第22話 王子救出
巨大な桃が海中を進む、名は体を表すの言葉のままに船体を変形した大桃号は海の底に着いた。
「マジか、海の底に城下町があるとは!」
船内から海底の城下町を見て太郎が驚く。
「まさに、絵にも描けない美しさだね」
お園さんも感心した。
「いやあ、城が一つだけだった東の海底の国より栄えてますね♪」
ウコンがウキウキと笑う。
「お話の世界は本当だったんですね♪」
チグサはキラキラした目で見ていた。
「ボス~? あの街の住民って、お魚の妖魔達だよね?」
キジーが涎を垂らしながら太郎に尋ねた。
「街の住民を取って食うのは駄目だぞ、それよりも美味しい物を食べなさい」
太郎がキジーに釘を刺して桃饅頭を渡す。
「皆も、桃饅頭食い忘れないようにな? これを食べれば、術とか使わなくても海の中でも空気の心配とか無く自由に動けるようになるから」
太郎がお園さんも含めて仲間達に桃饅頭を配って行く。
「一応いただいておくよ、私は留守番するけれど」
「ウキキ♪ 大将のお気持ちごといただきます♪」
「御主人様と海のお散歩、楽しみ♪」
「トヨ殿に、お目通りできると良いのですが?」
「ボス~♪ お船から連絡入れてみたら?」
太郎から桃饅頭を受け取った仲間達が食べながら語る。
「そうだな、連絡して見るか? え~っと、こう叩くと?」
太郎が自分のシフトチェンジャーをポンポンと叩くと、虚空にディスプレイが浮かび上がった。
「うお! 何か、ウェブ会議の画面みたいなのが出た?」
太郎がディスプレイの出現に驚くと、ディスプレイの向こうからも驚いたトヨの顔が映った!
「どどど、どうしたんですか太郎きゅん? 城の外からもお船が見えましたが?」
「あの、実はご協力いただきたいことがありまして? お伺いしたいんですが?」
「オッケ~~~♪ 迎えの者達を寄こします~~♪」
トヨがハイテンションで、承諾して通信を切った。
「……うん、一応アポは取れたな」
太郎は自分を納得させた。
留守を頼んだお園さんを除いて船から出た太郎達は、鎧を着たカニ人間が率いる魚人間の部隊と遭遇した。
「変身勇者の皆様、お迎えに上がりました♪」
カニ人間がフレンドリーに応対する。
「どうも、宜しくお願いします」
太郎がカニに頭を下げると、仲間達も頭を下げた。
カニ達に先導されて、中央通りを進みトヨの城へと招かれた太郎達。
「竜宮城へようこそ、ブレイブシフターズの皆様♪ 海賊退治も素敵でしたぞ♪」
簡素な着物姿で出迎えたトヨが、太郎達にサムズアップをした。
「実は、その海賊退治の流れで御助力をお願いしたく参上いたしました」
頑張って丁寧な言葉を使う太郎。
「オッケ~ですよ♪ 太郎きゅんは、ヤチヨちゃんのお孫さんで推しですから」
トヨは即座に承諾した、太郎は彼女の友である自分の祖母に感謝した。
「わ~い♪ お刺身が一杯だよボス~♪」
軽く設けられた宴席、キジ―が出されたごちそうに喜ぶ。
「ありがとうございます、実は海の魔女と言う妖魔に港町の国の王子が売り飛ばされたという情報を得まして?」
太郎が頼み事の件で、トヨに軽く情報を出して見る。
そして、ウコンに目配せするとウコンがトヨに証拠の書類を差し出す。
「……ふ、ふぉ~~~っ! マジですかこの情報、ガッデムです!」
トヨが興奮してブチギれした。
「ど、どうなされたのですかトヨ様?」
アカネが驚きつつ、声をかける。
「太郎きゅん、今回の事件は全面協力します! 緊急事態です!」
トヨの興奮は冷めやらない。
「王子様とトヨさんは、お知り合い?」
チグサが首をかしげる。
「その通りっ! 港町の国の王子、ウーラたんは我が初恋の君!」
トヨが自分と王子の関係を語り出す。
トヨが亀の姿でお忍びで地上に上がった時、浜辺で悪ガキどもにいじめられたのを救ったのが港町の国の王子のウーラだとの事。
ウーラを竜宮城に招き、トヨは彼と交友を持った。
トヨは水の中でも自由に生きられる等様々な祝福を与えて、ウーラを地上へと帰し定期的に文通や遊びに出かけてと関係構築に励んでいたなどを語られる。
「最近は彼と連絡が取られないと思ったら、そんな事になっていたとは不覚!」
トヨが太郎達からの情報を得て悔しがる。
「何と、それは一大事っ! 全力でお助けしましょう!」
ウコンがトヨの話に食いついた。
「トヨ様の想い人、ならばお救いしてお二人の縁を結んで差し上げましょう殿!」
初恋云々と聞いてアカネも発奮する。
「恋する殿方の窮地、見過ごせませんよね!」
チグサもトヨに共感する。
「好きな人を助けるのは当然だよ、頑張ろう♪」
キジーもトヨに寄り添った。
「よし、それでは急いで飯を食って出陣しましょう!」
トヨの本気の全面協力が得られたので、太郎達は直ちにトヨに率いられて竜宮城から出陣した。
「海の魔女は、美少年達から声を奪い動きを封じて捕らえると聞きます!」
「それはもしや、俺が囮になれるとかでは?」
乗せてもらっている巨大鮫の上でトヨと語る太郎達。
太郎は自分が妖魔に好かれるなら囮になれるのではと提案した。
「殿、そのようなことは断じてなりませぬ!」
「そうですよ大将、大将はもう一人の体じゃないんですから!」
「ボスは誰にも渡さないし、キジ―達もボスからずっと離れない!」
