第10話 言い過ぎだ

「お兄ちゃん。私は怒っているからね」


「.....何がだよ。何で怒っているんだ」


「私は家族が取られるのが気に入らない」


「家族が取られたのが気に入らないって.....意味が分からん」


スーパーにて。

良いから!私は気に入らないの!、と言ってくる一葉。

俺は???を浮かべながらその姿を見る。

一葉は俺をチラチラ見ながら買い物をしていく。

側にある、大根、ひき肉、とかを入れていく。


「.....何を作る気だ?」


「大根のひき肉との煮付け」


「.....ああ。美味そうだなそれ」


「でしょ!?私の特性の煮付けをとくと味わいなさい」


胸を張って言いながら一葉はニコニコする。

こんな性格じゃなかったんだがな、と思いながら苦笑する。

その顔を見てから少しだけ複雑な顔をした。

すると一葉は、でもお兄ちゃん。ゴメンね。何だか本当に。.....私.....のせいで、と顔を顰める。

俺はその顔の頭に手を乗せてから。


「.....一葉が優しいってのは分かったから。有難いよ」


「私って優しい.....訳じゃなかったから」


「.....今は優しいだろ?」


「.....そ、そういう所が.....」


困惑しながら赤面する一葉。

何だコイツは、と思いながらだったが。

俺は、コイツはコイツなりに変わってんだな、と思った。

それを考えつつ俺は、お前が何を考えているかそれははっきり分かる。だけどな。そんな事はお前が変わりたいって思う時は気にしなくて良い、と言い聞かせる。


「俺はずっとお前の頑張りをずっと見ているから」


「.....お兄ちゃん.....」


「.....俺は.....お前が例えば昔悪かったとしても。今のお前は良い子だから。昔の事なんて思い出しても仕方が無いと思うしな」


「.....」


転がす籠が止まった。

そして潤んだ目で俺を見てくる一葉。

艶かしい顔に俺はビクッとする。

それから、ど、どうした、と聞いてみる。


「私は.....お兄ちゃん。.....わ、私は.....」


「.....?」


「.....お兄ちゃんが兄貴として好きなの。.....だから誰にも取られたくない。.....他の娘のお兄ちゃんなんて嫌だから.....」


人が見ているにも関わらず。

俺に駆け寄って来る一葉。

そして俺を抱き締めてくる。

あまりの衝撃に俺は!?と思いながら一葉を見る。


「.....か、一葉。.....人が見ているから.....」


「お兄ちゃん。お兄ちゃんは私のお兄ちゃんだよね?他の女の子に惹かれるのが胸がキツイから」


「.....そりゃそうだろ。お前のお兄ちゃんだぞ俺は」


「.....有難う。不安になったから」


「.....そうか」


俺達は暫くそんな感じでそして離れた。

それから買い物を終えてから。

そのまま帰宅.....したら。


何故か知らないが俺の家の前に例の外車が止まっていた。

嘘だろオイ、と思いながら。

すると飯場花梨が駆け寄って来た。


「とーお兄ちゃん!」


「お、おう。どうしたんだ。飯場」


「私の名前って飯場だけど呼び捨ては花梨にしてほしいかも」


「.....じゃ、じゃあ花梨。.....どう.....」


そこまで言ってから。

ゾッとしてから背後見るとめちゃくちゃなドス黒いオーラが.....。

そこには一葉が嫉妬の眼差しを向けていた。

俺は冷や汗をかく。


「お、おう」


「.....ふーん。花梨さん、ね。私貴方のファンだけど嫌いになりそう」


「貴方は誰ですか?」


「私?私はお兄ちゃんの恋人です」


「.....」


「.....ファぁ!?」


こ、こ、コイツ!!!!?

俺は思いながら、一葉!どういう意味で言っている!?、と言うが。

一葉は、黙っていて、と威圧を掛けてきた。

怖いんですけど!?


「ふーーーーーん。それって嘘でしょ?」


「.....嘘じゃないけどね?」


「.....そうなんだー。とーお兄ちゃんは、嘘だ!、的な感じをしているけど?」


「まあその点は置いて良いけど。貴方は何の用事?」


「とーお兄ちゃんと約束していたから来たんですが何か?」


平然とそう言う花梨。

俺は赤面しながらその姿を見る。

花梨はスリスリしながら俺を見上げてくる。

実はね!とーお兄ちゃん!私.....とーお兄ちゃんの家に泊まるの!、と言ってくる.....ごぁ!!!!?

そんな馬鹿な!!!!?


「そ、そんなの認める訳無いでしょ!お義母さんとお父さんが!」


「認めまーす。だって私は昔からとーお兄ちゃんと関わり合いがありますので」


「.....!?」


「.....た、確かにそうだが.....」


一葉の顔がみるみる泣きそうなぐらいに悲しげな顔になっていく。

そして、そんなの聞いてない、と呟いてから。

そのまま家の中に入って行った。

俺は盛大に溜息を吐く。

それからニコニコしている花梨にチョップした。


「痛い!何?とーお兄ちゃん」


「.....泣かせる真似は良くない。花梨。絶対に良くない」


「.....ええ.....でもとーお兄ちゃんは私のものだから.....」


「それであってもな。.....言い過ぎだ」


言って良い事とやって良い事があるがそれも制限を掛けないといけない。

泊まるならそれでも良いけど.....でも仲良くしてくれ、とも言う。

花梨は顎に手を添えながら、とーお兄ちゃんが言うなら.....、と話す。

やれやれ的な感じで、だ。

そしてとんでもないサバイバルが始まった。

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