思いながらも。

そして日は落ちていき。

夕飯の時間になった。

今日の夕飯は.....魚の様だ。



「鮭のムニエル」


「.....美味しそうだな。こんなものまで作れるのか」


「そうだね。お兄ちゃん」


「.....」


何か.....花梨が羨ましそうな顔をしている。

まるで私も作りたい、という感じの顔を、だ。

すると一葉は少しだけ悩んでから。

顔を上げて花梨に向く。


「.....教えてあげようか?」


「.....え。い、いや.....そんなのは.....」


「良いじゃないか。教えてもらえよ。花梨」


「.....じゃ、じゃあ分かった。とーお兄ちゃんが言うなら.....」


鮭のムニエルは作れない様だ。

俺はその姿を見ながら、新鮮だな、と思いつつそのまま見ていた。

するとその中の話題は.....花梨の過去になる。

花梨は、私はとーお兄ちゃんとは幼稚園時代に出会った、と言う。


「え?何処でだ?」


「覚えてないかもだけど.....私はとーお兄ちゃんとは待ち合わせ場所で出会ったよ。休憩所かな。電車の駅の」


「.....!」


「.....私はそこで.....とーお兄ちゃんに優しくしてもらって.....心から決めたの。.....とーお兄ちゃんの伴侶になるって」


「.....」


一葉は少しだけ複雑な顔をする。

これは少しだけ厄介だ、と思ったのだろうか。

俺は思いながら見ていると。

わ、私もだけど、と切り出す。


「私だって.....お兄ちゃんとは昔から出会っているし」


「.....え!!!!?」


「何でそんなに驚愕するの。お兄ちゃん」


「.....いやそうだろ。お前と出会っていたのか!?俺は!?」


「.....お兄ちゃん。覚えてる?.....あの日.....水溜りで転けた私に傘を差し出したの」


「.....小学校時代に.....その後に引っ越した女の子が.....嘘だろ.....」


あれ私だよ、と言いながら俺を見てくる一葉。

それから恥ずかしそうに口元に手を添える。

そして俺をまた見上げてきた。

俺は赤くなってしまう。


「.....」


「.....どうしたんだ?花梨」


「何でもないです。ただ.....うん。いや何でもないです」


何だコイツ、と思いながら見ていると。

一葉は俺の袖を小さく掴んだ。

それから俺を見上げてくる。

また上目遣いで、だ。

心臓がバクバクする.....。


「や、やっぱり恥ずかしい.....かな。良いや」


「.....お、おう?」


「.....」


花梨と一葉はそれぞれ行動する。

だけど俺はその行動に理解が出来なかった。

というか意味が分からなかった。

俺は何をどうしたら良いのだろうか、と思いながら鮭のムニエルを並べる。

すると花梨が俺に向いてきた。


「.....とーお兄ちゃん」


「.....どうした」


「.....私は負けないから」


「.....負けない?どういう意味だ」


「内緒」


マジに意味が分からん。

乙女心って複雑だな。

俺はそんな事を思いながら。

盛大に溜息を吐いてしまった。

そして一葉を見る。

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