第4話:宇宙人が考えたさいきょうのおうちデートプラン【看病編①】


『つづいてはです~』


 お次は看病デートだった。


『それでは病んでください』


 俺が病人側のようだ。

 つうか病んでくださいってなんだよ。『ロキソニンはラムネ♥』とかってSNSに画像付きでアップすればいいのか?

 

『ベッドに寝っ転がるんですよう~』 

 

 エレクトは例のごとく銀色の床からベッドを取り出した。布団つきでマットレスもふかふかだ。


『おでこのタオル、かえましょうね~』


 もはやこれはデートなのか? という疑問とバブみを感じながら俺はなすがままになった。


『それでは失礼して……おでこと~……おでこを~こっつんこです~』


 こっつんこしてきた。なんという可愛さだ。それで逆に熱出るぞ。


『あやややや! まだこんなにお熱さんが~……たいへんです~しましょうね~。ふう~ふゆゆ~』


 熱心にふうふうと息を吹きかけてくるエレクト。

 これって熱冷めるの? 焚火たきびとかだと酸素送り込んで逆に燃え上がるけど。


『汗も拭いちゃいましょうね~』


 なんだか嫌な予感がした。


『はい、ばんざーい』


 条件反射的に俺の両手は天に掲げられ、そのままTシャツを脱がされた。

 

『上半身はひととおりし終わりました~』

 

 永遠にも思える時間だった。

 完全に俺の息は上がって肌は真っ赤だ。それは決してタオルの摩擦によるものじゃない。

 

『じゃあつぎは~……にいっちゃいましょ~』


 その台詞だけでなんだか淫靡いんびだった。令和ってすごい時代ですね。


『はいそれじゃあジンくん、180度開脚~』

 

 ばんざい~みたいなテンションだったけど無理無理! 股関節もげるって!

 つうか180度で開脚したら逆にズボン脱がしにくいだろうが!


『それじゃあして、していきますよう~。あややややや! なんだかここ、なってませんか~?』


 背筋に悪寒が走った。

 たしかに俺の全身は緊張と羞恥でカッチンコッチンだが、肝心の一部に関してはと信じたかった。

 というか信じないと物語が発禁物になってしまう。目的の理論書を手に入れるまでは強制終了うちきりだけは避けなければならない。


『ほら、やっぱりおっきくなってます~……ジンさんの、か・ふ・く・ぶ』


 まさかの内臓脂肪メタボの指摘だった。


「ち、ちがう……! 水分を多めに取ったから膨れただけだ」


 至極どうでもいい言い訳をしてみた。


『たしかに筋肉はちゃんとありますもんね~。男の人の身体って感じがして……しちゃいます~』


 俺だってドキドキしている。


『……っていう台詞をで読んだんですけど、このドキドキって心臓の鼓動のことで合ってますか~?』


 俺のドキドキを返せ! 合ってるよ!


『はい、それじゃあ次は……あ~ん』


 いつの間にかエレクトは〝病人食〟がセットされたちゃぶ台を床から取り出していた。


『あ、その前に……ふうぅ~、ふゆゆ~』


 最早恒例となった『ふうふう』でご飯を冷ましてくれた。『ふうふう』のたびにエレクトの薄桜色の唇が妖艶にのびたり縮んだりしている。俺の中のリトル俺も『ふうふう』と息を荒げていた。


『はい、今度こそ……ですよう~』


 俺はどうにか目の前のスプーンにピントを合わせて、ぱくり。

 かぶりついて、もぐもぐ、ごくり。なにこれ、うっまあああああああ! 今まで食べたことない味だ!


「うまいな、なんて料理だ?」


のスープです~』


「おい! どうして肝心なところで文字化けさせないんだ! 【陋吶?閼ウ縺ソ縺】です~とかで良かっただろうがチクショウ!」


『おかわりしますか~?』


「美味しいのでします!」


 このあといっぱいおかわりした。


 

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