第2話 互いの想い

俺は義妹から馬鹿にされる人生を3年近く送ってきた。

というか義妹は俺を何故かしらないが見下しているので.....何だかそれなりに腹立つ人生であり何というか.....いつか絶対に義妹に何かで大きな最悪な悪戯でもしてやろうと思っていた。

そんな話が180度変わってくる。

それは俺がトラックに撥ねられてから、だ。


翌日、俺は精密検査を受けたが脳波とかに異常は無く。

そして記憶喪失は事故のショックでは無いか、という話になり。

治療は出来ないという話になった。

それから退院という形になる。


俺はそのまま退院の日を迎える事になった。

一葉も親も義父もかなりのショックを受けた反面。

その中で唯一、一葉だけが何か笑みが多くなっていた。

記憶を失って唯一喜んでいるのコイツだけじゃね?


「えっと。お兄ちゃん」


「.....はい。何でしょうか」


「うーん。やっぱり違和感があるよそれ。.....私は一葉って呼んで。敬語は無しだよ」


「.....お、おう。じゃあ一葉。.....なんで俺にそんなに優しいの?」


「や、優しい訳じゃ無かったけど.....」


モジモジモジモジ。

俺は苦笑の言葉を言いながら居ると。

車を運転していた義父の和人さんが、まあそうだな、と言ってからそして、優しいと言うかかなりの好き嫌いがあったよなぁ、とも話す。

すると一葉は、ちょっとお父さん!そ、そんな事言わないで!、と静止する。

その姿を見ながらクスクスと笑う母さん。


「でも良かったわ。記憶が無くなっても人物は説明したら家族とか認識してくれるからね」


「.....はい」


「全部失ったら悲しいものね」


「.....ですね」


「もー!ちょっと変!私にも敬語を使わなくて良いわよ。アハハ」


若々しい母さんと少しだけ年上の義父の和人さん。

この2人が出会ったのは3年前だ。

そして俺は一葉に出会った。


一葉は当初から俺に対して軋轢な態度をとっていたのだが。

その為に仲は良く無い筈だった。

のだが。


「えへへ。お兄ちゃん♪お兄ちゃん」


「.....」


何故こんなに甘くなっているのだ。

まるで綿菓子の様にベタベタ。

意味が分からない、と思いながら俺はこの様な演技を続けていかないといけない不安も心底に感じていた。

困ったもんだな、と思いながら、嘘を吐くのは良く無いってのがよく分かった気がする、と考えてしまう。


「ねえ。お兄ちゃん。今度一緒に付き合ってほしい所があるから一緒に行こうね」


「え?何処だそれ」


「えっと.....先ずはゲームセンター」


「.....ゲームセンターで何をするんだ?」


「プリクラ撮るよ。先ずは一緒に」


いやいやちょっと待て。

何でだよ、と思いながら一葉を見る。

一葉は、えへへ。記憶が無くなったなら記憶を積み重ねないと、と笑顔を浮かべる。

昔を思い出してほしい訳じゃ無いけどまあそれなりには、とも言う。


俺はその姿を見ながらマジに、おおう、と感じていた。

裏があるんじゃないか、とも思い始めていたのだが。

そんな感じも粉砕される感じだな。

甘い感じだ。


「はいはい。お2人さん。着いたわよ」


「そうだな。じゃあ先に降りていて.....ん?」


目の前を見ると.....。

そこに白いパーカーを纏っている女子高生が立っていた。

というかあれは俺の幼馴染の佐藤雪色じゃないか。


俺は思いながら一葉と一緒に車から降りてから、初めまして、と頭を下げる。

そんな俺の言葉にビクッとする雪色。

そして悲しげな顔をした。


「.....やっぱり記憶が無くなっているんだね。遠矢」


雪色の容姿。

髪の毛は黒髪のボブ。

そして清楚系の女の子だ。


かなりの美少女といえる顔立ちをしているが。

オドオド系だ。

俺はその姿を見ながら少しだけ胸がチクッとする。

するとジト目の一葉が切り出した。


「お兄ちゃんに何か用ですかー」


「こらこら。一葉ちゃん。そんな態度は駄目でしょ。全く」


「でも.....洋子さん」


「.....雪色ちゃん。何か御用かしら?」


「い、いえ.....その。.....その。記憶が無くなったっていうから.....心配げに見に来ました」


すまない。

俺も演技をしないといけないから。

思いながら心で涙を流しながら雪色を見る。


だがそんな雪色は俺の気持ちに反して。

悲しげな顔をしていたがやがて顔を上げてからそのままグッと握り拳を握る。

そして決意した様に俺を見てくる。

なんじゃ!?


「.....記憶が無くなったなら.....こ、これから私が色々教えてあげるから!」


「.....!?」


眉を顰めながら一葉は雪色を見る。

俺は、えっと。誰でも良いんですが雪色さんと俺はどういう関係ですか?、と聞いてみる。

すると雪色は俺に対して、私は幼馴染。だけど.....、と決意した様に見てくる。

俺は、お、おう、と思いながら雪色を見る。

正直こんな決意した雪色は初めてだな。


「私は幼馴染として遠矢を見てきた。幼い頃から!!!!!」


俺は絶叫する雪色を見ながら驚く。

何だコイツは.....!?

こんな性格じゃなかったのに。

俺は思いながら雪色を見る。


「うーん。まあその必要は無いよ。雪色さん。お兄ちゃんは私のお兄ちゃんだから」


「おかしいよそれ。一葉ちゃんはずっと遠矢を除け者にしてきたでしょ。.....私が導くから!全部!」


「.....」


「.....」


「.....あ、あの」


俺は困惑しながら手を挙げてその様子を見る。

何でこうなったのだ。

というかそもそも何故雪色はこんなに熱意で溢れている?

こんなな性格じゃないしおっとりしていた。

思いながら見ていると雪色は、今日は部活動の用事があるからこの立場を譲るけど、と言ってくる。


「私の遠矢に絶対に悪いことをしないでね。一葉ちゃん。貴方は本当に信用出来ないからね。3年も.....ずっと遠矢を.....」


そこまで話しながら雪色は少しだけ切なそうな顔をする。

俺はその姿を見ながら顎に手を添える。

そして考えるふりをしていると。

一葉は切り出した。


「私は.....お兄ちゃんがこうなったからには優しく接します。.....大丈夫なんで」


一葉は、へへん、的な感じで余裕ぶった様に話す。

それから一葉を睨む様にして雪色はそのまま早足で去って行く。

俺はその後ろ姿を見ながら、何でこうなった、と思う。

しかし本当に色々変わってきたな、とも感じた。

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