第18話 シフターズ対ブレーメン 前編

 突如現れた妖魔達を退けたブレイブシフターズ。

 ひと仕事を終えた所で変身を解き、改めて浴衣デートとなった。


 「やれやれ、一時はどうなるかと思ったぜ」


 白い浴衣姿の太郎が呟く。


 「部隊も屋台も私達も無事、それが何よりです♪」


 ダイシフターの時と同じように、太郎の右側について微笑むアカネ。


 「うふふ、色んなお料理の香りがします♪」


 チグサは屋台から香る料理の臭いを感じていた。


 「ウキキ♪ 大将の左隣の守りはお任せあれ♪」


 太郎の左腕にくっついているのはウコンだ。


 「ボス~♪ お買い物はキジ―にお任せだよ♪」


 キジーが何を買おうかと、目を動かして屋台を物色している。


 「あまり稼いでないから、高い物は無しだぞ?」


 太郎がキジーに釘を刺す、先ほどの妖魔退治はただ働きだったので戦隊のお財布事情は余り潤沢ではなかった。


 「おう、戦隊の兄ちゃん達♪ 綿飴五本、お礼だよ♪」


 「大将♪ ありがたい申し出が、いただきましょう♪」


 屋台の人が声をかけて来たので、ウコンが綿飴を受け取り皆に配る。


 「うちの焼きそばも、人数分持って行きな♪」


 「妖魔じゃないタコ焼き五つ、美味しいよ♪」


 「これは、運が良い♪ ありがとうございます、いただきます♪」


 「太郎様、皆様から現物での報酬がいただけました♪」


 「わ~い♪ 食べ物がいっぱいだよ~♪」


 「うお♪ 皆さん、ありがとうございます♪」


 屋台の人達から次々と戦隊達に、現物での報酬が人数分支給されて行った。


 「流石に、これだけいただいてしまったら巡るどころではありませんね♪」


 アカネがクスクスと微笑む。


 「牛車に戻って、皆でいただきましょう♪」


 チグサも笑顔で提案する。


 「それじゃあ、屋台料理で宴ですね♪」


 ウコンがチグサの提案祈に乗る。


 「キジー♪ 楽しいならどこでも良い♪」


 キジーも同意した。


 「それじゃあ、牛車に戻って打ち上げだ♪」


 太郎達は牛車へと戻り、屋台料理を食卓に並べた。


 「「いただきま~~~す♪」」


 そして始まる小宴会、焼きそばにタコ焼きにお好み焼きとお祭りの定番のメニューを皆で味わうブレイブシフターズ。


 「はい、ボス~♪ タコ焼き~♪」


 キジーが太郎にタコ焼きを一つ食べさせる。


 「ありがとう、じゃあ俺からもお返しに♪」


 太郎からもキジーにタコ焼きを食べさせる。


 「ではお次は私の番ですね♪」


 キジーと入れ替わりに、次はウコンが太郎の元へとやってくる。


 「ウコン? 変な事しないで、ちゃんとあ~んしろよ?」


 太郎が釘を刺してウコンの出鼻をくじいた上で、彼女にもタコ焼きを食べさせる。


 「うう! 大将が厳しいけれど優しい、好き♪」


 大人しく太郎に従い、チグサと入れ替わるウコン。


 「私は、お好み焼きの食べさせ合いがしたいです♪」


 「良いよ♪ はい、あ~ん♪」


 チグサとは、互いのお好み焼きを切り分けて食べさせ合った太郎であった。


 「では太郎様、私の焼きそばを♪」


 「わかった、あ~ん♪」


 アカネに焼きそばを食べさせてもらう太郎、そうして太郎は仲間達と順番に絆を深めて行った。


 宴は終わり、片づけをしたら着替えて各自の個室で就寝。


 ……とは行かないのは、変身勇者の宿命か?


 「コッケコッココ~~~~ゥッ! 眠らせなんかしないぜ~~っ♪」


 安眠を妨げる大音声が響き渡る!


