寂しいけどね

第6話 幼馴染と遠矢

マフィンがクッソ美味しかった訳ですが。

俺はあまりの美味しさに考えながら、じゃあお兄ちゃん。また後でね、と去って行った一葉を見送り。

ホワホワした感じで俺は窓から.....外を.....あれ?

俺は目を丸くする。


「.....何だアイツ。行ったり来たりして」


窓の外。

そこには雪色が行ったり来たりしていた。

俺の家の前を、であるが。

???と思いながら俺は溜息を吐く。

そして階段を降りて行ってから玄関を開けると。


「っ!?」


「.....こんにちは。雪色さん。どうしたんですか?」


「あ、えっと.....えっと.....遠矢.....」


「.....?」


何時のも曰く。

俺は記憶が無いフリをしながら振る舞う。

すると雪色は髪を弄りながら、こっち来て、と言ってきた。

ん?、と思いながら俺は雪色に近付くと。

そのまま俺の手を引っ張られた。


「ちょ!?ウェ!?」


「此処じゃ邪魔されるから.....公園に行こう」


「.....あ、は、はい!」


俺はもどかしい返事をしながら。

そのまま公園まで導かれる。

そして雪色は深呼吸をしながら。

それから雪色は俺に対して向いてくる。


「遠矢。.....記憶.....何処まである?」


「.....記憶ですか?......そうですね.....俺の記憶ですが......そんなに無いです。人の顔とかは覚えていますけど」


「遠矢」


「.....はい?」


「敬語禁止」


「.....」


眉を顰める雪色。

やっぱり厳しいですね。

どの人でもそれは。

俺は思いながら、分かった、と切り出す。

それから、何をしに来たんだ?、と聞いてみると。


「.....遠矢の記憶を巡る旅をしたい」


「.....それはどういう意味だ?」


「.....私の家に来て」


「.....!?」


いや私の家に来てって.....。

俺は思いながらも困惑気味だったが、分かった、と返事をした。

それに雪色の自宅ならたまに行っていたしな。

俺は思いながら雪色を見ると。

雪色は泣きそうな顔をしていた。


「.....私との思い出.....本当に忘れちゃった?」


「.....そもそも俺はお前とはどういう関係だったんだ?」


「密接な関係だった」


「.....!?」


「.....き、き、キスとかする仲だった!」


嘘ばっかり!!!!?

俺は愕然としながらその顔を見る。

赤くなっているが.....嘘だ。


全部嘘である。

俺は真っ赤になりながらその姿を見る。

落ち着け。


「.....俺って君とキスをする仲だったのか?」


「.....う、うん。そ、そう」


「.....ふむ.....それじゃあ付き合っていたという事ですか?」


「う.....い、いや.....違うけど.....でも.....」


じゃあその.....エッチな事をする仲だったのですか?、と聞いてみる。

我ながら何を聞いているんだ、って感じだが。

するとボウッとマジに火力がヒートアップした様な顔を浮かべた。

それからダラダラと汗を流し始める雪色は。

口を尖らせて、そう、と答える。


「ウッソ.....」


「.....な、何なら.....む、胸.....揉んで.....たし.....」


「.....ハァ.....」


俺は流石にこれはちょっと、と真っ赤になって思いながら雪色を見る。

限界の限界までヒートアップして赤面している。

これ以上は無いだろう。

思いながら、それは無いでしょう、と告げる。

雪色は顔を上げた。


「.....お前にそんな事をするとは思えない。俺が」


「な、何を根拠に言い切れるのかな?」


「.....大切な女の子だったんだよな?なら俺がそんな事をするか?普通」


「.....」


雪色は目を丸くして。

そしてまた別の意味で赤くなった。

つまり恥じらいでは無く。

大切、に反応して完璧に真っ赤になる意味で、だ。

俺は真剣な顔をする。


「嘘でも言ったら駄目だよ」


「.....で、でも.....こうしないと.....」


「.....?」


「こうしない.....と.....私が活躍する場が無くなっちゃう.....記憶を取り戻すのが全部.....一葉ちゃんになっちゃう。.....そんなの嫌」


「.....な、何でそんなに拘るんだ」


「わた.....私.....は.....」


真っ赤になりながら俺の胸に縋って来る夢色。

そして俺を見上げてくる。

潤んだ瞳で、だ。


俺はその姿を見ながら赤くなる。

何でこんな事をするんだコイツ.....!?

こんな性格じゃなかったぞ昔は!?


「.....私は貴方が記憶を失ったのが嫌です」


「.....それはつまり俺が記憶喪失になったのが嫌って事?」


「一葉ちゃんは都合の良い様に利用しているけど.....私は貴方に全ての記憶を取り戻してほしいって思ってる」


「お前.....」


そして静かに寄り添う。

俺はその姿を見ながらズキッと心にくるものがあった。

悩む.....ものがあるな.....。

困った。

悪い事だって思っているけど。


「.....でも私1つだけ良かったって思っている事がある」


「.....え?」


「私自身が素直になれた。遠矢の記憶が無くなってから」


こんな事を言っちゃ駄目だけど.....リセットしたから。

だからこれから私を見ていて下さい、と言いながら俺を見てくる夢色。

俺はその姿にかなりドキッとした。

幼馴染なのに!?


「.....ねえ。遠矢」


「.....お、おう」


「.....何かあったら私に頼ってほしい.....かも」


「.....そうか。分かった」


そして俺達は暫くそんな感じで寄り添っていた。

それから俺達は夢色の自宅に向かう事になる。

因みに一葉には、夕飯の買い出し、と偽ってメッセージを送信した。

そうしてから直ぐに向かう。

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