第3話:宇宙人でも恋がしたい!
「いいか? 恋愛というものは本来こんな〝閉じた四角い箱〟の中でやるものじゃないんだ。初対面の男女がいきなり密室で
俺は思いっきし早口でまくし立てたが、
『こういうシチュエーションも
俺の500文字分の演説は無に帰し、エレクトとおうちデートをすることになった。
*
『ではでは……お願いします~』
「……へ?」
エレクトが俺に向き直って言った。
あ、これはあれか。俺が
そりゃそうだよな。こいつの星じゃ
つまりは俺が――恋愛の先生(赤文字フォント特大で強調)となって、エレクトをあれやこれやで指導するってことか。
『……うゆ~? どうして固まってるんですか~?』
身体の緊張が精神の緊張に繋がってカッチンコッチンになってることがバレた。こいつ、なかなか勘が鋭いな。
自慢じゃないが俺は恋愛経験は
『あやややや』
エレクトがなにかに気づいたようなオノマトペを出した。
『分かりましたよ~
事前資料? さっきからちょいちょい出てくるがなにか? 地球の書物ってことか?
たとえば〝人類の歴史〟とか〝純粋理性批判〟とか〝ヤン-ミルズ方程式と質量ギャップ問題〟とかの参考資料ってこと? まったく。勉強熱心な宇宙人だぜ。
『それでは――私が〝セメ〟で、ジンさんが〝ネコ〟ってことにしましょ~』
ロクな参考資料じゃなさそうだった。
*
ここからは地球人である俺・
エレクトは触覚をぴこぴこ動かしながら開幕宣言をした。
『うゆ~それでは早速〝ASMR耳かきデート〟というのをしてみましょ~』
「初手からニッチかつフェチズムの塊みたいなとこ突いてきたな!」
『ぽんぽん』
とエレクトは口にして自らの膝上を叩いた。
あ、これもしかして、そのお膝元にお邪魔するやつでしょうか。
『うゆ~、はやくきてください~』
ぷりぷりと唇を尖らせるエレクトに、俺の身体はさらにカッチンコッチンになる。(※再掲:身体の一部じゃないことに注意されたし)
そんな俺のことを彼女は半ば強引に(こういうギャップは嫌いじゃない)引き寄せて『はじめていきますよ~』と耳元で囁いた。
『それではお耳さんの掃除をしていきますよう~』
エレクトは例の技術で銀色の床から耳かきを取り出した。
『資料だと確か……まず最初に、
ひゃうんっ! と俺は飛び跳ねるところだったが、その拍子で鼓膜が突き破られるのもそこそこ嫌だったのでなんとか我慢した。
『可愛いお耳さんですね~』
つん、つん。さわ、さわ。
これはエレクトの指先が俺の耳を撫でる擬音。
どんどこ! どんどこ!
これは俺の心臓が爆発する擬音。
『あやややや、なんだかお耳さんまで真っ赤になってきましたね~。ふううううう。うゆ~、またびくっとしました~』
身体が熱を持って敏感になっている。すると彼女は俺の耳の中でなにやら見つけたようだ。
『あ、
大きなかぶは抜けません、みたいな感じに彼女は言った。
『あやや、今、
あくまで耳掃除の台詞である。
『んあっ! と、とれました~気持ちいいですう~』
おっきいのが取れた達成感でエレクトは気持ちよくなっていた。めでたしめでたし。
『つづきまして~』
「つづくの!?」
つづいた。
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