最終章:ブラックテイル征伐編

第21話 シフターズ、西へ

 「海だ~どんぶら~♪ 桃の船~♪ 敵は~いずこか~♪ さがし~て~る~♪」


 宝船の帆の上に乗り、キジ―が歌いなら目視で索敵をしていた。


 「さて、目指すは西の国だな♪」


 太郎が甲板の上に立つ、万能の宝船その名も『大桃号おおももごう』で海に出た異世界戦隊ブレイブシフターズはひとまずの目的地として西の国を目指していた。


 「ワルジーが住んでいたと言う場所ですな、果たしてどんな所やら?」


 アカネも太郎の傍で呟く。


 「敵の縄張りを聞き損ねたのが失敗でした」


 チグサが落ち込む、ブレイブシフターズは敵からアジトの場所などを聞くという根本的な考えが抜けていたのだ。


 「いやあ、てっきりどこかにそれらしい悪そうな城とかがある物だと?」


 ウコンが雲に乗り、自分達がいた東の国を探して見たが見当たらなかった。


 「いや、奴らの影がないのがわかって何よりだよウコン♪」


 太郎がウコンを褒める。


 「東にいないなら西を探すですな、あちらでも悪党を倒しながら探しましょう♪」


 アカネが笑いながら言う。


 「そうですね、私達の力が必要な人がいるかもですし♪」


 チグサも笑う。


 「ブレイブシフターズの名を、全国に轟かせてやりましょう♪」


 ウコンも気合を入れて叫んだ。


 「皆~♪ そろそろご飯の時間にしよ~♪」


 キジーが帆から降りて来る。


 「飯も大事だが、風呂もだな♪」


 太郎が呟く。


 「大将♪ 男に化けるんで、流し合いっこしましょう♪」


 風呂と聞いてウコンが提案する。


 「ウコンさん、ずるいです! それなら私だって完全に犬になります!」


 チグサが狡いと言い出す。


 「風呂にお供はいらん!」


 太郎が叫ぶ、だが海の上で開放的な気分になった仲間達はやる気だった。


 「まあまあ、ここは皆の結束を固めると言う事で♪」


 火の術で風呂の湯を作る担当のアカネが、仲間達の行動を良しとしたので太郎は諦めた。


 「行きますよ♪ わっしょい♪ わっしょい♪」


 ウコンが掛け声をかける。


 「わっしょい♪ わっしょい♪ お風呂だわっしょい♪」


 よくわかっていないキジーも叫ぶ。


 「ご主人様と、お風呂♪ わっしょい♪」


 チグサもノリノリだ、悪ノリであるが。


 「ささ、我らの神輿に担がれて下さいませ♪」


 アカネも仲間達と並び騎馬戦のように騎馬を作る。


 「ああもうこうなりゃ自棄だ! 行くぞお前達、風呂祭りだ!」


 太郎が仲間達の騎馬神輿に乗り、わっしょいわっしょいと船内へ担がれて行く。


 「あんた達、本当に毎日元気だねえ♪」


 これまでの旅の記録と演目の台本を書いていたお園さんが、太郎達を見て呆れる。


 海の上でもブレイブシフターズは、相変わらずのマイペースぶりであった。


 「いや~♪ 眼福♪ 眼福♪ さ~♪ 掃除を終わらせますよ~♪」」


 ウコンが嬉しそうに叫びながら分身を作り、甲板の掃除をして行く。。


 「はい、楽しいお風呂でした♪ ご主人様成分が漲ってます♪」


 チグサも笑顔で、答える。


 「チグサ~♪ あっちの方に、お魚の群れ発見だよ~♪」


