第四章:笑い猫退治と宝船編

第16話 辿り着いた港町

 「と言うわけで、俺達はダイシフターになれるようになりました♪」


 カタカタと揺れる牛車の中で、太郎がお園さんに語る。


 「うん、私も見させてもらったけれどあれは舞台で出すには考えないとね」


 お園さんは、ロボシフトやダイシフターを舞台でどう出すかなどに悩んだ。


 「祖母ちゃんが、舞台用のダイシフターの人形を用意してくれてるのでその辺りはしばしお待ちを♪」


 太郎が悩むお園さんに答える。


 「そうかい♪ 大道具を用意してくれるとは、神様が谷町だとありがたいねえ♪」


 お園さんが喜び、新たな演目の台本を話を書き出した。


 「大将♪ 見て下さい、海が見えてきましたよ♪」


 太郎太とお園さんがそんなやり取りをする中で、窓から外を見たウコンが海を見てはしゃぐ。


 「あれが、港町というものなんですね♪ 実物は初めて見ました」


 山の麓の村育ちのチグサが感動する。


 「海ですか、我らもいずれ船がいるやもですな♪」


 同じく山村育ちのアカネも、海を見ながらはしゃぐ。


 「ボス♪ 時間があれば皆で海で遊ぼうよ~♪」


 キジ―が太郎に海遊びの提案をした。


 「仲間の福利厚生は大事だし、頑張って時間を作ろう♪」


 太郎がキジ―の言葉に同意する。


 「それじゃあ遊ぶためにも、港町でひと稼ぎだねブレイブシフターズの皆♪」


 お園さんが笑顔で言うと皆が応と答えた。


 そしてブレイブシフターズ達を乗せた牛車は、潮風が香る港町へと辿り着いたのであった。


 「ぶ~れいぶ~♪ しふた~ず~♪ 犬猿鬼雉引き連れて~♪ 悪い奴らをやっつける~♪」


 キジ―が牛車の屋根の上で歌いながら、ブレイブシフターズの宣伝をする。


 「何だ、あのでかい牛車は?」


 「屋根の上で歌っている子は旅芸人か? 退治屋か? 何か妙な奴らが来たな?」


 「緑の髪の子の歌は、可愛い声で楽しそうだねえ♪」


 彼らを見た街の人達がざわざわと語り出す。


 ある程度街を進めば牛車を広場に止めて、全員が降りて人々の前に姿を現す。


 「さあさあ皆さまお立合い♪ お園一座と、退治屋ブレイブシフターズのお芝居だよ~♪ 海岸舞台で公園をいたしますので、どうぞお越しを~♪」


 地球人が見たら、演歌歌手かと思うような青く綺麗な着物に身を包んだお園さん。  

 綺麗な声で調子の良い口上を述べると、周囲の見物人達は拍手を上げた。


 「嘘! 何で、あの力士みたいな体から綺麗な声を出せるの♪」


 「よ♪ 綺麗なお柄のお姉さん、太っ腹♪」


 そんなお園さんを囃す声が見物人達から上がり、場が暖まったと判断する太郎達。

 今度は太郎達が横一列に並び、ブレイブシフトをして見せた。


 「「我ら五色の変身勇者、異世界戦隊ブレイブシフターズ!」」


 変身したブレイブシフターズの背後で、五色の爆発が起こる。


 「おお! すげえ変化の術だ♪」


 見物人の誰かが叫び、拍手が起こる。


 そんな目立つ事をしていると、地元の悪党が目を付けてやって来た。

 時代劇のごろつき共と言わんばかりの粗末な着流しの悪党達だ。

 