 「太郎様の為、美肌の為には睡眠が必要ですのに!」


 アカネが瞳に怒りの炎を燃やして飛び出す。


 「楽しい夢を見る予定だったのに、許せません!」


 チグサも静かに怒り燃やす。


 「ウキキ~ッ! 鶏は油で揚げてやりますよ!」


 ウコンはバチバチと体から放電しながら外へと出てくる。


 「ガッデム! キジ―達のお休み時間を邪魔する奴は誰だ!」


 キジーも銃を構えて飛び出した。


 「くそ、油断してたぜ! 皆ごめん、一緒に戦ってくれるか?」


 最後に出て来た太郎が仲間達に尋ねる。


 「ああ、太郎様! 勿論です、不埒な賊を退治しましょう♪」


 アカネが同意する。


 「敵を倒して、みんなで一緒にお休みしましょう♪」


 チグサも同意する。


 「合点承知ですよ♪ ご褒美は添い寝でお願いします大将♪」


 ウコンがちゃっかり要求する。


 「ボス~? 敵倒したらみんなで一緒にお休みしよ~?」


 キジーも太郎にねだる。


 「ああ、敵を退治したら皆で一緒に寝よう♪ ブレイブシフト!」


 「「ブレイブシフト!」」


 突然の夜襲に混乱するも、変身して立ち向かうブレイブシフターズ。


 犯人は舞台の上にいた。


 「ヘ~~~イ、グッドナイト♪ 俺様のシャウトはどうだい、シフターズ?」


 舞台の上に立つのは真紅のトサカが付いた白いフルフェイスのマスクに筋肉モリモリな白のパワードスーツを身に纏った怪人であった。


 「何ですか、あの鶏野郎! 白は家の大将の十八番ですよ!」


 キシフターがキレる。


 「ハッハ~♪ 俺の名は鶏、バンプアップチキン♪ 俺以外にもイカレタ仲間がいるぜ、カモ~~~ン♪」


 ブレイブシフターズ達を無視して、MCを気取って続ける鶏。


 「ニシシシ♪ 君達が時計兎の雑魚倒した退治屋? 私は笑い猫、ブラックテイルの幹部でこいつらのリーダーさ♪」


 猫を模したと思われれる、茶色いマスクとパワードスーツを纏った怪人が名乗りを上げる。


 「ブラックテイル、許さない!」


 ブラックテイルの名を聞き、アオシフターが怒る。


 「そっちの犬は青か? 嫌な色だな、私は黒犬」


 ぶっきらぼうに名乗って登場したのは、黒い垂れ耳犬を模したパワードスーツを纏った怪人黒犬。


 「最後は私、ドンキー様のお出ましだ♪ ロバのパワーを侮るなよ♪」


 トリを飾るのは、明らかにロバを模した茶色のパワードスーツを纏った怪人であるドンキーであった。


 「見たか、これが俺達ブレ~~~~メン♪ お前らを殺す地獄の使者だ♪」


 鶏がチーム名を名乗り、悪の戦隊ブレーメンが現れた。


 「名前の通り、無礼者の集まりですね? ブラックテイルとあらば、情け無用!」


 アカシフターが金棒を構える。


 「上等だよ、キジ―達が撃ち殺してやる!」


 ミドシフターも銃を構えた。


 「敵も戦隊、こちらも戦隊、合戦の開始だ!」


 シロシフターが軍配を振り下ろすと、戦闘の火ぶたが切られた。


 「ウキ~~~ッ! またお礼を戴く為に、屋台や舞台を守りながら戦いますよ!」


 私欲丸出しだが、祭りの会場を守ることを意識しながら動くキシフター。


 「……これだから猿は浅ましくて嫌い、私が殺す」


 「は♪ 悪党に尻尾振る犬よりマシですよ~だ♪」


 「……絶対殺す!」


 キシフターに煽られて怒り、両手から鋭い爪を出す黒犬。


 全身から黒煙を出しながらキシフターに襲い掛かる!


 「は! 体から汚い煙出してんじゃないですよ!」


 こちらも全身から黄色い電撃を放ち、熊手を振るい相対するキシフター。


 「犬~っ! くたばれ~~っ!」


 「嘘、早いっ!」


 ロバの本能に従い、アオシフターに襲いかかるドンキー!