 キジーが魚群を見つけた事を告げると、チグサは巨大な犬となって海に飛び込み漁に出た。


 「ふう、まあ何事もなかったから良いか」


 風呂上り、太郎は船の屋敷内にある畑で収穫作業をしていた。


 「うふふ♪ 至福の時でした♪」


 アカネも太郎と一緒に畑仕事をしている。


 「もうしばらくしたら、皆で一休みとするか」


 今日の夕食の野菜を取った太郎が呟く。


 「そうですね♪ お焼きをお茶菓子に作ります♪」


 アカネが笑顔で太郎に告げると、太郎はその笑顔に見惚れながら頷いた。


 だが、これから楽しく一休みとはならなかった。


 「大将! アカネ先輩! 敵襲です!」


 ウコンの分身が太郎達を呼びに来たので、二人が甲板に向かう。


 「ヒョホッホ~イ♪ デカい桃の船だ~♪」


 太郎達の前に、タコと人間が混ざった明らかに海賊船長と言う姿の妖魔と海賊船が現れた。


 「海の上のワンダリング悪党か、遊びにもならん! だが、ブレイブシフト!」


 太郎がブレイブシフトをすると仲間達も続く。


 「げげ、変身しただと! 俺は海賊キャプテン・ヒョウモン、お前達は何者だ?」


 海賊が太郎達に名を尋ねた。


 「名を問うたな? 運が良いな♪ 白桃の変身勇者、シロシフター♪」


 まずはシロシフターが名乗る。


 「我らの船旅の邪魔はさせん! 赤鬼の変身勇者、アカシフター!」


 アカシフターが名乗る。


 「海賊、殺すべし! 忍犬の変身勇者、アオシフター!」


 アオシフターが殺意を出して名乗る。


 「ウキキ♪ 財宝はいただきですね♪ 美猴の変身勇者、キシフター♪」


 こっちの方が海賊らしいキシフターが名乗る。


 「ヒャッハー♪ 雉の変身勇者、ミドシフターだよ!」


 ミドシフターもテンションが上がっていた。


 「「異世界戦隊ブレイブシフターズ!」」


 最後に全員でチーム名を名乗るブレイブシフターズ、海賊側は呆気に取られて動かなかったが戦隊の名乗りが終わると正気に戻った。


 「ちきしょうっ! あんなアホらしい格好の奴らに負けるか!」


 キャプテンヒョウモンが、骸骨の手下を呼び出して大桃号へと迫った!


 「キジー達のお家に、勝手に来るんじゃねえ! エアバースト!」


 ミドシフターの銃撃で生まれた風の弾丸が、骸骨共の一部を海へと沈めた。


 「粉砕ですよ♪ モンキーサンダー!」


 キシフターが雲に乗って空高く飛び上がり、雲から雷を降らせて敵の手下である骸骨のトループその二を粉砕した。


 「船に張り付いてますね、させません! スイトンストリームです!」


 アオシフターが大桃号に張り付いた骸骨を、海の水を操り海水の拳を作って打ち砕いて行った。


 「良し、敵船に乗り込むぞ! 皆、供をせよ!」


 「させるか、ヒョウモンスプラッシュ!」


 キャプテン・ヒョウモンがシロシフターに墨を吐き出した。


 「甘い、グンバイトルネード!」


 シロシフターがシフトチェンジャーで仰げば、吐き出されたタコの墨は相手へと返された!


 「うぎゃあっ! 目が、目が!」


 キャプテン・ヒョウモンが苦しみ悶える中、ブレイブシフターズが乗り込んだ!