 「どけどけ! おうおうおう、家の縄張りで何っ!」


 おらおらと見物人を威嚇して出て来た着流し一丁の三下。

 だが彼は、言いたい事も言い切れなかった。

 ミドシフターに撃たれ、眉間に風穴を開けられて絶命したからだ。


 「出たな悪党、芝居の前にゴミ掃除だよ♪」


 ミドシフターが銃を撃ち宣告する。

 いきなり銃殺されるとは思いもよらなかったのか、悪党達の動きが止まる。


 「さあさあ御見物の皆様、悪党の一人が倒されました♪ これより、ブレイブシフターズの悪党退治の腕前をとくとご覧下さい♪」


 お園さんが、語りを入れる。


 「出たな悪党ども、我が炎を受けて見よ!」


 アカシフターが、調子の良い声でマスクから火炎放射を行い悪党の火だるま作る。

 ブレイブシフターズ、悪党は人間であっても容赦しなかった。


 「ひ、ひいっ! な、何だこいつらは! 皆、逃げろ!」


 仲間の一部が一瞬で焼き殺されたのを見て、逃げようとする悪党の手下。

 だがそうは問屋が卸さなかった、赤の次に動いたのは青い戦士だ。


 「悪党は逃がしませんよ、成敗です!」


 アオシフターが素早く動いて、逃げようとする悪党の手下を苦無で首を切る。


 「私らは役者であり退治屋、悪党共はおひねりです♪」


 青の次は黄色とキシフターが、熊手を当てた敵に電流を流して仕留める。

 ざっと見で、銅貨程度の賞金額の命の悪党でもお金はお金と値段を見極める。

 そして、容赦なく敵の命を狩るキシフターであった。


 「さて、最後は俺だ! 何処の悪党かは知らないが、成敗!」


 最後にシロシフターが、悪党の頭目らしき相手の頭を軍配で叩き潰す。


 「いよ♪ ブレイブシフターズ♪」


 お園さんが司会らしく合の手を入れる。


 ブレイブシフターズが超人的な動きで悪党達を退治したのを見て、見物人達は拍手を上げた。


 「凄え、悪党達をあっさり壊滅させちまった♪」


 「良いぞ、退治屋♪」


 「街の掃除ありがとう♪」


 見物人達から歓声が上がった。


 「ご声援、ありがとうございます♪ 悪党退治に妖魔退治、ブレイブシフターズはお芝居以外でも皆様のお役に立ちます♪ 何卒、公演も宜しくお願いいたします♪」


 お園さんが締めるとまた歓声が上がる、ブレイブシフターズはこの港町でも人々に腕前を見せつける事に成功した。


 だが、彼らは自分達を静かに監視している野良猫に気付かなかった。


 「ヤバい退治屋がやって来たな、笑い猫様やブレーメンの皆様にご注進!」


 野良猫は、変化を解いて二又尻尾の猫の妖魔になると路地裏へ駆けて行った。


 「大将、取り敢えずこの街でもブラックテイルについて調べますか?」


 街の定食屋の中で、食事の箸を止めてウコンが太郎に尋ねる。


 広場で退治した悪党達の命代は、ブレイブシフターズの昼飯代となっていた。

 戦隊全員が、白飯に焼き魚にみそ汁と定食を食えるだけの稼ぎにはなった。


 「ああ、さっきの悪党達は関係なさそうだったけど調べよう」


 太郎もみそ汁を置き、ウコンの言葉に答える。


 「ブラックテイル、もしいたとしてこの街で何を企んでいるやらですな?」


 サービスの緑茶を一口飲み、アカネが考え込んだ顔をしながら語り出す。


 「人心を惑わして、世を乱そうとしているんだと感じました」


 綺麗に焼き魚を箸で切り分けたチグサが、自分が敵に対して感じた事を口に出す。


 「そうして、世が乱れた所で大暴れして国盗りをするんだよね」


 焼き魚を一気飲みしたキジ―が、チグサに続いて物語撫でで得た知識から語る。


 「まあ、行きつく先はそうなるだろうな? それをさせないために俺達がいる」


 ワルジーや時計兎などと、これまでの敵と対決した記憶を思い出して太郎が言うと仲間達が頷く。


 「ですな、我らや子らが楽しく暮らせる世にしたいですし♪」


