第26話 卵男対シフターズ 後編

 「皆、岩山の国に着いたら卵は茹でて妖魔には桃饅頭をぶち込むぞ!」


 「流石にあれを見たらキジーも、今回だけは敵の皆殺しは止めるよ!」


 「はい! ご主人様があの時、私にしてくれたみたいに私も人々を助けます!」


 「私も最近は、人間に親近感を覚えて来ましたからねできる限り助けます!」


 「救えるものは救い、討つべき敵は討つ! やりましょう!」


 「変身勇者達の心は一つ、良い話が書けるえ♪」


 ブレイブシフターズ達の乗った牛車が街道を爆走する、卵男の計画は急いで打破せねばならなかった。


 「ボス! 空に妖魔が一杯だよ!」


 窓から外の様子を見たキジーが叫ぶ!


 「行くぞ皆、ブレイブシフト!」


 「「ブレイブシフト!」」


 太郎達は変身し、牛車から飛び出して行く。


 「……頑張りなよ、あんた達!」


 牛車の中に残ったお園さんは、太郎達の無事と勝利を祈った。


 「キとミドは空を頼む、残る俺達は地上のを相手だ!」


 シロシフターが下知を出す、空には翼を生やした人型の異形の妖魔達。


 ミドシフターは翼を生やし、キシフターは雲に乗って空の妖魔を相手に。


 シロシフター達のいる地上からも、異形の人形の妖魔の群れが彼らの前に現れた。


 「ヘイ、なり立て妖魔共! こいつを喰らって、人間に戻れ~っ!」


 人間嫌いと言っていたミドシフターが、大量の桃饅頭を虚空から取り出しては空に放り投げ突風を起こしてばら撒いて行く!


 「へっへっへ♪ 私の雲は桃の色、水分を吸い込んでもらいます♪」


 キシフターは、術を使い桃饅頭を溶かした雲をどんどん大きく拡大させていく!


 「ぎゃあああ~っ!」


 「ぐわ~~~っ!」


 「がはっ!」


 「ごほっ!」


 キシフターとミドシフターの桃饅頭攻撃は、手遅れだった者は光の粒子となり散華して行き間に合った者は人間へと戻って行った。


 「キシフター! 戻った人達を拾って!」


 「オッケーですよ、ミドちゃん♪」


 ミドシフターが桃饅頭攻撃、キシフターが人命救助と分担をして空を覆っていた妖魔の群れは片付いて行った。


 「止まって下さい、ワオ~~~ン!」


 アオシフターが巨大な犬に変化して雄叫びを上げれば、地上の妖魔達はその衝撃で押し止められた!