 

 マスクが変形し噛みつきに行くドンキー、その戦闘スタイルは奇しくも同様の機構を持つアオシフターと被っていた。


 「噛みつき勝負ですか、負けませんっ!」


 アオシフターも、人狼のような形状にスーツを変形させて、ドンキーの攻撃を避けつつこちらも敵を噛みつきに行った。


 「コケコッコ~♪ 俺様の相手は赤鬼か、鬼退治してやるぜ♪」


 アカシフターと対決しようとする鶏、だがそうはならなかった。


 「俺が相手だ、シロシフターキック!」


 「と、殿っ!」


 「ワッツ! 白い奴か?」


 シロシフターがキックで二人の間に割り込んだ。


 「アカはミドと笑い猫を頼む!」


 「……え? 殿、どういう?」


 何故割り込まれたのかわからない、アカシフターと鶏。


 「ああもう! 俺の妻なら、俺以外の男の相手なんかするな!」


 シロシフターが叫ぶ。


 「か、かしこまりました~~~っ♪ 殿の愛で燃えて来ましたっ!」


 アカシフターはその言葉でバフが掛かり、笑い猫へと向かって行った。


 「ヒュ~♪ その男気だけは認めてやるぜボーイ、かかって来な♪」


 「焼き鳥にしてやる~っ!」


 シロシフターを挑発する鶏、シロシフターも怒りを燃やして軍配を振るった。


 「ニシシシ♪ どうしたのかな小鳥ちゃん、逃げてばかりじゃ勝てないよ♪」


 からかうように攻める笑い猫、ミドシフターは何故か黙って回避に徹していた。


 そこにアカシフターがやって来て、笑い猫に金棒を振るう!


 「うにゃ! 加勢に来るなら白い奴じゃ?」


 アカシフターの攻撃を受け止めながら、笑い猫は自分の予想が外れた事に驚いた。


 「バ~ッカ♪ キジーは最初から、これが狙いだったんだよ♪」


 アカシフターと一緒に攻撃に転じるミドシフター、アカが近接自分が射撃と遠近両方を組み合わせた連携攻撃で攻めて行く。


 「くっそ~! 私を嵌めるとは!」


 悔しがりながら、二人を相手にする笑い猫。


 奇襲をかけたのはブレーメンであったが、ブレイブシフターズには通じなかった。


 「その煙、ただの人間には毒でしょうが妖魔には効きませんプラズマ消毒!」


 「ちい! 裏切り者がっ! ぎゃあっ!」


 キシフターから発せられたプラズマ弾!


 その直撃を受けた黒犬の動きが止まる。


 「捕まえたっ!」


 ドンキーがアオシフターの首に噛み付いた?


 だが彼女が噛んだアオシフターが丸太に変わる。


 「変わり身の術です、あなたよりもご主人さまと遊びたい!」


 そう言うとアオシフターは、ドンキーの膝裏に手裏剣を突き刺した。


 「焼き鳥、唐揚げ、鍋! 倒して皆で食ってやる!」


 「妖魔を食うだと? く、クレイジーすぎる!」


 シロシフターの軍配と、鶏の拳が激しく打ち合う。


 鶏は自分と互角に渡り合う相手がいた事に驚愕していた。


 「ちいっ! 二人がかりとは正義の味方を気取る癖に卑怯な!」


 笑い猫が、揺さぶりをかけるつもりで叫ぶ。


 「戯言を! 私が従うのは我が殿の正義、貴様の理屈など知らん! 赤鬼の怒りを受けて見よ、カナボウバーニング!」


 アカシフターが金棒に炎を灯して振るう!


 「キジー達はボスの味方♪ お前の正義の味方じゃない! エアショット!」


 ミドシフターも笑い猫の言葉に動揺などせず銃撃する。


 「畜生、何なんだこいつら? お前ら合体するから集まれ!」


 笑い猫から笑いが消えて、ブレーメンに召集を掛ける。


 戦隊同士の戦いの第二ラウンドは、巨大戦へと移行しようとしていた。

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