 アカネが微笑む。


 「そうですね、私とご主人様との子供♪ 八人は産んで、忍法や剣術などを教えて子犬戦隊とか作りたいです♪」


 チグサが脳内で、自分と太郎に似た八人の犬耳美少年の戦隊と言う妄想をする。

 そして、頬を染めながら妄想が生んだ自分の理想を語る。


 「大将との子供、私もイケメン子猿軍団ができる程が希望です♪」


 ウコンもきゃ~と言い、身をよじり恥ずかしがりながら呟く。


 「キジーも五人は欲しい♪」


 キジ―は特に妄想などはせず、天真爛漫に語る。


 「……えっと、それについてはブラックテイルを壊滅させてからだな」


 仲間達に見つめられて、太郎が恥ずかしがりながら答える。

 仲間達の好意を太郎は受け入れ、太郎自身も仲間達に好意で返すようにしていた。


 「大将、私達の事をお嫁さんとして受け入れてくれるんですね? 本当ですね?」


 ウコンが食い気味に自分の顔を太郎に近づける。


 「ウコンさん、ご主人様は約束を違えるような人じゃありませんよ♪」


 チグサは微笑みを太郎に向けた。


 「そうだよ♪ ボスはずっと、私達のダーリンだよ♪」


 キジ―も笑顔だ。


 「太郎様は、私達をきちんと愛してくれてます♪」


 アカネは、この事に関してはブレる事はなかった。


 「え~? 私は心配ですよ、大将ほど妖魔に好かれる男はいません!」


 ウコンは、太郎が他の妖魔の女に奪われないか不安であった。


 「待ってくれ、俺は皆の事は大事だし絶対離れたくないから! しかし、俺はそんなに妖魔の好みなのか?」


 人間の女子にモテた事がないので、太郎は何故自分が妖魔に好かれると言うのかわがからなかった。


 「ご主人様、良い臭いがします♪」


 人間から妖魔になったチグサが答える。


 「他にもお顔とか、大将から漏れ出てる暖かくて心地良い魔力です♪」


 ウコンが答えるとキジ―も同意の頷きをした。


 「オーガから見ても良いお顔と、主神であるヤチヨ様の神気がたまりません♪」


 アカネも太郎の魅力を語る、どうやら自分には人間には感知できない魅力があるらしいとこの時に太郎は自覚した。


 そんなぐだぐだなブレイブシフターズが定食屋で一休みしている中、闇の中に集う四つの影。


 「ニシシ♪ 手下から報告があった、どうやら時計兎を倒した奴らが来た♪」


 影の一つはブラックテイルの幹部、笑い猫。

 猫の姿から、茶髪のボーイッシュな美少女に変化した笑い猫は笑う。

 茶色い鹿打ち帽子に、茶色いインバネスコートと言う姿は探偵のようだ。


 「……うへえ、そいつは厄介だなあ? 相手は人間なのかな?」


 もう一つの影は、黒髪にロバの耳を生やした気だるげな目つきの細身の美少女。

 着ている服装は、茶色の上衣に茶色のスカートに黒のブーツ。


 「フン、ロバは臆病だな! 例え相手が何者であろうとも、俺達ブレーメンならやれるぜ!」


 三つ目の影は、白いタンクトップにトサカの如く逆立った赤いモヒカン男。


 こちらは目つきが鋭く、ムキムキな筋肉が自慢なのかサイドチェストのポーズを取って気合を入れて仲間達にやる気をアピールする。


 「鶏は脳筋すぎるよ、頭を使おうか? まあ、取り敢えず様子見だね」


 最後の影は、黒のドレスを着た褐色で黒毛で黒い犬耳の眼鏡の美少女。


 四人共、元の動物の姿と同じ色のファッションで固めた怪しい奴らだ。


 このチームはブレーメン、ブラックテイルに属する妖魔で構成された悪の戦隊だ。


 チームの主な仕事は暗殺、あちこちを移動してブラックテイルの邪魔になりそうな腕の立つ退治屋などを標的にして始末して回る遊撃の戦隊。


 ブレイブシフターズに狙いを定めたブレーメン、港町を舞台に正義と悪の戦隊がぶつかり合おうとしていた。

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