 「流石だアオ♪ 頼りにしているぞアカ♪」


 「はい、アカシフターにお任せあれ♪」


 アオが動きを止め、シロとアカが桃饅頭を地上の妖魔達の口へと突っ込んで行く。


 戦隊と言う集団ヒーローの特性を活用した動きで、シロシフター達も敵を削る。


 「手荒で悪いが助ける為だ、こいつを喰らえっ!」


 シロシフターがゾンビのような妖魔の口に桃饅頭をねじ込めば、その妖魔は人間へと姿が戻った。


 「運が良いな♪ こいつら、桃饅頭が効く相手には即効で効く♪」


 人間に戻る者、戻らぬ者との別れ目は不明であったがブレイブシフターズは街から出てきた人々を助けられる限り助ける事が出来た。


 元に戻った人達をブレイブシフターズはひとまとめにして安置する。


 「悪いが、この人達はここに寝かせて街の方へ行こう!」


 「仕方なしですな」


 「我慢してもらいましょう」


 「助かっただけでも、運が良いと思っていただきましょう」


 入り口前に安置を終えて呟く戦隊、そこに追いついて来た牛車に全員が乗り込むと今度は街の中へと突入する。


 「街の中はそこそこ広いな、俺は中央を見て行くから皆は四方に散開して調査だ!」


 「「応っ!」」


 シロシフターの下知に仲間達は従い散開する、各自が妖気を探りながら探索し卵の状態の者は回収して中央広場へと合流した。


 「ここには噴水があるのか♪ 良し、これならここでゆで卵作戦二回目開始だ♪」


 広場には大きな噴水があり、そこに大量の桃饅頭と人が変化した卵を入れてアカシフターが噴水の水を熱した金棒を入れて茹でた。


 すると噴水に入れられた卵は、バリバリと破れて人間へと戻り回復して三々五々に散って行った。


 「やはり、こいつは卵の状態なら確実に変えられた人達を戻せる術のようだな?」


 「助かって良かったよ♪」


 「おっしゃ♪ 次は敵の本丸ですよ♪」


 「街の奥のお城から、あからさまに強い妖気が出てます!」


 「敵の

頭の居所がわかりやすいのは、攻め混むにはありがたいですな♪」


 「ああ、こっからは暴れる時間だ♪ 行くぞ皆♪」


 シロシフターが声を上げ、ブレイブシフターズは卵男がいるであろう街の奥の城へと向かった。


 城と言うが、地球出身のシロシフターから見ると西洋の宮殿のような物。


 ブレイブシフターズ達が乗り込むとそこには、紳士服を着た異様に横幅が広く太った禿頭の怪人卵男が待っていた。


 「来たか、君達が我々の邪魔をする者達かね?」


 卵男が問いかける。


 「その通りだ、我ら異世界戦隊ブレイブシフターズが貴様らブラックテイルの野望緒も存在も打倒する!」


 シロシフターが宣言した。


 「ふむ、ならば君達は女王アリスがこの世界を混沌の闇に沈めるのを妨げるか?」


 「やっぱり、狙いは国盗りだったよ!」


 卵男の言葉にミドシフターが銃を構える。


 「神々と一部の妖魔を含む、世の民で営むこの世界を蹂躙させはしません!」


 アカシフターも金棒を構える。


 「あんた達、外の邪悪な世界から来たよそ者ですね? この世界は私達のです!」


 キシフターも熊手を構えた。


 「ブラックテイル、殺すべし!」


 アオシフターも殺意を固める。


 「というわけで、我らの溝は問答では解決できん! さあ、勝負だ悪党っ!」


 シロシフターが軍配を降ろし、ブレイブシフターズ達が突進した!


 「では、諸君らも混沌の卵になり給え!」


 卵男が叫び、指を鳴らすとブレイブシフターズ達は虚空から出て来た黒い泥を被り卵に閉じ込められた。


 「ウキ~! 気持ち悪いですね! ですが、美猴の変身勇者を舐めるなです!」


 キシフターが自分を閉じ込めた卵を、内側から気合で破りロボシフトする。


 「ケーン! キジーはもう卵じゃないんだよっ!」


 ミドシフターも殻を破りロボシフトした。


 「この感じ、あの時と同じ! でも、今は違います!ワオ~~ン!」


 アオシフターも雄叫びを上げて脱出しロボシフトした。


 「私は、殿以外には染まらないっ!」


 アカシフターも爆炎と共に脱出してロボシフトした。


 「くそ! この感じ、母さんが殺された時みたいだがもうあの時の俺じゃない!」


 シロシフターも魂を燃やして殻を破ってロボシフト。


 「ほう、確かに私の術を破るとはやるな」


 卵男がブレイブシフターズ達を興味深そうに見る。


 「お前も殻を破って見ろ、ダイシフト前にレインボーバスターだ!」


 ソロシフターの下知で、ロボシフター達が集い武器を合わせてブレイブバズーカを作る。


 「「レインボーバスター!」」


 全員で叫び、シロシフターがブレイブバズーカの引き金を引くと、虹色の光りの奔流が卵男を撃ち抜いた!


 「よし、このままダイシフトだ!」


 「「応っ!」」


 シロシフターが叫び、ダイシフト音頭に合わせて合体して行くロボシフター達。


 「赤鬼の右腕、叩きのめします!」


 「犬の左足、踏ん張ります!」


 「猿の左腕、勝利を掴みます!」


 「雉の右足、蹴っ飛ばすよ!」


 「「完成、ダイシフター!」」


 五色の巨人、ダイシフターが完成する。


 そして、煙が晴れるとダイシフターの前には巨大なガマガエルの怪物がいた。


 「それがお前の正体か! 結界展開、改めていざ勝負!」


 「ゲコ~~~ッ!」


 ダイシフターが結界を展開し、巨大なガマガエルの怪物となった卵男を異空間に引きずり込んだ。


 「な、何ですかこのでかい土俵?」


 「結界は殿の記憶が生み出した世界、いざ取り組みと参りましょう♪」


 驚くキシフターに対して、闘志が燃え滾るアカシフター。


 「敵が来ます、こちらも行きましょう!」


 「ぶっ飛ばすよ~~ッ♪」


 足であるアオシフターとミドシフターも気合を入れて、自分達の背中にあるブースターを点火してぶちかました!