「だめです、ご主人様と私達は一心同体です!」
「太郎きゅん? そう言う事は二度と言っちゃ駄目ですよ、太助さんも同じ事を言いましたが男の子ってばもう!」
仲間達からは止められて、トヨからも怒られた太郎。
「ごめんな皆? ていうか、祖父ちゃんも似たようなシチュがあったのかよ!」
祖父も同様な状況があったらしいと知る太郎。
「ご主人様、海底が揺れて何かが出て来ました!」
チグサが何かを発見する。
「あれは、デカイヤドカリですね!」
ウコンが現れた巨大ヤドカリを見て叫ぶ。
「よし皆、ダイシフトだ!」
太郎が叫び全員がブレイブシフトし、更にロボシフトを経てダイシフターとなる。
「ダイシフター、参上♪」
ドンと海底に降り立つダイシフター。
「何だい、何だい? 美少年の臭いがしたから捕まえに来たらこのデカブツは?」
巨大ヤドカリの貝から、黒い魔女のローブを纏った紫色の肌のフグのような顔をした海の魔女が現れた。
「……出て来ましたね海の魔女、ウーラたんや捕らえた美少年達を返しなさい!」
ダイシフターの肩の上でトヨが叫ぶ。
「げげ! 海の女神じゃないか、面倒くさい! 嫌だね、色んな所の美少年を集めてちびちび生気を吸って暮らすのが私の生きがいなんだよ!」
とんでもない生きがいを持つ海の魔女であった。
「……くっ! 何て退廃的な、美少年はお酒じゃありません!」
「そうだ、嫌だと言うなら力づくで奪還させてもらう!」
「ダイシフター、貝は壊さないで下さい! あの貝が奴の棲家です!」
魔女との会話は通じず、トヨからの指示を受けるダイシフター。
「くっくっく♪ 私は美少年の生気を吸いながら見物させてもらうよ♪」
海の魔女はヤドカリの貝の中へと入った。
「さ、させるか~~っ!」
トヨが飛び上がり、海の魔女を追って貝を蹴破って侵入する。
「マジか? ええい、ならば急いでヤドカリの中身だけ倒すぞ!」
「ははっ! トヨ様の恋の為に!」
「同じく恋する乙女として、協力しますよ!」
「恋の為なら女の子は、何だってできるんです!」
「キジー達も、ボスの為ならなんだってやってやるよ!」
「ありがとう、ではダイシフターアイズビーム!」
ダイシフターを構成する、赤白黄色青の五色のロボシフターの顔から一点集中で虹色のビームが巨大ヤドカリへと発射される!
だが、ヤドカリの方も鋏からビームを発射してビームとビームがぶつかり合い押し合いとなる。
「おのれヤドカリの分際でビームで相撲か! 押すぞ~~っ!」
ダイシフターが気合を入れてビームの出力を上げる、ビーム対決はダイシフターが勝利に終わり巨大ヤドカリの鋏が粉砕された。
「決まり手は、押し出し~♪」
ダイシフターが叫ぶ、巨大ヤドカリはダイシフターに恐れをなして海底を掘って逃げようとするが鋏がないので掘れず体を引っ込めた
「良し、次は生身戦に移行だ!」
ダイシフターが分離し五体の人間サイズのブレイブシフターとなって、先行して行ったトヨを追って海を進み巨大ヤドカリの貝へと突入した。
「ちいっ! まさかあのヤドカリの奴が負けた?」
貝の中、西洋の屋敷の玄関に似た場所で海の魔女が慌てる。
「その通りです、私が出資した変身勇者の皆さんがやってくれました♪」
トヨが追いついてドヤ顔をする。
「お、おのれ~! 女神の癖に、人間なんかに入れ込むんじゃないよ!」
海の魔女が叫んでから頬を膨らませ、口から針を吐き出して飛ばして来る。
「甘いです、カナボウバント!」
アカシフターが金棒を構えてバントで防ぐ。
「異世界戦隊ブレイブシフターズ、参上!」
シロシフターが名乗る。
「あなたの命もこれまでです!」
アオシフターが断罪を宣告。
「美少年はお婿さんにするもの、あんたは愛で方を間違えた!」
キシフターがベクトルの違うツッコミを入れる。
「うるさい、これが私の愛し方だ! こっちは、金払って買ってるんだよ!」
海の魔女がキレる。
「そんな、汚いワンウェイラブはノーサンキューだよ!」
ミドシフターもキレる。
「問答は終わりだ、覚悟しろ!」
シロシフターが叫び、ブレイブシフターズが攻撃をしかけた。
「うりゃ! クマデスパーク!」
キシフターが熊手から電撃を放射する。
「フグは鉄砲でシュートだよ! エアショット!」
ミドシフターが、海の魔女の腹に風穴を開けた。
「海の魔女、成敗です! クナイスラッシュ!」
そして止めはアオシフターが背後に回り、海の魔女の首を苦無で搔き切った!
こうして、海の魔女はブレイブシフターズによって倒されたのであった。
「ひ、ひいっ! 美少年達がシリンダー漬けにされてます! う、ウーラたん!」
トヨが進んだ先の部屋で見たのは、ずらりと並ぶ巨大シリンダーの列。
「これは何とも酷いですなあ、殿も囮作戦をしていたらこうなっていたかと?」
アカシフターがシロシフターを見る。
「確かに迂闊に囮とかはできんな、ヤドカリに止めを刺してからダイシフターでこの貝ごと竜宮城へ持ち帰ろう」
シロシフターの言葉に、アカシフターとトヨが頷いた。
この後、その言葉通りにウーラ王子と美少年達は竜宮城へと保護された。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます