第14話 猿の左腕は剛腕、黄のロボシフト!
「いよいよ私の出番ですね、待ってました♪」
自分の出番がやって来たウコンが喜ぶ。
「ほほう、やる気満々じゃなあ猿よ?」
ガンテツがやけに乗り気なウコンに、シフトチェンジャーを渡しつつ彼女の事を気に掛ける。
「そりゃあ勿論、私も新たな力には興味がありますし♪ 何より仲間や大将と合体できるってのが魅力的ですよ♪ もう私は一人じゃない、これは強い♪」
ウキウキと、自分の熊手型の変身アイテム兼武器を受け取るウコン。
「嬉しそうに木に登っとるな、じゃが木登りは降りる時の方が大事だと教えてやろうかの?」
調子に乗るウコンにガンテツがやれやれと溜息を吐きながら、指を鳴らす。
すると、ウコンとガンテツは暗雲が立ち込める岩山だらけの場所に移動していた。
「模擬戦の場所は岩山とは何だか懐かしい感じですねえ? あれ、私はいきなりタイマンですか?」
周囲を見回しつつシュッシュと拳を振るウコンと、向き合うガンテツ。
「ふむ、では坊主を呼び出してやるか」
ガンッツが指を鳴らすと虚空から太郎が現れた。
「やや、空から大将が降って来た! キャッチ!」
ウコンが雲に乗り空を飛んで太郎を受け止める。
「ありがとう、ウコン♪」
ウコンに礼を言う太郎。
「いえいえ、愛しい人が空から降ってきたら受け止めるってもんですよ♪」
地上に降りて、太郎を降ろし安全を確保するウコン。
「ふむ、お主も随分と変わったのう♪」
ガンテツがウコンに感心する。
「はっはっは♪ 大将のお陰ですよ、そして愛する大将が傍で見ててくれる事で私のやる気と元気がアップして来ました! これぞ愛の力、ウキ~~~♪」
バリバリと全身から放電するウコン、やる気は満ちていた。
「坊主、あの猿をここまで変えるとはお主は祖父以上のたらしじゃな?」
ガンテツがウコンを見て唖然となり、太郎を見てまた溜息を吐く。
「いや、そう言われても? でも、ウコン頑張れ♪」
ガンテツの言葉に困りつつ、ウコンを応援する太郎。
「大将の応援で私のテンションが更にアップ♪ さあ、こちらのバフは盛り盛りのてんこ盛りでっす♪ 模擬戦でも何でも来やがれです、ブレイブシフト♪」
ウコンがキシフターに変身する。
「さらにここから行きますよ、ロボシフト♪」
ウコンが金色に輝く熊手を頭上に掲げると、天から彼女に稲妻が落ちてくる!
そして、ロボシフトで変化した新たな彼女の姿は一風変わっていた。
両肩、両肘、両の拳、両膝、そして銅と腰回りに金色の岩のような装甲が装着された黄色い猿型ロボと言う姿にキシフターはロボシフトしたのであった。
「ウキ? 岩ですかこれ? ふむ、手の指は開くと? つまりこれは、私の元から得意な近接格闘能力がアップですね♪」
軽く手を握り、自分がどんな風に強化されたのかを理解したキシフター。
「相変わらず知恵が回りよる、理解したなら一丁かかって来い!」
ガンテツがその身を灰色の筋肉質な岩人間へと姿を変えた。
「あの時の私とは違いますよ~!
雷の如く素早く間合いを詰めるキシフター!
「岩だけに、ターゲットロックオン! サウザンドラッシュ!」
キシフターが稲妻の如く素早く動き回り、名前の通り千の電撃を纏った打撃をガンテツに仕掛けて行く。
「ふん、俺が組んだプログラムを使いこなしておる!」
「ウキ~~ッ! 全部ガードされたっ! ……って、あんたが組んだ術式ですか!」
きちんと力のベクトルが真芯を捕えた打撃を放つも、相手に全てガードされて悔しがるキシフター。
「我ながら、術の完成度の高さにぼれぼれするわ♪」
「何かムカツキますね、その石頭を砕いてやりますよ!」
ウコンの拳法による追撃を、受けては払いと防御しながら自画自賛するガンテツ。
「段々、この体に付いた岩の使い方がわかって来ましたよウッキ~~!」
距離を取り、両の拳を打ち合わせてガンテツへと放電攻撃を放つキシフター。
「更に石打ちゃ火が付く、電光石火キック!」
そこから跳躍し、落雷を浴びながらの飛び蹴りをガンテツに叩き込む!
「ぐわ~~っ!」
この一撃はガンテツにヒットし、彼の体を貫いて粉砕した。
「……決まった、ですがあんたはこれ位じゃあ死にやしないでしょ?」
着地してポーズを取るキシフター、彼女の言葉の通り身を砕かれたガンテツが砕かれた岩の体を集めて甦る。
「流石にやるのう、お主成長しおったな♪」
ガンテツがキシフターを認める。
「ええ、そりゃもう大将や家族と呼べる仲間のお陰ですよ♪ あんたら神々にされた封印を解いて助けてくれて、旅に連れ出してくれたおかげです♪」
体の埃を払う動作をしてから、シフトチェンジャーを構えてガンテツと向き合うキシフター。
「ふむ、やはりあの時の太助の提案で封印して正解だったか♪ まったく、人以上に良く変わる者よ♪」
今度は岩の体から金属質な鉄の体の変わるガンテツ。
「根っこの部分や自分でも駄目だと思う所は変わりませんが、他人と出会い知見を広めて得た物を自分に取り付けて弱点を補って行った結果ですよ!」
熊手を両手で持ち、大上段に構えて自身に雷を落とすキシフター!