 巨人とガマガエルのぶつかり合いは、ダイシフターに勝敗が上がる。


 ダイシフターとの衝突でひっくり返された卵男、口から巨大な卵を吐き出して巨大なガーゴイルの妖魔達を召喚してけしかける。


 ガーゴイル達が、破壊光線を口から吐き出して来たのを耐えるダイシフター!


 「ムキ~ッ! そんな攻撃、私達に痛みは来ても傷は負わせられませんよ!」


 「その通りだ、モモビ~~~~ムゥ!」


 キシフターが叫べば、ダイシフターが桃型の光線を発射して反撃する!


 ガーゴイル達はモモビームを受けて爆散する! その直後、卵男が大口を開けて巨大な火炎弾を発射した。


 だが、火炎弾など物ともせず、炎の中からダイシフターが突進して卵男に上手投げを喰らわした!


 「悪いな、俺達に炎は効かん!」


 ダイシフターが叫び、投げ飛ばした卵男を追いかける。


 「鬼は火の子! 赤鬼の炎でお返しです! 焦熱地獄張り手っ!」


 ダイシフターの右腕となったアカシフターから真紅の炎が燃え上がり、巨大ガマガエルとなった卵男に炎が燃え盛る腕での張り手を繰り出した!


 「ゲコ~~~ッ!」


 その一撃を受けた卵男は、またも口から巨大な卵を吐き出しながら爆散した。


 「これで勝ちだよ♪」


 「まだです! イヌソニック、ワオ~~~ン!」


 勝ったと思ったミドシフター、それとは逆に勝負はまただと感じたアオシフターが口を開けて雄叫びによる衝撃波を卵へと発射する。


 「中々やるようだが、まだ終わらんよ♪」


 イヌソニックで破壊された卵から出て来たのは、灰色の肌に筋骨隆々な一つ目の巨人であった。


 卵男が巨人に変化して目から出した光線を、左腕となったキシフターが受け止めて防ぐ。


 「こいつは石化の呪詛ですか? 残念でした、ガンテツのおっさんの加護で石化は無効ですよ♪ モンキーライトニングラッシュ!」


 ダイシフターの左腕となったキシフターが、金色の雷を纏わせた拳を作り卵男に連続パンチをぶちかます!


 「うがっ! ごほっ!」


 ダイシフターのラッシュを受けて呻く卵男、その口からはもう妖魔の卵は吐き出せなかった。


 「どうやら、魂を乗り移らせる卵は打ち止めのようですな♪」


 「ボス~♪ 止めをお願い♪」


 アカシフターが卵男の変身と復活の仕組みを見破り、ミドシフターがそろそろ止めだと告げる。


 「ならば止めだ♪ ヤチオノオオタチ、大成敗っ!」


 ダイシフターの大太刀による必殺の一撃が、卵男を両断した。


 「これにて一件落着、大勝利♪」


 残心を決めたダイシフターの背後で爆散した卵男、これにて戦闘は終了となった。


 現実空間へと戻って来たブレイブシフターズ。


 「結局、ブラックテイルの本拠地を聞く間もなかったな」


 「そうですな、まあ尋ねても答えたかどうかはわかりませぬが?」


 太郎の呟きにアカネが答える。


 「大丈夫ですよ、また悪さしてる奴らを探して吐かせましょう♪」


 ウコンは気楽に答える。


 「そうですよ、きっとどこかで悪い事をしているはずです!」


 チグサも熱く語る。


 「チグサに賛成、あの卵の化け物が最後の幹部とは思えないよ!」


 キジーが叫ぶ。


 「ううん、あなた達の言葉で言う幹部なら卵男でおしまい♪」


 キジーの声に応えるように、青いエプロンドレスにハートの王冠と言う

怪しい風体の金髪の美少女が虚空から出現した。


 「何者だお前は!」


 何の前触れもなく、突然出現した美少女に叫ぶ太郎!


 「私? 私の名はアリス♪ ブラックテイルの女王かな♪」


 太郎達に対して、怪しい美少女であるアリスが名乗った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る