第7話 記憶喪失じゃないというのはバレてますよ?

「やあ。遠矢君」


「その節は大変でしたね.....遠矢さん」


その様な言葉を掛けてもらう。

2階建ての一軒家の玄関にて、である。

俺は首を振りながら雪色のご両親に挨拶をする。

頭を下げながら。


「その節はご迷惑をお掛けした感じで」


「いや.....そんなに何も起こらなかったから逆に良かった。でも.....その。.....記憶が無くなったんだね?」


「.....ですね」


「.....まあ人生はそういう事もある。.....気にしないでおこう」


そうですねあなた、と言いながら雪色のご両親の、佐藤達也(たつや)さんと佐藤繭(まゆ)さんは見合う。

俺はその姿に、変わらずだな、と思いながら苦笑しつつ。

雪色を見る。

そんな雪色は俺にニコッとしていた。


「遠矢。.....その」


「.....何だ?」


「私の部屋に先ずは行こう?思い出すのに」


「.....え!?いきなりお前の部屋か!?」


俺は慌てるが.....その手を握った雪色。

そして勢い良く上がって行く。

何というか俺は振り回される形だ。


それから俺は雪色の部屋にやって来る。

ここが雪色の部屋か?、と尋ねると。

雪色は、うん、と頷いた。

そして何を思ったか知らないが。

ドアに鍵を.....掛けた。


「.....え、ちょ。ゆ、雪色。何をする気だ」


「い、言ったでしょ。私と君はそれなりの関係だって」


「それなりの関係だから鍵を掛けるのはおかしいだろ。.....な、何をする気だ」


「エヘヘ。何をしようと私の勝手.....だよね?」


言いながら俺に迫って来る雪色。

初めっからこれがやりたかったんだな!?

俺は真っ赤になりながら逃げる。

だが足を滑らせて地面に倒れてしまった。

そしてその上に乗っかって来る雪色。


「私だって、ま、負けたくない」


「な、何が!?」


「.....」


「.....」


ジッと見つめ合う俺達。

目の前の雪色はあまりに艶かしい感じだった。

女子としての香りがする。

いかんこれ.....ヤバい!、と思った次の瞬間。

雪色が羞恥でか目を回し始めた。


「や、やっぱり無理ぃ!!!!!」


と言いながら俺から離れる。

そして咳払いをした。

それから鍵を開ける.....と。

そこには制服姿の女子が立っていた。


「お姉ちゃんナイス」


「.....お前.....雪子!?」


佐藤雪子(さとうゆきこ)。

中学3年生。

つまり雪色の妹に該当する。

結構可愛い容姿をしており長髪の黒。

そしてあざとい。


「量ったなお前.....」


「えへへー。遠矢お兄ちゃんが悪いんだもん。記憶を無くすなんて」


「もー!!!!!こんなの無理に決まってるよ!雪子!」


「ダメダメ。お姉ちゃん。その後は押し倒さないと」


「何を教えているんだお前は!」


そんな会話をしながら雪子を見る。

雪子は、私はお姉ちゃんに技法を教えているだけだよ?遠矢お兄ちゃん、と、てへっ、としながら言ってくる.....。

オイオイ、と思いながら雪子を見る。

すると、雪子。遠矢は記憶無いから、と説得する。


「あ、そうだったね。遠矢お兄ちゃん。私とエッチな事をしたのも忘れました?」


「な.....んだ.....と」


「馬鹿な事を言わないの!!!!!」


「アッハッハ!冗談だよ。お姉ちゃん。.....まあでも」


遠矢お兄ちゃんが記憶喪失なのはちょっと悲しいかも。

と言いながら苦笑する雪子。

俺はその姿に眉を顰める。


そして溜息を吐いていると.....雪子は、ねえ。遠矢お兄ちゃん。ちょっと来てくれない?、と言ってきた。

俺は?を浮かべて立ち上がる。


「.....ジュース取りに行こう。お姉ちゃんの分も含めて」


「え?.....あ、ああ。良いけど」


「有難う。遠矢お兄ちゃん」


雪子は笑顔を浮かべる。

だがそんな雪子の次の言葉で.....俺はギョッとした。

顔が少しだけ悪そうな顔になってこう言ってきたのだ。

で?お兄ちゃんは何時までその演技をするの?、と。

俺は相当に見開いた。


「何.....」


「.....だっておかしいよね?聞いていたにしても、お前.....雪子!?、とか量ったな、とか言いますか?普通初対面だとする相手に。それに何か記憶喪失にしては甘い気がします」


「.....」


「.....これ結構カマかけてますけど.....マジみたいですね」


「.....お前。それぐらいで気が付くなんざ.....」


私は結構鋭いですからね。

と言いながら俺をジッと見てくる雪子。

唾を飲み込む事しか出来なかった。

俺は目線をずらしながら、まあそうだな、と答える。


「.....この秘密はバラさない方が良いですよね」


「.....そうだな。出来ればそうしてほしい」


「じゃあその分の秘密料を叶えてくれても良いですよね?」


「.....どういう願いだ」


そしてリビングの前にやって来ると。

ニヤッとして言ってきた。

俺はゴクンとまた唾を飲む。

それから見ていると。


「私の友人がですね。.....貴方を好いています」


「.....え.....」


「.....その友人とデートして下さい。.....まさかノーとは言いません.....よね?」


「.....」


友人の名前は山下星って言います。

それでとっても可愛いその子がですね。貴方と星の仲を取り持ってほしいという話になっていまして、と言ってくる雪子。


それから、是非宜しくです♪、となった。

俺は青ざめながらも、分かった、と返事をする。

困ったな.....うん。

バレるとは.....。

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