第3話 貴方への想い

本格的なツンデレの様な義妹がベタベタのねっとり系の義妹になった。

そして俺の幼馴染が決意する。

いやお前何言ってんの、的な感じだろうけど。

記憶喪失ってこんなに大変だって思わなかったんだ許してくれ。

そうとしか言いようが無い。


「ここがお兄ちゃんの部屋だよ!」


「.....そ、そうか」


「こっちは私の部屋。アハハ」


「そうなのか」


ルンルンで部屋の中を案内する一葉。

俺は知らないふりをしていた。

何かその割とマジに頭が追いつかないから。

俺は苦笑しながら周りを見渡す。

でもその頭打ってもまともな記憶が無くならなくて良かった、と思いながら。


「どうしたの?お兄ちゃん?」


「.....いや。.....ちょっと色々な思い出してな」


「.....ああ。記憶喪失だからね。.....それでも若干でも思う所があるんだね」


一葉は言いながら少しだけ寂しげな感じを見せる。

すると一葉は、お兄ちゃんのお父さんの事は忘れてないよね?、と聞いてくる。

俺の親父の事か。

忘れている訳が無いけどな。

でも配慮はしないとな。


「大丈夫。そこら辺は.....しっかり覚えているよ」


「.....良かった。.....お兄ちゃんが何もかもを忘れたら悲しいからね。余計な事は忘れたみたいだけどねぇ。アハハ」


「.....」


俺は、そうか、と言いながら苦笑いで一葉を見る。

一葉は、じゃあ先ずは私の部屋に入ろっか、と言ってくる。

その言葉を理解するのに数十秒掛かった。


そして、は?、と目を点にして思いながら一葉を見てみる。

一葉は、まあその私とはそれなりの仲だって言ったでしょ?、と言いながらモジモジしながら赤くなって俺を見てくる。


え、ちょっと待って。

マジに待って。

意味不明なんですけど。

今までずっとそんな事無かったよ?3年間。


「.....え.....し、しかし.....お前さん?」


「何?私の部屋に来るのが嫌なの?.....それは傷付くかも」


「.....い、いや。そういうつもりじゃ無いけど.....」


「じゃあ一緒に来て?アルバム見ようよ」


「.....えっと.....」


いやちょっと待ってマジにおかしい!

本当に前の嫌った性格は何処ぞに吹っ飛んだんだよ!?

俺は真っ赤になりながら一葉に引っ張られて行ってからそのままドアの先に連れて行かれる。

そこは一葉の部屋。

ぬいぐるみが多く有る部屋だった。


「意外な感じだな。ぬいぐるみが好きなのか?」


「そうだね。でもこれらとかはお兄ちゃんに貰ったんだよ?」


大きなクマのぬいぐるみ。

確かに覚えているっちゃ覚えているが。

何というか初めて目にした時に、何これ?、とか言っていた癖に。


唖然としながらそのぬいぐるみを見ていると。

一葉はその棚に置かれているぬいぐるみにすりすりし始めた。

そして笑顔を浮かべる。


「私、すっごい嬉しかった。これをお兄ちゃんから貰って」


「.....そうなのか」


「.....うん。.....そんな事ももう覚えてないかもだけど」


「ま、まあそうだな.....」


俺は少しだけ複雑な顔になる。

すると一葉はハッとして立ち上がってからそのまま俺の手を引いた。

それから、私の一番の宝物があるの、と言ってくる。

俺は?を浮かべながら見ていると取り出した。

そして見せてくる。


「これは私の1番の宝物」


「.....これは.....何だ?.....手紙か?」


「うん。お兄ちゃんからぬいぐるみと一緒に貰った手紙だよ」


「.....!?」


確かに俺は3年前に初めて妹に手紙を贈った。

それは誕生日の手紙だ。

俺は驚きながら一葉を見る。

一葉はニコニコしながら俺を見ていた。

何故こんな感じに.....。


「聞いても良いか。お前はそんなに俺が大切だったのか?」


「.....私は全てで不器用だった。.....お兄ちゃんが大切だったのにね。今だから言えるけどね」


「.....!」


「だから記憶を失ったならそこからリセットしていく。.....私と一緒に思い出を積み重ねようね。お兄ちゃん。昔の」


「.....そうか」


それは.....いや。

気付かなかった。

こんなに大切にされている事に。


俺は考えながら不器用一葉を見る。

全く.....心底不器用だったんだな、と思う。

そんな一葉はニコッとしながら俺の手を握っていた。

そしてアルバムを取り出してくる。


「.....思い出す必要は無いけど.....でもそれなりには知って。色々な事を。良い機会だから」


「分かった。努力する」


「.....エヘヘ。それでこそお兄ちゃんだね」


「なあ。俺ってどんな性格だったかな」


「優しくてとても.....格好良い人」


オイオイ。

恥ずかしい事を平然とよく言えるなコイツ。

俺は考えながら赤面する。


それから、エヘヘ、と言う一葉を見る。

モジモジしながらにへらとして赤くなっていた。

私にとっては困った時に助けてくれるヒーローだよ、とも。

何だって?


「私はお兄ちゃんが好きだから.....その」


「.....え?それってどういう.....」


「.....えっと.....」


真っ赤になりながらワタワタする一葉。

お、おう、と思う。

俺は考えながら赤面で一葉を見る。


一葉は頬を掻く。

そして笑顔を浮かべた。

それから小さく呟く。


「でも少しだけそうと.....言ったらそうかも」


「え?は?何か言ったか?聞こえない」


「何でもない!」


全くお兄ちゃんはデリカシーに欠けるよ、と問い詰められる。

俺はその姿を見つつ、お、おう、と言葉を発する。

デリカシーってそこまで!?、と思ったが.....まあそれより優しいんだな、と思う。

口角が自然に上がる。


「.....や、優しくは.....無いけど.....」


「まあ優しいとは思うよ。お前は.....心から全てを想っていたんだな」


「も、もう.....」


「ハハハ」


正直.....心からコイツの事を見直したと思う。

考えながら一葉を見る。

一葉は両頬に手を添えながら真っ赤になっていた。


そして耳まで真っ赤にする。

それから俯く。

そんな一葉に声を掛けた。


「.....有難うな。一葉」


「.....」


「おい?一葉?」


「な、な、何でもない!!!!!」


赤くなりながら一葉は大慌てでアルバムを変えたりする。

俺はその姿を柔和に見ながら。

顎に手を添える。

イメージが本当に狂ったな、って感じだな、と思いながら。

そして苦笑する。

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