第4話 赤くなる瞬間

どんどん一葉は色々な物を見せてきた。

例えばランドセルとか幼い頃のポシェットとか幼い頃の制服とか。

俺は苦笑しながら取っ替え引っ替えで出してくるその姿を見ているといきなり一葉が、何か思い出した?、と聞いてくる。

その言葉に手を広げて回答する。


「えっとな。すまん。何も思い出せない感じだ」


「.....そっか。.....そうなんだね。無理はしないでね。お兄ちゃんはお兄ちゃんなりにやってね」


「.....有難うな。にしてもお前は優しいな」


「優しいとかじゃないし!私にとって都合が悪いからやっているだけだし!!!!?大丈夫だし!!!!!」


真っ赤になる一葉。

都合が悪い、か。

でもさっきから思ったけどもコイツってツンデレじゃね?、と思ったのだが。


もろ反応がそんな感じだしな。

俺は思いながらも口には出さずに成り行きを見守っていた。

すると、あ、そう言えばお兄ちゃん。自分自身が高校生なのは覚えてる?、と聞いてくる。

俺は頷いた。


「ああ。まあそうだろうな。成り行きだけど自分は高校生だろうな」


「.....うん。で、その学校の後輩は私ってのは覚えてる?」


「何となくはな。だけど全部は覚えてないかもな」


「そうなんだね.....うん」


覚えている。

中学時代だけど。

あの日の事はハッキリな。

いきなりなんか知らんが教室のドアが開いて現れたのがコイツだったしな。


お兄。転校して来たし。宜しくね、とか言い放ったしな。

全くあの日は困ったもんだって思った。

そしてそれで去って行ったからもっと困ったもんだ。

中学生ながら困惑しか無かった。


「お兄ちゃん。私は後輩として可愛がってほしいかも。相変わらずの様に」


「え?」


「.....私は.....お、お兄ちゃんに可愛がられていたよ?」


ボッと赤面しながら言い放つ一葉。

何だよさっきから.....モニュモニュしてから気持ちが悪いし歯切れが悪い。

まるで喋りたくても喋れない感じだが。

うーん?


「あ。そうだ。いきなりだけどお兄ちゃん。.....私とデートしない?」


「本当にガチでいきなりだな.....って何!?」


「うんうん。いきなり。.....私とお兄ちゃんはそんな関係だったから。だから思い出すのも良いかなって思って。明日でも.....学校から帰る時にデートしようよ」


「.....!?」


何でこんな甘々なのか、と思ってしまう。

ハリセンボンの針が全部落ちたのか?って感じだ。

まるで何か不味い薬に砂糖でもぶっかけた様な感じだ。

曖昧さが残る感じの甘さ。

何だこりゃ。


「.....分かった。.....まあ良いけど.....」


「やった。.....じゃあ明日ね。約束」


「その前に1つだけ聞いても良いか。俺ってそんなにお前の良い人なのか?」


「当然良い人だよ。.....あの日。.....私を助けてくれたからね」


「.....???」


あの日って何時だ。

何時もコイツを助けていたから分からん。

3年前からずっと。


俺は思いながら一葉を見る。

一葉は髪の毛をクルクルと巻きながら、あの日はあの日、と口をモゴモゴしながら言ってからそれから、まあ良いからアルバム観ようお兄ちゃん、と話してくる。

俺はアルバムを見る。


「ほら。去年の旅行の写真」


「.....ああ。そうなんだな。旅行したんだな」


「そうそう。旅行したよ。それでお兄ちゃんは射的に1000円もぶち込んだの。何の為に?って感じだけど」


「.....」


それはな。

お前の為だったよ。

でもまあ.....今となっちゃ良い思い出だな確かに。

俺は思いながら一葉を見る。

一葉はクスクスと笑った。


「うん。とってもバカだったけど.....格好良かった」


「失礼だな。落とすか上げるかどっちだ」


そんな会話をしながら俺は、でも本当に信じられないよな、と思う。

だってあの一葉がこんなに至近距離で俺に寄り添ってからアルバムに指差している。

それもとても楽しそうに、だ。

俺は赤面してしまう。

何だか良い香りがするからもあるけど。


「うんうん。さて。じゃあこの部屋から移動しよう。お兄ちゃん」


「.....?.....今度は何処に行くんだ?」


「それは勿論。お兄ちゃんの部屋」


「.....」


俺は顎に手を添える。

そして思いっきり見開く。

あの部屋は.....ちょっとマズイ気がする。


エロ本とか.....その。

直したかな?

俺は一気に青ざめて不安になる。

すると一葉はケロッとしながら俺を見てきた。


「思い出すかもしれないしね。色々な事を」


「.....そ、そうだけど.....」


不安になりながらも移動を開始してから。

隣の部屋にやって来る。

それからドアを開けると、うわー。ラノベばっか、と言う。


そして、しかもエッチなラノベもあるし、と言葉を発する.....しまった。

片すのを忘れていたな.....ぐぅ。

赤くなる俺


「まあこんな感じだから。エッチな.....お兄ちゃん。何か思い出した?」


「.....うーん.....オイオイ。エッチって.....」


だってそうでしょ、と言いながら目の前を歩く一葉。

するとズルッと地面のカーペットでよろけた一葉。

俺は!と思いながら直ぐに、おい一葉!、と支えるが。

タイミング悪くそのままベッドに押し倒してしまう形になった。

俺は目の前の一葉を見る。


「.....」


「.....!」


俺達は見つめ合う形になってしまった。

一葉は俺を見ながらみるみる真っ赤になっていく。

それから俺は、す、すまない!、と真っ赤で飛び退こうとした。

のだが力付くで俺の頬に手が添えられる。

な、何だ。


「.....ど、どうしたんだ。一葉。ちょっと立ち上がれないんだが.....」


「.....」


愛しい、という感じで俺を見てくる一葉。

まるでやはり恋している様な。

俺は真っ赤の上の羞恥に真っ赤になる。


何だコイツ.....こんな顔が出来るのか.....!?

俺は一葉と数秒間見つめ合ってから。

手を払い除けた。


「あのな。こういう事は兄妹でやったら駄目だぞ.....」


「.....そ、そうだね。.....だけどお兄ちゃん。私達は.....」


そうだけどな。

でもまあ確かにそうなんだよ。

全く血が繋がってないんだ。


だからキスもその。

色々何もかもが出来る。

でもな.....。

俺は真剣な顔になる。


「.....でも駄目だ。そういうのは好きな人にやれ」


「.....」


「.....?」


起き上がる一葉は一瞬だけ悲しげに何かを呟いてからだけど直ぐに笑顔を見せる。

俺はその姿を見ながら顎に手を添える。

そして溜息を吐いた。

聞こえなかったが.....気持ちは.....うん。

まあそこそこに感じたから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る