「所属は異世界戦隊ブレイブシフターズ! 美猴の変身勇者キシフター、改めていざ参るっ!」
「おう、第二ラウンドだかかって来い猿!」
名乗り挑むキシフター、迎え撃つガンテツ。
「頑張れ、キシフター!」
太郎は二人の模擬戦を見守っていた、何時でも動けるようにはしつつ。
「私が暴れ者の猿なのは変わりません、だけど今の私は自分の為だけじゃなく誰かの為にも暴れられる! てりゃっ、クマデスパーク!」
両肩の岩から電気エネルギーを集めた熊手の先を、ガンテツの頭めがけて叩きつけるキシフター!
「……くう~っ! 受けた腕が痺れるわい、だがまだまだ俺は倒せはせんぞ♪」
キシフターの一撃を両腕でガードするガンテツ。
「んな事はわかってますよ! 出番です大将、貴方の左腕にして下さい!」
「オッケ~♪ 合体シフトだ!」
キシフターが叫ぶと、ロボシフトしたシロシフターが彼女に近づいて来た。
祭り囃子の如く軽快な鉦の音が鳴り響き、キシフターが変形する。
彼女の猿の頭が肩当になり、前腕と拳が肥大化し岩の如くゴツゴツとした異形の左腕となったキシフターがシロシフターと合体する。
「合体成功♪ 大将の左腕になれてウッキウキですよ♪」
シロシフターと合体してはしゃぐキシフター。
「うん、何か凄いパンチが打てそうだぜ♪」
シロシフターがキシフターが変化した左腕を構える。
「猿の手をお貸ししますよ~♪ 大将の為なら何発だって繰り出します♪」
キシフターが調子良くしゃべる。
「坊主も来たか、その暴れん坊を使いこなして見せよ♪」
ガンテツも拳を構えて微笑む。
「よっし、ここからは二人で勝負開始だ♪」
何処からか景気良く、ゴングの音が戦場に鳴り響いた。
「行くぞ、ガンテツラッシュ!」
ガンテツが目にも止まらぬ速さで突きを繰り出す。
「全弾撃ち落とします! ウキウキウキウキウキ~ッ!」
負けじとキシフターもラッシュを繰り出して、ガンテツのパンチを全て防ぐ!
「良し、モモビ~~~~~ム!」
シロシフターが距離を取ったガンテツに、バイザーから出したビームで攻撃する。
起きる爆発、だが爆炎の中からガンテツが飛び出して殴りかかって来た!
「迎え撃ちます、モンキーストレ~~トッ!」
キシフターがシロシフターの体を操り踏み込んで、迫りくる相手の攻撃に対してカウンターで左ストレートを放つ。
ぶつかり合う拳と拳、怒る爆発! ガンテツは吹き飛ばされ、シロシフターはその場で踏ん張った。
「さあ大将、追撃です! 一緒に行きますよ♪」
「ああ、二人で行くぜ! 突き! 突き! からの、モンキーアッパー!」
シロシフターがガンテツを追い、正拳突きの連打からキシフターが変化して合体している左の拳を金色に輝かせてガンテツに向けてアッパーカットを繰り出した。
「ぐわ~~~~っ!」
その一撃はガンテツにクリーンヒットし、遠くの岩山まで彼を吹き飛ばした。
「ウッキ~~♪ 決まりましたよ、大将♪ 二人の愛の力の勝利です♪」
合体したままキシフターが大はしゃぎする。
「いや、技は決まったけどな? 勝ちかどうかは、まだわからないって?」
シロシフターはキシフターを窘めて周囲を警戒する。
「……やれやれ、お前達の勝ちじゃ」
人間の姿に戻ったガンテツが二人の前に現れて指を鳴らす。
すると、元の採石場へと全員が戻って来た。
模擬戦が終わったことを確認し、分離して変身を解く太郎達。
「ガンテツさん、ありがとうございました♪」
勝負が終わったので、ガンテツにきちんと一礼する太郎。
ウコンは太郎の左腕に抱き着いていたが、太郎に倣いガンテツに対して一礼する。
「良い良い、こっちも組んだ術式が予想以上に働いておるのが確認できた♪」
ガンテツが笑う。
「いや~♪ それは使い手である私と大将が良いからですよ~♪」
ウコンが調子に乗る。
「ウコン、それは自分で言ったらダメな奴だからな!」
そんなウコンを窘める太郎にしゅんとするウコン。
「しかし坊主、本当によくこのウコンの暴れ猿をここまで更生させてくれたな♪」
ウコンに呆れつつも太郎を褒めるガンテツ。
「いや、ウコンはそんな悪い奴じゃないって出会った時から感じてたんで」
太郎がガンテツの言葉に照れる。
「私の根っこの所をわかてくれる、流石は大将♪」
再び調子に乗ったウコンが太郎に抱き着く。
「いや、抱き着くなって!」
ウコンに抱き着かれて、照れる太郎。
「やれやれ、そう言う所は坊主は太助に似たのう♪ あいつもその猿のようにヤチヨにベタベタされとった」
ガンテツが太郎の祖父母の事を思い出して語る。
「私も、あのヤチヨと太助さんの孫である大将と結ばれるとは♪」
当時を知るウコンが太郎に抱き着きながらしみじみと呟く。
「俺も、まあ仲良くなれて良かったよ♪ けど、恥ずかしいから離れてくれ!」
太郎がウコンの言葉は肯定しつつも離そうとする。
「嫌ですよ♪ 折角大将の左腕になれたんですから、もうしばらくはこのままでいさせて下さいな♪」
ウコンは暫くの間、太郎から離れようとしなかった。
そんなこんなでウコンもロボシフトの術をマスターし、テストを終えて残るロボシフトはキジ―ことミドシフターのみとなった。
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