 「手加減はしますよ、カナボウスマッシュ!」


 アカシフターが金棒で、キャプテン・ヒョウモンの腹を殴打した。


 「ぶひゅっ! 畜生め!」


 「さらに追撃、クマデショック♪」


 キシフターが背後から、キャプテン・ヒョウモンを熊手で突いて電撃を浴びせた。


 「うむ、アオとミドはこいつを殺す前に縛り上げて見張ってくれ♪」


 「オッケ~、ボス~♪」


 「了解です、ご主人様♪」


 アオとミドがシロの指示に従う。


 「私達は、船内の探索ですね♪」


 「捕らわれた人達がいるかも知れませんしね」


 キとアカも承諾する。


 かくして、ブレイブシフターズの強さを見誤ったキャプテン・ヒョウモンは制圧された。


 「さあ、ビリビリ流して行きますよ~♪」


 キシフターが敵の船内で熊手から電流を流し、残っている骸骨のクルー達を倒して行く。


 「良し、クリアだな♪ 俺とアカは要救助者を捜索するから、キはこいつらのあれこれを物色して来てくれ♪」


 シロシフターがキシフターに指示する。


 「お任せあれ♪ この船を丸裸にしてやりますよ♪」


 キシフターも了解した。


 「さて、こちらの質問に答えていただきますよ?」


 「情報を徹底的に絞り取ってから、ぶっ殺す!」


 「ど、どのみち助からねえ! こう言う場合は、情報を教えたら助けてくれるもんじゃねえのか妖魔だろ?」


 キャプテン・ヒョウモンがアオシフター達に尋ねると、彼の足に苦無が刺された。


 「キジー達は、悪党には容赦しないんだよ!」


 ミドシフターが銃口をキャプテン・ヒョウモンの腹に突き付ける。


 「では、ブラックテイルについて知ってますか? もしくは、帽子屋と言う妖魔の事?は」


 アオシフターが尋問を始める。


 「ブ、ブラックテイルは知らねえ! だが帽子屋って、気持ち悪い男の妖魔は西の国にいる! た、助けてくれ!」


 キャプテン・ヒョウモンが叫ぶ。


 「そいつは西の国のどこで、どんな悪さをしてるんだよ?」


 ミドシフターが続ける。


 「や、奴は今は西の港町の国で王子に化けてる! 王子は海の魔女に売った! 死にそうだ、 早く助けてくれ!」


 キャプテン・ヒョウモンが足から血を流しながら命乞いをする。


 「そうですか、海賊殺すべしですね!」


 アオシフターがキャプテン・ヒョウモンの眉間を苦無で刺した。


 「キジー達は悪党に容赦しないって、言っただろ?」


 そして最後にミドシフターが、キャプテン・ヒョウモンの骸を海へと投げ捨てた。


 「次の標的は帽子屋で決まりだな、王子の救出も必要だな? 手間がかかるが乗り掛かった舟だ仕方ない、悪党を退治するだけでなく人助けもしないと」


 大桃号に戻って来た太郎が甲板の上で仲間達と話し合う、キャプテン・ヒョウモンの船はダイシフターとなって木端微塵に粉砕した。


 「あの船に捕らわれた人達や、奪われた宝などはありませんでしたね」


 アカネが捜索の結果を告げる。


 「運が良いと言えば良いな、おかげで容赦なく船を潰せたし」


 「あのタコ船長も、碌な情報持ってなかったみたいだしね」


 太郎の言葉にキジーが続ける。


 「奴の宝の隠し場所は、宝探しは面倒なのでどうでも良いですね♪ しかし、奴が取引をしていた海の魔女ってのが厄介そうですがどう退治してやりましましょうかね大将?」


 ウコンが、船から物色した日記や書類を見ながら語る。


 「王子様も助けないといけませんね、心と体が無事な内に」


 チグサが真剣な顔つきで言う。


 「ええ、その王子と言う方もブラックテイルの被害者ですしね」


 アカネもチグサの言葉に同意する、ブラックテイル許すまじである。


 「キジーも段々そいつらがムカついて来たよ、許さない!」


 キジーもブラックテイルに怒りを燃やした。


 「海の魔女、トヨさんが何か情報を持っていないかですね?」


 ウコンがトヨを思い出す、海の女神なら海の敵について詳しいだろう。


 「よし、まずは海の魔女打倒の為にトヨさんの海底の城へ行こう」


 太郎が次の行き先を決める。


 「そして、海の魔女を倒して王子を救助したら帽子屋の討伐ですね」


 アカネが流れを言葉にする。


 「その通りだ、本音はもう少しのんびり海の旅と行きたかったがな」


 太郎が仲間達に本音を語る。


 「まあ、悪党退治も旅の思い出作りと楽しんでやりましょうぞ♪」


 アカネが笑顔を作り太郎に語りかける。


 「そうだよボス♪ しんみり何てつまらないよ、楽しく悪党をぶっ飛ばそう♪」


 キジーも微笑む。


 「大丈夫ですよご主人様、皆がいれば楽しくなります♪」


 チグサも太郎に微笑む。


 「大将♪ それじゃあ、今夜は景気づけに皆で宴会をしましょう♪」


 ウコンも良い笑顔で太郎に微笑んだ。


 「そうだな、俺達に沈んだ調子は似合わんな♪」


 仲間達の笑顔に太郎も笑顔で返す、ブレイブシフターズの次の戦いが始まった。

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